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39限目

 自室から寮の廊下に出ても周りには人影は無かった。まあ、多分みんな授業が受けた後わざわざこっちに帰ってきたりしないで直接食堂行ってるんだろう。こっちにいるのはなんか忘れ物とか自室にあるものが必要だったやつとか、俺みたいに授業がなくて自室にいたやつとか。

 普通、授業無いならないでどっかで自習してたり、研究会でなんかやってたり、後は食堂とか広いところに集まって遊んでるもんだしな。さて。


「今日の晩飯はなんだろうな……昨日は野菜を牛乳で煮込んだ ホワイト 汁物 (シチュー)だったし、揚げ物とか食べたいかも」

『揚げ物?』

「油で揚げた食べ物。表面がカリッとしてるんだけど、中は汁気がたっぷりだと美味しいね……肉の場合」

『つまり肉の揚げ物とやらが食いたい。野菜はお呼びじゃないと』

「野菜は……まあ野菜のも好きだけど、肉がいいな……っと、そろそろ黙る」


 お。さすがに1階まで降りてくると人影が見え始めるな。


『おう。ってもまあオレはお前が喋ってても黙っててもどうでもいいんだけどな』

(声が出ても出なくても、じゃなくてか?)

『まあそうだけど』


 まあ、今まで声を出さないでしゃべったことなんてないし当たり前なんだけど、慣れないなぁ……黙って頭の中だけで喋るってのは。これあんまりやってると、そのうちしゃべったつもりでも声が出ないなんてことになるんじゃなかろうか? いや、さすがにそれは無いか。

 無い、よな?

 歴代の持ち主にそんなのがいなかったか確認しておくべきだろうかな。みんなこんな感じで剣と頭の中で喋れたんなら、どれくらいで慣れるかどうかも知ってるかもしれない。


(なあ)

『うん?』

(頭の中で喋るのめんどいんだけど、お前の持ち主たちってこんなのによく慣れたな?)

『ん? 頭の中だけで喋れたやつなんて二代目と……後一人か二人くらいだぞ』


 はえ!? え、これってみんなできることなんじゃ無かったのか。できないとしても慣れの問題とか、そういうんじゃなくて? もしかして下手したらこいつの声がそもそも聞こえないやつとかまでいたりするのか?


(じゃあなんでお前って俺の頭の中で考えたことがわかるんだ? いや、俺たち頭の中だけで会話済ませられるんだ?)

『そりゃお前が俺とうまく適合してるから……まあつまり結びつきが強いからだよ』

(結びつき……結びつき……それって、まさかとは思うけどさ)

『あ?』

(それって例の俺に与えられた《連結 リンク》の機能だったりしないよな)

『……おおう』

(おい、考えてなかったとか言うなよ)

『いや、悪い。考えてなかった』


 ああそうかよ。考えてなかったのかよ……まあいいけど。


(じゃあその何人かは、頭の中で喋るのにどれくらいで慣れたんだ?)

『……割と最後まで慣れなかった気がする。早めに周りの人間にオレのことを説明して理解を求めてたぞ』

(ううぇえ……って、あれ? 二代目を除いて一人か二人って)

『どうした?』


 いや、どうしたって……勇者って俺三人しか知らないんだけど。500年前の初代、100年前の二代目、50年前の先代……いや、俺はまだあくまで候補だから三代目か。全部でその三人しか知らないのに、二代目を除いて一人か二人って言われも、それってほぼ全員じゃ無いの? って思うんだけど、つまり勇者以外にも剣の持ち主がたくさんいたってことなのか? まあ、そうなんだろうな。他の説明は付かないし。500年前と100年前の間に400年も空白があるし、その期間何もしてなかったと考えたほうがよっぽど不自然だ。


(お前、今まで何人くらいに使われたの?)

『うーん……あんまり合わないやつだと使われる自覚も無いし、少なくとも十人以上……ってことにしておこうかな。まあ勇者と同じレベルのやつといえばせいぜい4〜5人だけどな』

(ええと、れべるって……前にも出てきたよな。意味わかんないんだけど)

『力量とか、そういうのを総合してレベルっていうんだよ』

(ふーん? 『力量とか ・・』……)


 とか……『とか』ってなんだろうか? まあ、なんでもいいか。どっちかっていうと、俺がその数人に数えられるだけの人間になれるかどうかに興味があある。まあ、確かあんまり見込みは無いんだっけか。もっとすごいやつがいるとかなんとか。実際、自分でも勇者になれるとはなかなか思えないしなぁ。


『まあなんだ? お前にも見込みはあ』

「お、ウンドじゃん。お前もこれから食堂か?」

「おお、セイか。起きたんだな」


 剣と喋りながら歩いていたら、食堂の前で室友 ルームメイトに遭遇した。おお、ちゃんと切り替えて会話ができたぞ。意外となんとかなるもんだな。一瞬ちゃんと声が出るかどうか心配になったんだけどな。


「あ……ああ、何? お前一度部屋に戻ったの?」

「ああ。論文を部屋に置いてきちまってな。さっきそれを拾ってから一度教授室に行ってたんだ」

「……なんならその時起こしてくれてよかったんだぞ。すぐ飯の時間だったんだし」

「おお、そこまで考えてなかった」

「お前もか……」

いつも読んでくださってありがとうございます。

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