第0話
あぁ、疲れた。もう、何もかもが。
復讐は終わった。
もう、とっくの昔に終わってしまった。
この国がどれだけ栄えたとしても。
それが一体なんだというの……
これが本当に、王になるべく教育されていたのなら。
感情と意思を、完全に割り切れたのなら。
何か、違ったのかもしれない。
それでも──
それでも、私は知ってしまった。
どうしようもなく苦しくて
どうしようもない程に大切で
人として当たり前に持つ……
感情という心を。
だから──
だから、大切な人のいないこの世界が、私にとっての地獄になった。
——落ちる。
首に触れた刃の冷たさを、今でも覚えている。
血の匂い。 歓声。 そして——目の前で崩れ落ちた、兄の姿。
——嫌だ。
朝日が昇る。
また朝がくる。
追いかけられるように
追い立てられるように、
ただ苦しい一日が、また始まる。
「……っ」
息を吸った瞬間、肺が焼けるように痛んだ。目を開ける。見慣れた天井。古い家具。幼い頃の、自分の部屋。
(……は?)
あり得ない。
ここは——もう、とっくに失われた場所だ。
「セシリア……」
扉の向こうから、震えた声がする。私は答えない。代わりに、自分の手を見る。
小さい。
細い。
震えている。
(……戻った?)
ゆっくりと、思考が追いついてくる。
これは夢じゃない。
幻でもない。
私は——
(過去に、戻ってる)
その瞬間。喉の奥から、笑いが漏れた。
「は、はは……」
あぁ、そうか。
神様も、随分と趣味が悪い。
——全部、やり直せって?
兄が処刑される未来も。
父が消される結末も。
母が死ぬあの病も。
全部。
「……いいよ」
呟いた声は、驚くほど冷たかった。
「全部、壊してあげる」
ゆっくりと立ち上がる。
足が震える。でも構わない。
まず確認しなければならない。
——兄は、生きているのか。
扉へ向かう。
開ける。
そして。
そこにいた。
「……あ」
息が止まる。
ルクスが。
まだ何も知らない顔で、そこに立っていた。
生きている。
それだけで、胸の奥が壊れそうになる。
けれど。
私は泣かなかった。
代わりに、笑った。
「おに、さま……」
呼びかける声は、少しだけ掠れていたが、妙に落ち着いていた。
再び声を出そうとして
視界がフラリと倒れていく
(違う、倒れているのは……私だ)
私の身体は床に叩き付けられ……なかった
叩き付けられる前に、兄の腕が私を支えていた
身体が重くて、熱い。
視界がぼやけて。
意識が遠く離れて……
そんな中でも、確信があった
普通にやっても、未来は変わらない。
なら。
最初から壊すしかない。
常識も。 倫理も。 全部。
「今度こそ」
小さく呟く。
「あなたは、私が守る」
実はここともう一つが今の所一番の変更点ありな話です




