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誰の役にも立たないと言われて嫁いだ先で、私はようやく普通に仕事ができるようになりました  作者: ヲワ・おわり


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第67話 あなたが知るべきだと思った

 広間を出て、廊下でミレイと別れた後、エドヴァルドが「少し来い」と言った。


 二人で、城の廊下の端にある小さな部屋に入った。窓が一つある、何の用途でもない部屋だった。


「なぜ、今日あのような場を設けたのですか」


 私は聞いた。


「あなたがしてきたことを」とエドヴァルドが言った。「あなた自身が知るべきだと思った。私だけが知っているのでは不十分だ」


「……私は、知っていました」


「知っていた、と思っていた。でも知っていることと、他者に認められることは違う」


 私は少し考えた。


「それは——侯爵が気づいてくださっていたからですか? 重臣の方々の前で言うことで、私が「受け取れる」と思って」


「そうかもしれない」とエドヴァルドが答えた。「……最初から、だいたいは気づいていた。あなたがやっていたことに。ただ言葉にするのが遅かった」


「……最初から」


「薬品庫を散歩のついでに整えていた頃から」


 私は少し笑った。自然に出た。


「……遅かった、ということですか」


「そうだ。それについては謝る」


珍しい言葉だった。エドヴァルドが謝る。


「謝らなくていいです」と私は言った。「気づいてくださっていたなら、それで十分です」


「十分ではない」


「侯爵には「よくやった」という言葉をいただきました。「必要な人間を手放す気はない」という言葉も。それは全部、受け取っています」


 エドヴァルドが少し動いた。窓の方を見た。


「……そうか」


* * *


 しばらく静かだった。


「侯爵」と私は言った。


「なんだ」


「私は——ここが好きになりました」


 言葉が出た。


 言おうと思っていたわけではなかった。でも出た。


 「好き」という言葉を、こういう形で使ったのは——前世でも今生でも、初めてかもしれない。


「……今、私は何を言ったのか」と内心で思った。でも取り消そうとはしなかった。


「本当のことですから」と続けた。


 エドヴァルドが振り向いた。


「ここが」


「はい。辺境が。この城が。……その、皆さんが」


 私は少し言葉が続かなくなった。「その、皆さんが」という言葉には、エドヴァルドも含まれている。でも、そこまで言えなかった。


 エドヴァルドが少し間を置いた。


「私も……」と言いかけて、止まった。


 もう一度、言った。


「……私も、そう思っている」


* * *


 その言葉が来た時、私は窓の外を見た。


 夕暮れの辺境の空が、少し橙色だった。


 好き、と言えた。言ってしまった。でもこれが本当のことだ。一年半かかったが——ここが好きになった。この場所が、自分の場所になった。


「私も、そう思っている」とエドヴァルドが言った。


 その言葉を、受け取った。

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