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ゴミ箱と呼ばれた方向のカーテンをくぐると。
部屋の中は腐った様な臭いがして顔をしかめた。
その部屋には小さな鉄の牢屋があった。
この臭いの原因は牢屋の中にあった。
何か、生き物のような物が小さな空間に折り重なっている。
近付いてよく見ると、
人かそうでないのかも判別が難しい。
衣服は身に付けていない、
体が顕になっているのだけど、
腕や足が無い者。
身体中に切り傷があって、
その傷が膿んでいる者。
体全身が黒ずんでいるもの。
そっと近付いて、
神様にお祈りを捧げ、
一人一人に『ヒール』をかけてあげる。
でも、
「どうした?」
レオンさんの声だ。
「いや、『ヒール』をかけてみたんですけどね。この膿んでる子と黒ずんでる子は良くならなかったんですよ」
「そりゃあ、もう助からねぇからだな」
腕と足が無い子は少し血色が良くなった気がする。
もう一度お祈りを捧げて、腕と足が無い子に、
「癒しを『ヒール!』」
ダメだ、『ヒール』じゃあこれ以上は良くならないみたいだ。
「おっ!神聖魔法の使い手かよ?!」
いつの間にか居た男の人が驚いてる。
「それより、この子を治すにはどうしたら一番良いですか?」
「んー。神殿に行って『エクストラヒール』を使って貰って金貨2枚。カーンティの紹介で『エクストラヒール』の発動しかたを教えてもらう場合は、いくらって言われるか読めねぇな」
「『エクストラヒール』って!!そんなもん習得出来んのかよ!!しかも、教えるだと?!」
なにやら男の人が驚いている。
「じゃあこの子を買おうかな」
僕は腕と足が無い子を指差して言った。
「ハァ!?マジで?!」
レオンさんが驚いている。
「はい。買います」
レオンさんは金色の髪をボリボリと掻いている。
男の人は牢屋からその子を出す。
腕と足も無いが、声帯も切られてて声は出せない様だ。
目は無い。多分取り出されてる。
中魔石を渡して、奴隷契約をしてもらう。
追加で小魔石を渡して簡単な衣服を着せてあげると、
その子を抱えてその建物を出た。
その子を抱き締めて、
「良く頑張った。もう大丈夫だ」
そう囁いた。
何でこんな事をするのか?って思うかもしれないけど。
多分僕はこの時怒っていたんだと思う。
この世界の在り方に、
この世界に来て浮かれてた自分に。
・
異世界生活10日を過ぎた頃、
僕にも二つ名が付いた。
『死体担ぎ』だ。
レオンさんみたいな金獅子みたいなカッコいいのが良かったんだけどな。
背中のマリアを揶揄して付けられたみたい。
マリアは奴隷商で買ってきた子だ。
顔には火傷の跡や傷も沢山あるのでフードを深く被らせている。
もちろんまだ手も足も無い。
「おう!元気かい?マリアちゃん?」
レオンさんだ。
背中でマリアが頷くのが分かる。
「元気だって」
マリオの意思表示の仕方は、
頷くか、首を左右に振るか、
『ヴー』
と唸るのかの3つ。
「よし!じゃあ今日はどうする?」
と、レオンさんに聞かれると、
「いつも通りで」
そうこたえる。
マリアの腕は腕の真ん中で切られ無くなってて、
足は太ももの真ん中で切られてる。
だから少し腕と足は残ってて、
僕が、
「よし!走るぞ?!!」
と言うと、マリアは残ってる腕と足に力を込めてしがみつく。
そして、マリアを背中におぶったまま冒険者ギルドの訓練場を走り出す。
走り方は、前にテレビで見た、サッカーの練習用の走り方だ。
流す様にして走った所で、急にスピードをあげる。
スピードを上げたかと思うと、またスピードを落とす。
これを繰り返す。
そんな走り方だ。
そして走り込みで僕が体を温めてると、
レオンさんは柔軟体操をして稽古を付ける準備をしてくれている。
こうして訓練場を使っていると、
「おいおい、また『死体担ぎ』がいるぞ?」
僕達を見て嘲笑する声が聞こえる。
僕達を見るのは縁起が悪いらしく、こんな風に言われてた。
でも、もちろん気にしない。
僕は強くなるから。
「よし!良いぜ?!」
レオンさんの声が聞こえて足を止める。
レオンさんは刃引きしてある金属製の剣を右手に持ってきてプラプラさせてる。
僕は訓練場の隅にマリアを下ろすと、
「じゃあ、ちょっと聞いて待っててね」
と言った。
マリアは頷く、普通なら『見て待っててね』って言う所だが、マリアは目が見えない。
「よし!じゃあいつも通りだ!殺すつもりで来い!」
今日もレオンさんの胸を借りる事に。
僕は正面に剣を構えると、いつものゴブリンホイホイ、
ただし、
剣を振り上げて、
空振りすると見せかけて、
大きく踏み込む!
