↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!(=むったん)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
107/115

本編再開15 水は抜かれ溢れて流される

「そこからー」


 にこっ。


「いただきまーす、ですよー」


「了解!」


 最初に反応したのは。


 和音。


「よしお!」


「おう!」


 肩書き、元部長の二人が走る方向を反転させた。


「え?」


 背水乃陣高校。


 その右翼後方。


 進行方向を十二時とするなら。


 四時。


 そこへ。


 つい先ほどまで逃げていたはずの二人が。


 一気に。


 食らいつく。


「右後方!」


「二十四騎、来ます!」


 試合前に編成されていた和音とよしお。


 二人の直属部隊が、それぞれ十一人ずつ。


 十二人の一人騎馬部隊が。


 二部隊。


 合計。


 二十四騎。


 魚鱗陣の双突撃。


「迎撃――」


「しない!」


 夏華が。


 即座に叫ぶ。


「全力全速で前進! 陣を崩さない!」


「ですが!」


「殿しんがり二騎! 守備部隊の三騎と共に総大将わたしを守りなさい!」


 薙刀を構えた三騎の守備部隊。


 楔から切り離したのは。


 僅か二騎。


 だが。


 二人騎馬のステータス値は、一人騎馬の約七倍。


 一人騎馬換算なら。


 三十五騎。


 それだけの戦力で。


 総大将を守る。


 夏華が前を見た。


 遥。


 結女。


 郁佳。


 まだ。


 前方にいる。


「前を追いなさい!」


「はい!」


「そこだっ!!」


 和音の大薙刀が。


 背水乃陣高校の殿部隊。


 その一騎へ。


 斬り込む。


 守備部隊の斬撃を受け流した勢いをそのままに、上空で柄を持ち替えた和音。


 渾身の一撃。


 袈裟懸け。


 一閃!


「もらった!」


 頚動脈のデスポイント。


 被ダメージが最大化する場所を。


 薙いだ。


 ズバンッ!


 ドボン!!


