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この国の歴史は1000年以上前に遡る。
その1000年前の聖魔大戦で魔族相手に人族が辛勝した、その時の前線がこの国、スダロキア王国の起源になる。
だからこの国の周りでは魔族との戦闘の前線だった為、魔物の発生率が高く。
その魔物は魔王が死んだ後も蔓延り人間を襲った。
しかし、この魔物にも利用価値がある。
魔石だ。
この国は魔物から取れる魔石を動力とした工業国家で、これがこの国の大きな収入源になっている。
だから魔物が多いのは悪い事じゃあ無いのだが、
「やっぱりおかしいですぜ?隊長」
「あぁ、多いな。しかも、、」
俺はそう言いながら剣を鞘へ戻した。
俺の視線の先、この森のずっと向こうに有ったという魔族の都。
魔物はその魔都クトゥプルがあった方向へ行けば行くほど強く特殊な魔物が現れるのだが。
こんな場所でオーガが現れるなんて今まで聞いたのとが無かった。
オーガは短い角を一本頭に生やした2メードル程の体躯をしていて、特殊な能力こそ無いものの、力も強く、素早かった。
部下が魔物から魔石を剥ぎ取ったのを確認して踵を返した。
「引き上げるぞ」
討伐隊を編成して一気に魔物を殲滅する必要があるな。
いや、その前に調査団を編成して森を調べるべきか。
どっちみち俺一人では判断出来ない、砦に戻って報告だな。
・
「では、聖書の冒頭で、『私は全ての人を救う事は出来ない』と書いてあるのは?」
「多分、神様なりの誠意だね」
シスターのジルさんの質問に答えた。
「ヨウイチ様、救えない事の何処が何が誠意何ですか?」
ジルさんがそう言って『ズイ』と僕に寄った。
僕は最近はマリアもいて、前ほど女性に免疫が無いわけではないのだけど、ジルさんの綺麗な顔が目の前に来るとつい顔を赤くしてしまうのだ。
「そのぉ。神様が全ての人を救えるっていう世界になって欲しいかどうかって所になるんだけど」
僕は少しジルさんから距離を取って、
「ジルさんはなって欲しい?」
と言うが、ジルさんがさらに、『ズイ』と僕に寄って、
「はい!私はそうあるべきだと思います!」
ジルさんの顔がすぐそこにあって、ジルさんの体が僕の体に当たってくる。
「ちょ?ちょっ!ジルさん?当たってませんかね?」
「何がですか?!」
ジルさんがさらに僕に『グイッ』っと寄って。
ジルさんの大きな胸が、僕の腕に、、、。
「ちょっと!!」
大きな声がして、その声の方を見るとそこにはマリアが立っていた。
腰に手を当てて仁王立ちしている。
「ジル様?そんな貧相な胸、ご主人様に当てないでいただけますか?」
マリアはそう言って、『ツカツカツカ』と僕達の方へ歩いてくる。
正直言って、ジルさんの胸はかなり大きい。
でもマリアの胸はそれを明らかに凌駕しているのだった。
マリアが歩くと胸が、『ユッサユッサ』と揺れる。
「貴女って犬の獣人なのよね?」
ジルさんがそう言う。
多分牛の獣人じゃあないかと言いたいんだろう。
しかしマリアの頭部からは赤いシェパードみたいな耳が『ピョコン』と生えていて、しっぽが『ファサファサ』と揺れている。
「きっと手と足に行く栄養が全部胸に行ってるんじゃないかしら?」
マリアはそう言われるが、気にした感じは無く、自慢げに胸を両腕で持ち上げて見せた。
マリアはそのまま僕の隣に来ると、その大きな胸で僕の腕を挟む。
ジルさんもそれをみて負けじと僕にくっついて。
両腕を女性に包まれて、、、
『あぁ』
と一人ごちて、恐らく人生で最初で最後であろうモテ期をたんなうする為に、両腕に神経を集中させる。
二人が自分の方へと僕の腕を引っ張る。
マリアのが引っ張ると、ジルさんも負けじと引っ張る。
たまらんな。
なんて思っていた、その時、
「キャ!」
と言ってマリアが崩れ落ちる!
