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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!(=むったん)


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本編再開21 鋒矢はつがえられた

「速すぎますわよあなた達ぃぃぃぃ!!」


 夏華が叫ぶ。


 遥は愛刀のバスターソードを肩にトントンしながら、


「いやー、前話見てくれたら、わたしと瑠衣がちゃんと走ってる描写あるわよ?」


「メタは禁止ですわ!」


「残念。この作品はだいたいメタい」


「〜〜っ!!」


 瑠衣の追いメタに、夏華がすごい顔になる。

 顔の縦線が両目を隠した。

 お口はぴよぴよだ。


 全話からメタを探せ。

 全て見つけたら作者さんから素敵なプレゼントがあるよ⭐︎


 ……嘘である。


「とにかく! 流石にこの布陣はまずいですわ! 全軍! 前後二正面作戦!! 後方五騎ずつで遥と瑠衣さんの部隊を蹴散らして! その間、私たちは全力で壁を作ります!」


『おー!!』


 ずらり。


 二人騎馬が十二騎、横一列に並んで壁を作る。


 そして残る十騎。

 五騎ずつが後方へ向きを変え、遥と瑠衣、それぞれの部隊に対応した。


 スピード勝負だった。


 結女率いる本体も、先ほどの夏華の指揮と背水乃陣高校の奮戦によって大きく数を減らしている。


 瀬戸際高校、総人員七十八人。

 そのうち結女率いる本体が六十六人。遥と直属部隊が六人。瑠衣と玉狩部隊が六人。


 対する背水乃陣高校は、二人騎馬二十二騎。

 一騎三人で、総人員六十六人。


 騎馬単位で見れば、七十六対二十二。

 人員比だけなら、七十八対六十六。


 だが、二人騎馬の高い攻撃判定、防御判定まで含めて概算すれば。


 瀬戸際。


 七十八。


 背水乃陣。


 約百五十。


 戦力値では、まだ背水乃陣が大きく上回っている。


 まだまだ、勝負はわからない。


 ……はずだった。


 ここで結女の仕込んだ毒が、じわりと背水乃陣高校に襲いかかり始める。


 先ほどまでの会話すら、その毒の回りをほんの少し早めるための布石であった。


 本体同士だけを見れば、結女が乗る総大将籠の二人騎馬一騎、三人を除いて、瀬戸際は一人騎馬六十三騎。

 対する背水乃陣は二人騎馬十二騎。


 そこから和音、よしお、縦島、元副部長が、それぞれ三騎ずつ一人騎馬を引き連れる。


 本人を含めて四騎一組。


 四部隊、十六騎が、背水乃陣高校の横陣、その最外側四騎へと襲いかかった。


 残る瀬戸際は四十七騎。


 その中心に郁佳。


 本人を除く四十六騎のうち、四十騎を前後二十騎ずつに分け、二列のファランクスを組む。


 受け持つのは、夏華を除く背水乃陣中央の七騎。


 残る六人は予備兵。

 中央後方、結女の左右に三人ずつ配置され、総大将を守る最後の防波堤でもある。


 和音たち四隊のどこかが外側を崩す。


 遥が五騎を抜く。


 瑠衣が五騎を抜く。


 そのどれか一つでも成功すれば、一気に勝負が決まる。


 逆に、郁佳の中央が破られれば、今度は瀬戸際高校の本体が崩壊する。


 そうでなくとも、遥、瑠衣、和音、よしお、縦島、元副部長。

 その誰か一人の部隊が消滅すれば、盤面は一気に背水乃陣高校側へ傾く。


 一見すれば互角。


 いや。


 単純な戦力値だけなら、まだ背水乃陣高校が上。


 だが――


「……遅い」


 郁佳が呟いた。


「そうねー。人を一人乗せて、あれだけ走り回ったんだものー。疲労の蓄積は避けられないわよねー」


「走らせた本人が言う?」


 まるで他人事のように答える結女に、郁佳が呆れ返る。