「うわっ!?」


 一騎。


 落ちる。


 守備部隊。


 残り四騎。


『背水乃陣高校、一騎リタイア!』


「よしお!」


「うぇぇーいっ!!」


 よしおが。


 その隣へ。


「……っらぁあああ!!」


 喰いついた。


 装備は片手槍と盾。


 右手に持った短めの槍から、高速の連続突きが。


 襲いかかる。


「くっ!」


「右後方、削られてます!」


「前へ!」


 夏華が歯を食いしばる。


「前へ!!」


 背水乃陣高校。


 止まらない。


 前へ。


 前へ。


 その。


 さらに前方。


「はるちゃーん?」


「はいはい!」


「もっと前ー」


「まだ行くの!?」


「もっとー」


「どこまで!?」


「追いつかれないくらいー」


「雑!!」


 遥と遥の直属部隊八人。


 合計九人の急襲部隊がさらに加速する。


 最も身軽な兵種。


 一人騎馬。


 その中でも。


 遥は速い。


 当然。


 直属部隊も。


 足の速い選手達で編成されている。


 みるみるうちに。


 背水乃陣高校との距離を開けていった。


「遥が離れます!」


「追いなさい!」


「ですが!」


「追えるところまでで構いませんわ!」


 夏華の視線が。


 遥から。


 その少し後方へ移る。


 結女。


 そして。


 郁佳。


「総大将はその手前!」


「はい!」


「遥を追いかける勢いのまま! 総大将へ、食らいつく!」


 怒涛の勢いで。


 背水乃陣高校が。


 攻め込む。


「結女!」


 郁佳が。


 振り返る。


「来るよ!」


「うんー」


「どうする?」


「ふみちゃんー」


「なに?」


「壁ー」


「了解!」


 郁佳がインカムへ


 指示を飛ばす。


「山田、御門、谷口、吉田、樋之口、畑!!」


『おうっ!』


「横陣!」


『よっしゃ来た!!』


 それだけで通じる。


 数々の強敵との戦いを経、瀬戸際高校の練度も。


 高い。


 六人。


 その一人一人の前へ。


 二人ずつ、大盾を構えた選手が滑り込む。


 三人一組。


 逆三角形。


 大盾二人が。


 前。


 その後ろに。


 槍を構えた一人。


 それが。


 六つ。


 一瞬にして。


 結女の前へ。


 横一列に並んだ。


 六部隊。


 十八人。


 防御力重視の。


 小型ファランクス。


 六つの盾壁が。


 一枚の横陣を。


 作る。


「えぇっ?」


 遥が。


 さらに前を走りながら。


 振り返った。


「あれを受けるの!?」


「受けないよ!」


 インカム越しに。


 郁佳が答える。


「受けたら押し込まれる!」


「じゃあ何すんの!?」


「もちろん、流す!」


 背水乃陣高校の、楔。


 迫る。


 三十メートル。


 二十メートル。


 十五、


「郁佳!」


「まだ!」


「それ結女のやつ!」


「今は僕!」


 十。


「左斜め、四十五度!!」


 郁佳が。


 腕を振る。


 六つのファランクスが。


 一斉に。


 斜めへ。


 滑る。


 郁佳達から見れば。


 左。


 背水乃陣高校から見れば。


 右前方。


「また避けた!?」


「違います!」


「前方の横陣!」


「こちらの右側へ張り付いてきます!」


「何ですって!?」


 真正面から。


 消える。


 だが。


 離れない。


 郁佳の横陣は。


 背水乃陣高校の右側面。


 その少し前方。


 触れれば。


 押し潰される。


 だが。


 離れすぎれば。


 進路を変えられる。


 その。


 ぎりぎり。


 六つの盾壁が。


 斜めに。


 並走する。


「ふみちゃんー」


「うん!」


「そのままー」


「分かってる!」


 前へ。


 進む。


 背水乃陣高校。


 それに合わせ。


 郁佳の横陣も。


 斜めに走りながら。


 少しずつ。


 少しずつ。


 位置を。


 後方へ下げていく。


 総大将、結女の乗る籠。二人騎馬を守りながら。


「……何を」


 夏華が。


 眉を寄せた。


「何をしていますの?」


 前には。


 遥。


 追いつかない。


 右前方には。


 郁佳。


 結女。


 捕まらない。


 右後方には。


 和音。


 よしお。


 削られる。


「…………」


 夏華の視線が。


 左斜め前へ。


「なら」


 さらに。


 左へ。


 視線が走る。


 そこには。


 双剣を構えた。


 女子選手達。


 目をぎらつかせていた。


 玉狩部隊。


 十一人。


 怖い。


 瑠衣直属。


 面制圧の特殊部隊とも言える。


 男の尊厳の。


 天敵。


 何人かの男子生徒から。


 ヒュッ。


 という声が聞こえた気がした。


「!」


 そして。


 十時の方角。


 その先頭を。


 涼しい顔で駆ける。


 少女が。


 一人。


 瑠衣。


「…………」


 元祖双剣。


 構えてすら。


 いない。


 脱力の極地。


 ただ。


 そこにいる。


「山ノ井瑠衣……!」


「狩る」


「私はあなたに狩られるモノなんて持ってませんわ!」


「大丈夫ちゃんと狩る」


「なにを狩るつもりですの!?」


 背水乃陣高校。


 左前列が。


 わずかに。


 進路を左へブレた。


 瞬間。


 瑠衣が。


 一歩。


 踏み込む。


 神速の一撃。


 スパンッ!