僕は慌てて、マリアを抱き抱えるが、マリアの義手と義足が『ゴロリ』と転がる。
まだ義手と義足に慣れてないマリアはちょっとした拍子に義手と義足が外れてしまうことが、リハビリを初めて半月経つのだがまだあった。
しかし、
「へへへ」
腕の中のマリアが勝ち誇った顔でジルさんの方を見ている。
わざとか、、、。
僕はマリアを抱いたまま、マリアの義手と義足を拾って一つづつ腕と足に添えてあげると、マリアは一人で立ち上がる。
「すみません、ご主人様」
マリアはそう言いながらもう一度僕の腕を取る。
僕がジルさんを見ると、ジルさんはマリアを『じとー』って感じで見ている。
「では、そろそろ行きます」
「はい、また明日も宜しくお願いします」
ジルさんはそう言って頭を深く下げた。
魔石を稼ぐ為に町の外を目指して歩く。
マリアは僕の手を持った所から、さらに僕の腕に腕を絡ませてくる。
本当ひ一人でも十分歩けるのだが、マリアは『まだ一人で歩くのは怖い』と言って町を歩くときはいつもこうだ。
そうするとすっかり、『美女と野獣』的な感じになって、
通り過ぎる人、通り過ぎる人。
皆僕をジロジロと見ていく。
美人を金で買ったみたいに思われてるんだろうな。
まぁ、買ったのかと聞かれれば確かに買ったのだけど。
中魔石一個で。
町でジロジロ見られながらマリアが食べたいと言う物を買う。お金はあるので全部言い値だ。
しかし、こうやって買い物をしていると、『ホステスとその客』って感じだな。
僕はおっさんみたいな顔というか、カーンティさん曰く、『ドワーフとオークを足して2で掛けた様な顔』らしいし、体型もずんぐりむっくり。
その僕の隣のマリアは、手と足は義手と義足だけど、僕より身長が高くおっぱいもおっきい。
そしてそのマリアは僕に食べたいものをおねだりしている。
うん。完全に『ホステスとその客』って感じだな。
行ったことは無いけれど。
しかし、こうしてジロジロ見られるのも慣れた物だ。
マリアがリハビリを初めてかれこれ半月ずっと見られてきたからね。
そういう視線を無視して夕食を買ってはアイテムポーチに仕舞う。
このアイテムポーチは『ラブホテル』の中のクローゼットと繋がっていて、四次元ポケッ○みたいな使い方が出来る。
だから見た目以上に物を仕舞う事が出来た。
この四次元ポケ○ト的なスキルは、僕のスキル『ラブホテル』をたくさん使って得たスキルで。
『ラブホテル』を110回使った所でこの効果が得られる様になった。
ちなみに使用回数が210回を上回るとクローゼットの拡張をしてもらえるらしく期待していた。
今のクローゼットは大人三人が立って入れるぐらいのスペースしか無くて、僕だけの荷物ならどうでも良いんだけれど、マリアの荷物が増えてきたから、ちょっと広げたいんだよね。
冒険者ギルドに着くとポーチに手を入れて中に移しておいたコラコーラを取り出す。
マリアが扉を開けてくれて中に入ると、カーンティさんとレオンさんがいた。
あれ?
珍しいな。レオンはんは憲兵さんだから普段は、城壁の外の憲兵の事務所でダベってるか、森の中をプラプラしてるかのどっちかだ。
僕は受付に座ってるカーンティさんの前に行ってコラコーラをカウンターに置きながら、
「どうしたんですか?」
と言った。
カーンティさんはそれをカウンターの下に隠しながら、
「それがな」
カーンティさんはそう言いながらレオンさんをチラチラと見る。
「俺から説明する」
レオンさんが僕の方を見ていった。
「お前はこの世界に来て間もないからわかんねぇと思うんだけどよ。ちと、最近魔物が多いんだよ」
「はぁ」
と、僕は気の無い相づちを打つ。
「今、オークを殺してその牙をギルドに持ってくると換金してくれるだろ?」
「はい」
「本当は換金なんかしてねぇんだ。皆ほっといても魔物を狩ってくるからな。でもそれじゃあ間に合わねぇんだよ。魔物がどんどん出てきやがる。それで国から魔石とは別に報償金を出すことで皆により魔物を殺ってもらおうって算段なんだわ」
「なるほど。そうだったんですか」
「それでよ。まぁ、国としても、ギルドとしても魔物が集まるってことは魔石が集まるって事だしよ。悪い事ばかりじゃあねぇ。報償金を出してりゃあそのうち魔物も元通り減るだろうとよ。楽観視してたんだわ」
確かに。
この国は工業に力を入れていて。その動力の魔石は結構重宝していた。魔石が無くなれはそれはそれで国の成り立ちが危うくなる。 何となくだが楽観視したくなる気持ちも分かった。
「それが楽観視してられなくなった。砦の近くでオーガが出やがった」
「オーガ、ですか?」
「あぁ、オーガだ。奴らは特殊な魔法や能力は使ってこねぇがなんつうか、力も強いし、素早い。しかも戦闘慣れしてやがる。単純なフェイントには引っ掛からねぇし、こっちの魔力の動きもよむ。まぁ、ゴブリンやオークってのは初心者向きだな、何とかなる。しかし、オーガとは『殺し合い』だ。あの手この手で殺しに来る、死んだ振りや連携も取ってくる」
オーガはゴブリンやオークとは違うらしい。
「それで、何でこんな話を御前さんにしてるかって言うと、、、」
それは言われなくても分かる。
「僕に召集がかかるんですね?」
レオンさんが頷いた。
それと同時に、僕の腕を抱く私のマリアの力が強くなる、レオンさんもそれを見ていて、
「最短でも4日間は町には戻ってこれない。それで、問題なのが、、、。マリアちゃんはどうする?」
マリアはさらに力を込めて、
「ご主人様と別々なんて絶対にやです!!」
と言った。
僕だって町から大きく離れての探索なんて経験が無い。
逆に町の近くでの探索ならマリアも経験があるのだが、マリアの仕事は、魔物からの剥ぎ取りでもちろん戦闘に参加した事は無い。
それに、マリは義手と義足に慣れてきたとは言ってもまだ走ることは出来ないし、荷物を持つことも出来ない。
そうなるとマリアは完全にお荷物状態になるのだが、、、。
そして、マリアがお荷物になるという事は、僕が背負うという意味になる。
マリアを背負っての戦闘か、、、。
「まぁ、そう言うと思った。良いぜ、俺が同行してやる」
レオンさんがドヤ顔で言った。
「本当ですか!?レオン様!」
マリアが喜びの声を上げる。
レオンさんは正直僕より全然強いし、レオンさんが居てくれるなら安心だ。
「あぁ、お前一人なら何の気も無しに放り込んでやる所なんだが、事態がややこしい事になっていて、ちょっと気になる事があってな、、、」
それからレオンさんは背を丸めて急に小声になって、
「というのは、城に居る異世界人がな、、、」
僕はげんなりしながらレオンさんの話を聞いたのだった。