 だが、その毒を盛ったのは間違いなく結女だった。


 楔形で全速前進し、方円へと陣形を変え、包囲をΩ状に抜け、そこから鶴翼へと展開した。


 翼をもがれてなお全速で瀬戸際高校の後方まで抜け、本隊は大きく回り込み、再集結して魚鱗を組み、今度は瀬戸際の背後へ突撃した。


 そして今。


 遥と瑠衣を止めるために。


 また。


 走っている。


 止まらせない。

 休ませない。

 走らせ続ける。


 そうして少しずつ蓄積した疲労という毒が、ついに表へ出た。


 夏華から見て右翼。


 和音と元副部長が攻めていた二人騎馬、そのうち一騎の馬役の脚がもつれる。


「うわっ!」


 騎馬が大きく傾いた。


 攻撃を受けたわけではない。

 押されたわけでもない。


 ただ。


 踏ん張れなかった。


 騎士役を支えきれず、一人が地面へ落ちる。


「っ!?」


 夏華が落ちた選手の名を叫んだ。


 だが、間に合わない。


「重音くん、今だ!」


「ああ! 見えているよ!!」


 和音の大鉈が風を切って振るわれた。


「せやぁ!!」


「ぐあっ!!」


 ドボン!


 一騎、落ちた。


「……っ」


 夏華の表情が変わる。


 見ていたのは、落ちた一騎ではない。


 その原因だった。


「今の……」


 馬役の脚がもつれた。


 夏華が周囲へ視線を走らせる。


 荒い息。

 大きく上下する肩。

 騎士役を支える馬役たちの脚。


「……疲労?」


 気づいた。


 早い。


 やはり夏華は早い。


「そういうことー」


 中央後方から、結女がにこりと笑う。


「最初から……?」


「んー?」


「最初から! これを狙って走らせていましたの!?」


「あらー?」


「答えなさい!」


「まあー」


 結女が小さく首を傾げる。


「途中からはー?」


「途中から!?」


「最初は池の水を抜こうと思ってただけだからー」


「また意味のわからないことを!!」


 意味はある。


 とても。


 背水乃陣高校は強い。


 二人騎馬による高い攻撃力と防御力。

 全国屈指の練度。

 そして、夏華の指揮による高速の陣形変更。


 陣形を組んでいる限り、その戦力は間違いなく全国上位。


 だが。


 その強さには燃料がいる。


 一人騎馬なら、自分の身体を自分の足で運べばいい。


 二人騎馬は違う。


 二人の馬役で、もう一人、騎士役まで運ばなければならない。


 その状態で、背水乃陣高校は試合開始からほとんど休まず走り続けてきた。


 疲れないわけがない。


「……やられましたわ」


 夏華が小さく呟く。


 だが、その目は死んでいない。


「全隊!!」


 声が飛ぶ。


 速い。


 判断も。

 指示も。


 何一つ鈍っていない。


「無駄に追わない! 歩幅を合わせなさい! 壁を維持!! 遥と瑠衣さんの部隊は倒し切る必要ありませんわ! 足止めに徹しなさい!!」


『了解!!』


 返事も速い。


 命令も通っている。


 ただ。


「……やっぱり」


 郁佳が盾の向こうを見る。


「遅い」


 身体だけが。


 ついてこない。


「中央! まだ押すな!」


『了解!!』


 郁佳の声が飛ぶ。


「相手から来る! 受け止めるだけでいい! 焦るな!」


 二十騎。


 その後ろに、さらに二十騎。


 二列の盾が揃う。


 そこへ背水乃陣高校、中央七騎が突っ込んだ。


 速い。


 それでも。


 さっきまでより。


 ほんの少し。


 遅い。


 そのほんの少しが。


 鉄壁の守護神には十分だった。


「前列! 受ける!」


『おおっ!!』


 激突。


 ドンッ!!