「のほーんっ!!」


 一騎。


 その玉が。


 飛ぶ。


 たぶん。


 比喩。


 きっと。


 崩れ落ちた。


『背水乃陣高校、さらに一騎リタイア!』


「左へ寄るな!」


 夏華が即座に叫ぶ。


「正面維持!!」


「はい!」


「…………」


 瑠衣は。


 追わない。


 また。


 少し、離れる。


「なんですの……」


 夏華が瑠衣を見る。


 左へ行けば。


 瑠衣。


 右へ行けば。


 郁佳。


 前へ行けば。


 遥。


 そして。


 後ろ。


「部長!!」


「何ですの!?」


「左後方!!」


「!」


 八時。


 そこから二つの影。


「くっくっくっ! 行くでー!!」


 縦島。


「ようやく出番だ!」


 元副部長。


「せやな!」


「この試合に勝ったら、僕はちゃんと名前を呼んでもらうんだ!」


 胡散臭い関西弁と、絶妙に微妙なフラグを立ててくる元副部長氏。


 その二人が。


 残り五十二人を引き連れ。


 背水乃陣高校の左斜後方へ。


 ——喰らいつく。


 彼らは瀬戸際高校の精鋭部隊ではない。


 だが、数が多かった。


「八時方向!」


「二騎落ちました!」


「こっちもです!」


「くっ!」


 夏華が振り返る。


 右後方。


 四時。


 和音。


 よしお。


 左後方。


 八時。


 縦島。


 元副部長。


 そして。


 前方。


 遥。


 右前方から。


 側面。


 郁佳。


 結女。


 左前方。


 瑠衣。


「…………」


 夏華の顔から。


 完全に笑みが消えた。


「これ……」


 前へ進めば。


 後ろを削られる。


 右へ振れば。


 郁佳の横陣に。


 沿わされる。


 左へ振れば。


 瑠衣と玉狩部隊。


 そして止まれば。


 四時。


 八時。


 後方から本格的に食いつかれる。


「……水」


 夏華が呟いた。


 遠く。


 右側面。


 六つのファランクス。


 その向こう。


 結女が。


 にっこり。


「気づいたー?」


「…………っ!」


 郁佳の横陣がさらに位置を下げる。


 背水乃陣高校、右側面へ。


 斜めに張り付いたまま。


 少しずつ。


 少しずつ。


 後方へ。


「やばっ!」


 夏華が気づく。


 だが。


 すでに。


 遅い。


 ——四時方向。


「重音!」


『見えてるよ!』


「よしお!」


『ウェーイ!!』


 そして。


 郁佳。


 結女。


 六つのファランクス。


 その一団が。


 四時方向。


 和音。


 よしお。


 そこへ。


 合流する。


 結女——敵総大将は、さらに後方へと下がり、楔の射程圏外へと下がっていった。


「右後方!」


「敵が増えます!」


「左後方も!」


「縦島たちが食いついてます!」


「前方には遥!」


「左前方、玉狩姫、瑠衣!」


「…………」


 夏華が戦場を見る。


 追っていた。


 はずだった。


 瀬戸際高校を。


 追い詰めていた。


 はずだった。


 なのに。


 いつの間にか。


 自分達の周囲に。


 瀬戸際高校が。


 いる。


 前。


 左前。


 右後ろ。


 左後ろ。


 進路を。


 塞がれていた。


 そして。


 背に溜めていたはずの水は抜かれ。


 行き場を失い、溢れ。


 いつの間にか自分達自身を。


 押し流していた。


「……なるほど」


 夏華が。


 小さく。


 息を吐いた。


「水を抜くとは」


 結女を見る。


「こういう意味でしたのね」


「あらー?」


 結女が笑う。


 猫のように。


 そして、


「まだよー?」


「……何ですって?」


「まだー」


 四時。


 和音。


 よしお。


 郁佳。


 結女。


 八時。


 縦島。


 元副部長。


 十時。


 瑠衣。


 十二時。


 遥。


「お水ー」


 結女が。


 指を。


 くるり。


 回した。


「残ってるわよねー」


「…………」


 夏華が。


 奥歯を、噛む。


 認めるしかなかった。やられた。


「部長!」


「右後方、また一騎!」


「左もです!」


「このままでは――!」


「分かっていますわ!!」


 夏華が。


 目を閉じる。


 一瞬。


 そして。


 開く。


「……楔では」


 右手を。


 上げた。


「この状況に対応できませんわ」


「部長?」


「全騎!!」


 夏華の声が。


 戦場へ。


 響く。


「楔形陣――解除!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。