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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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本編再開14 池の水を全部抜く準備

 二度目の楔が動き出した。


「全騎、突撃!!」


「おおおおおおおお!!」


 再びの四十騎。


 八十人分の足音が地面を揺らす。


「来た来た!」


 遥が身構える。


「今度はさっきより少し右寄りだね」


 郁佳が楔の進路を見る。


「こっちを狙ってる」


「正確にはー」


 結女がにこにこ。


「私ねー」


「やっぱり?」


「結女ちゃんは総大将」


 インカム越しに瑠衣が言う。


「落とせば終わる。だから狙われるのは当然」


「そうねー」


「ま、そうだよね」


 郁佳が溜息をひとつ。


 夏華が一直線に結女へと楔を向ける。


「今度こそ逃がしませんわよ!!」


「結女!」


「まだー」


「またそれ!?」


 二十メートル。


 十五。


 十。


「はいー」


 結女が手を上げる。


「散ってー」


「やっぱり!!」


 瀬戸際高校。


 再び。


 左右へ。


 ぱっと。


 散った。


「あんたらはフナムシかぁぁぁああっ!!」


 夏華の絶叫。


 二度目の空振り。


 四十騎が誰もいない場所を駆け抜ける。


『背水乃陣高校――!!』


 実況。


『またしても正面突破――!!』


 一拍。


『……できません!!』


「言い方!」


 遥が笑う。


「二回目ー」


 結女が。


 指を二本。


 立てた。


「あと一回?」


「とりあえずー」


「その『とりあえず』が怖いんだけど」


 楔が。


 再び。


 時計回り。


 陣形を崩さずにくるりと向きを変える。


「……ほんと上手いね」


 郁佳が感心する。


「二回も全力で走ってるのに、全然崩れない」


「練度が高い」


 瑠衣。


「夏華もちゃんと指揮してる」


 遥が。


 少しだけ。


 嬉しそうに言った。


「あらー?」


「何よ」


「なんでもないわよー」


「その顔やめて!」


 そして。


 三度目。


「楔、崩すな!!」


「はい!!」


 夏華が。


 右手を。


 振り下ろす。


「突撃!!」


「おおおおおおおお!!」


「また来た!」


「三回目」


「分かってる!」


 楔は、さらに結女側へと寄る。


「かなり狙ってきてるね」


 郁佳。


「うんー」


「どうする?」


「逃げるー」


「ですよねー!」


「はるちゃんー」


「どうしたの?」


「今日はたくさん走るわよー」


「ほんとにそうなりそう!」


 十五メートル。


 十。


 五。


「はいー、散ってー」


 三度目。


 瀬戸際高校。


 左右へ。


 消える。


「…………っ!!」


 楔。


 通過。


 三度目の。


 空振り。


「…………」


「…………」


「…………」


 遥が。


 振り返る。


「……あれ?」


「何?」


 郁佳が訊く。


「夏華が叫ばない」


「…………」


 瑠衣が夏華を見る。


「おそらく学習した」


「犬みたいに言わないでくださるかしら!?」


 夏華が離れた位置から抗議する。


 そして背水乃陣高校は減速する。


 だが。


 夏華は。


 怒鳴らない。


 地団駄も踏まない。


 ただ。


 じっと。


 瀬戸際高校を見ていた。


「…………」


 結女も。


 笑っている。


「部長」


 背水乃陣の選手が。


 声を掛ける。


「次は?」


「…………」


 夏華が。


 息を整える。


 そして。


「同じですわ」


「え?」


「楔形陣」


 静かに。


 右手を上げる。


「もう一度」


「……夏華?」


 遥の顔から。


 少しだけ。


 笑みが消える。


「怒ってない」


「怒ってると思う」


 瑠衣が言う。


「静かな方」


「それ一番怖いやつじゃん」


 夏華が。


 結女を見る。


「三度」


「…………」


「同じように逃げましたわね」


 結女。


 にこにこ。


「そうねー」


「そして」


 夏華の視線が。