「くっ!」


「押せぇ!!」


「耐えろ!!」


 盾と武器がぶつかり、二人騎馬が体重を乗せて押し込む。


 数値だけなら、背水乃陣高校が強い。


 それでも。


 前へ出ない。


「二列目! 前列の腰を支えろ!」


『了解!!』


 後列から伸びた手が、前列の肩を、背中を、腰を支える。


 四十人。


 巨大な一枚の壁になった。


「っ……硬いですわね!」


 夏華が歯噛みする。


「ふみちゃんだからねー」


「知っていますわよ!!」


 その時。


 後方。


「おっ?」


 遥が目を瞬いた。


 目の前には二人騎馬、五騎。


 そのうち一騎。


 踏み込みが浅い。


「今の」


 遥が、にっ、と笑った。


「遅かったよ?」


「っ!」


 一歩。


 遥が懐へ入る。


()めろ!!」


 左右から二本の武器が伸びる。


 遥は身体を沈め、その二本を頭上へ通した。


「よっと!」


 バスターソードを横薙ぎ。


 狙ったのは騎士役ではない。


 踏ん張っている馬役。


「うわっ!?」


「っ、支え――」


 崩れた。


 もう一人の馬役にも、傾いた騎馬を立て直すだけの脚が残っていない。


「もらいっ!」


 返す刃。


 スパンッ!!


 ドボン!


「一騎!」


 遥ちゃん部隊から歓声が上がる。


「よーし! みんな! 押すよ!」


『はい!!』


 六対五。


 だった。


 六対四。


 数字が変わった。


 そして、その数字以上に。


 比率の差は大きい。


 反対側。


「下を守れ!!」


「来るぞ! 玉狩りだ!!」


 背水乃陣高校。


 馬役たちが叫ぶ。


 分かっている。


 何を狙われるのか。


 だから足を閉じたい。


 逃げたい。


 避けたい。


 だが。


 脚が。


 重い。


「有意」


 瑠衣が静かに前へ出た。


「何が有意なんだよぉぉぉ!!」


「ファルファル祭り」


「いやぁぁぁぁ!!」


 スパンッ!!


「ひゅっ――」


 馬役の一人が白目を剥いた。


 騎馬が、ぐらり。


「瑠衣ちゃん、そこ!」


「見えてる」


 玉狩部隊の二人が左右から回り込む。


 騎士役が振り向いた。


 遅い。


 スパンッ!


 スパンッ!


 ドボン!


 こちらも。


 一騎、落ちた。


「左後方、一騎リタイア!!」


「右後方も一騎です!!」


「っ!!」


 夏華が振り返る。


 左右。


 同時。


 五騎ずつ。


 十分だったはずの戦力。


 普通なら。


 十分すぎる戦力。


 それが。


 もう削られた。


「……五騎ずつですわよ?」


 夏華の頬が引きつる。


「二人騎馬を! 五騎ずつ!!」


 遥が遠くから手を振った。


「ごめーん!」


「謝るなぁぁぁぁ!!」


 瑠衣も小さく手を挙げる。


「有意」


「だから何がですのぉぉぉぉ!!」


 まだ叫べる。


 まだ。


 夏華は折れていない。


 むしろ。


 状況が悪くなったからこそ。


 答えは一つ。


「中央!!」


 夏華が薙刀を掲げた。


「時間をかければ不利ですわ!! 七騎! 私も出ます!!」


「部長!?」


「外が落ちる前に――」


 夏華の目が郁佳を捉える。


 その向こう。


 総大将籠に乗る結女。


「中央を!! 食い破りますわよ!!」


 にこっ。


 結女が笑った。


「そう来るわよねー」


「その顔をやめなさぁぁぁぁい!!」


 残された時間は、ほんの僅か。


 背水乃陣高校。


 中央、八騎。


 最後の楔。


 いや。


 最後の鋒矢(ほうし)が、アクセルに足をかけた。


 最後の全力攻勢が始まった。

面白い! 続きが読みたい! 熱い!

いや、なんだこれ!?


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