『ガ!』
っと僕の剣は弾かれ地面に突き刺さる!
僕の剣を弾いたレオンさんの剣は僕の喉を狙う!
足の力を抜いて、
体を下に落とし剣をやり過ごすと、
地面に刺さってる僕の剣を抜き、
その力でそのままレオンさんの足を狙った!
が、『ヒョイ』と避けられ、
伸びた利き腕を剣で打たれる!
『痛って!』
と叫びたくなるが堪えて立ち上がる。
骨が一本折れた。
でも、レオンさんのOKがないと『ヒール』は使えない。
それに訓練は続行だ!
構えを左半身を前にした構えから、
右半身を前にした構えに変える。
大きく踏み込んで!
スキル、
『一閃』
高速で放たれた剣筋は、
レオンさんに見切られる!
レオンさんの剣で僕の剣は『ぬめらん』と流されてしまった!
恐らくスキル『柳』だ、
直接攻撃系のスキルは受け流されてしまう!
そして体勢が崩れた所を袈裟斬りにされてしまった。
「良いぜ」
その言葉を合図に、
『ヒール』
まずは右腕を治す。
最近『ヒール』は詠唱破棄出来るようになっていた。
右腕の痛みが引いていく。
「全然ダメだな、魔力の動きがミエミエで次に何のスキルが来るのかバレバレ」
『ヒール』
次は袈裟斬りにされた時に折れた鎖骨の痛みが引いていく。
「魔力は体内だけで動かすようにしろ、体表には決して出すな」
これは何度も言われてるんだけどな。
なかなか実用までは至らなかった。
「ミエミエでもゴブリンや、オークにはには通じるがそれ以上になると確実に通じねぇ。まぁ、数をこなすこった。魔力操作はすればするほど巧くなるってか、他に道はねぇ。何度も何度も繰り返して巧くなるんだな」
繰り返し殴られろって事かな。
「よし!じゃあ本番だ!」
僕はマリアの近くに行って、マリアをもう一度背中に背負う。
僕達が魔物と戦う時はいつもマリアを背中に背負った状態で戦っている。
今までは準備運動。
これからが本当の訓練だ。
レオンさんを睨んで、剣を正面に構えた。
・
MPが0になるまで『ヒール』を使った。
一応全身から痛みが引くと、マリアを正面に抱き抱え直して、崩れ落ちる。
そしてなんとか壁にもたれ掛かると、マリアの背中をポンポンと叩いた。
マリアが腕と足に力を込めて俺の体を締め付ける、
多分『お疲れ様』って言いたいんだろう。
「ありがと」
って言うと、マリアは小さく頷いた。
「お疲れ!じゃあ俺は行くぜ!」
レオンさんはそう言って去っていく。
それから何とか自分に息が落ち着くのを待ってから受付へと移動する。
一日を訓練だけで終わっていたら生活出来ないし、何時まで経ってもマリアを治してやれない。
クエストを受注してお金を稼がなければ。
「お願いします」
ギルドの受付嬢のカーンティさんに話しかける。
「どうする?いつもと一緒で良い?」
「はい、オークで!」
いつものクエストを受注する。
受けたクエストは
『オークの討伐証明を持ってギルドに戻れ!』
だ。
オークを出来るだけ殺して、その討伐証明の歯を持ってギルドに戻るというものだ。
オークを倒して手に入る魔石と、討伐証明と交換で貰える硬貨が魅力だ。
このままオークの討伐に行こうかと思ったけど、
MPが心もとないので雑貨屋に寄ってポーションを買った。
この世界のポーションはウイダーイ◯ゼリーの様な容器に入ってて最初見た時はビックリした。
触った感じもあのビニールみたい感触だ。
使う時は飲み口の上に付いている蓋の部分を折って、
口から補給したり、傷口にかけたりして使う。
そして、使い終わったらそのまま『ポイ』だ。
この容器は魔物の剥ぎ取り素材から出来ているらしく、土に帰るか小動物が食べてしまうらしい。
ちなみに、このビニールの様な素材や、他にはゴムみたいな素材もある。
だからパンツを買えばもちろんゴム付きだ。
靴を買えば下部ににはゴムが付いていて衝撃を和らげてくれる。
他にも、工業的な製品は色々あって生活は思っていたより意外としやすい。
ただ、食べ物はやっぱり日本が恋しいな。
屋台を見ると、焼き鳥的なものを売ってはいるが、
あの、醤油が焼ける臭いがしない。
それでも腹が減ってはなんとやら、適当に選んで食べ歩きする。
焼き鳥の串を一本、背中のマリアの前に出して、唇を焼き鳥でチョンチョンと突つくと、パクりと食べた。
次は『ラブホテル』の有料冷蔵庫から持ってきたオレンジジュースを蓋を開けてマリアの前に差し出す。
僕もマリアも慣れたものだ。
食べながら町の外を目指した。