 散開した瀬戸際高校。


 その一人騎馬たちへ。


 移る。


「一度も」


「…………」


「こちらと戦っていない」


「あらー?」


 夏華が笑った。


「なるほど」


「…………」


「そういうことですのね」


 遥が結女を見る。


「バレた?」


「何がー?」


「その顔で言われても!」


 夏華が右手を振る。


「全騎!!」


「はい!!」


 四度目の楔。


「今度も」


 夏華が、ゆっくりと。


 右手を前へ。


「同じように行きますわ」


「…………」


 郁佳が眉を寄せる。


「結女」


「うんー」


「何か変だよ」


「そうねー」


「分かってる?」


「もちろんー」


「じゃあどうする?」


「逃げるー」


「やっぱり!?」


「だってー」


 結女が。


 楔を見る。


「来るんだものー」


「全騎!!」


 夏華。


「突撃!!」


「おおおおおおおお!!」


 四十騎。


 四度目の。


 前進。


 瀬戸際高校。


 待つ。


 二十。


 十五。


 十。


「はいー」


 結女が。


 手を上げる。


「散ってー」


 瀬戸際。


 左右へ。


 分かれる。


 楔の。


 正面。


 また。


 空になる。


「来るよ!」


 遥が叫ぶ。


「そのまま抜ける!」


「うんー」


 夏華が。


 前を見る。


 空いた。


 中央。


 その向こう。


 逃げていく。


 瀬戸際高校。


 そして。


「全騎!!」


 夏華の声が。


 響く。


「止まるな!!」


「!」


 郁佳の目が。


 見開かれる。


「そのまま前進!!」


 背水乃陣高校。


 減速しない。


「そのまま左へ! 取舵一杯! 散った瀬戸際を追いなさい!!」


「来た!」


 遥が。


 振り返る。


「追ってくる!」


「やっぱりねー」


 結女が。


 笑った。


「やっぱり!?」


「うんー」


「分かってたなら言ってよ!」


「聞かれなかったからー」


「今それやる!?」


 背水乃陣高校。


 四十騎。


 楔形陣。


 止まらない。


 前へ。


 前へ。


 逃げる。


 瀬戸際高校。


 その背中へ。


 食らいつく。


「速い!」


 和音が。


 走りながら振り返る。


「だが!」


 よしおが叫ぶ。


「こっちは一人騎馬だ!!」


 一人。


 一人。


 一人。


 瀬戸際高校。


 軽い。


 速い。


 小回りが利く。


 対して。


 背水乃陣高校。


 二人騎馬。


 四十騎。


 楔。


 速い。


 だが。


 追いつけない。


「距離が縮まりません!」


「構いませんわ!」


 夏華が。


 叫ぶ。


「逃げ続けるなら!」


 前を睨む。


「逃げ続けさせなさい!!」


「はい!」


「瀬戸際の後方へ食らいつきますわ!!」


 郁佳が。


 走りながら。


 結女を見る。


「結女!」


「なあにー?」


「このままだと、自陣の後ろまで押し込まれるよ!」


「うんー」


「うんじゃなくて!」


「大丈夫ー」


「何が!?」


 結女が。


 振り返る。


 背水乃陣高校。


 巨大な。


 楔。


 前へ。


 前へ。


 前へ。


 その。


 後方。


 無防備に。


 伸びる。


 斜め後ろ。


 四時。


 八時。


「そろそろー」


 結女が。


 にっこり。


「お水」


「……え?」


「抜きましょうかー」


 遥が。


 走りながら。


 目を細めた。


「やっと?」


「うんー」


「何すんの?」


 結女が。


 左右へ。


 手を広げる。


「はるちゃんたちはー」


「うん」


「そのまま逃げてー」


「まだ逃げるの!?」


「逃げてー」


「はいはい!」


「残りはー」


 結女の手が。


 ゆっくり。


 後方へ。


 向いた。


「反転ー」


「!」


 郁佳が。


 振り返る。


 追う。


 背水乃陣。


 その斜め後方。


「四時とー」


 結女が。


 右手を。


「八時ー」


 左手を。


 上げた。


「そこからー」


 にこっ。


「いただきまーす、ですよー」

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