37限目
いつも読んでくださってありがとうございます。
ぶっちゃけ『ぽい』云々で言ったら、俺なんてかけらも『ぽさ』なんてなさそうなもんだしな。勇者っぽい……ぽい……うーん? とりあえず初代の印象 から紐解いてみようか。
ええと、とりあえずは武器だな。武器は……いろんな種類の武器を使いこなしたらしい。
一番よく使ってたのは剣で、2番目が槌とかって話だけど、他にも槍とか斧とか鞭とか弓とかよくわからない形状の穿孔機 とか、わりとなんでもありだったとか。だけど勇者の武器として一番印象深いのはあれだ。それ自体が勇者の造形物 として作られた武器《聖鍵エクスカリバール》の模造品 『カリバール』。そう、釘打ちされた箱とかをこじ開けるのに使う工具のあれ。本来は魔獣の毛皮や鱗を引き剥がしたり、内臓を引っこ抜いたりするえっぐい武器だったらしいけど、今はもっぱら工具として使われてる。まあ勇者自身聖鍵というだけあって鍵をこじ開けるのにも使ってたらしいし。
(そういえば)
『どうかしたか?』
(お前勇者の武器っていう割に、勇者の伝説にほとんど出てこないな)
『……あいつ、あんまりオレのこと使ってくれなかったんだよ』
(なんで?)
『ほ、ほら、オレ優秀だから! 切り札的な!』
(ふーん)
『……』
(……)
『……なんだよ!』
(いや、なんかわかった。お前、身につける だけで効果あるんだろ)
俺があのニセドラゴンと戦うときも、なんだかんだでこいつを武器として使った覚えがない。やつを殺した決め手は完全にただの頭突きだった。本人……本剣? も自分は普通に壊れるって言ってたしな。実際剣身の半分が永遠に消えて無くなったっぽいことを思えば、変に使って喪失の危険 を避けるのは当然のことかもしれない。
『そ、そうだけど、それがなんだよ』
(つまり切り札どころかそもそも使う理由がなかったと)
『ち、違うぞ! 俺は重要な武器だったさ』
(いや、だけど武器として使われてないんだろ)
『魔王にとどめを刺したのはオレだ!』
(それ以外は使わなかったんだな)
『むぐっ!』
(もしかして魔王にとどめ以外の傷をつけるのにも他の武器を……)
『ぎくっ!』
(それってあれだろ、一部の魔獣とか幻獣に、とどめとしてなんか別の道具使う感じ)
『ぐむむむむっ! い、いや、オレを矢代わりに使った投射魔法で一撃必殺だったし!』
(投射魔法って聞き覚えないけど……それってその魔法がすごかったんじゃ?)
『ぎくぎくぎくぅ!』
「お前、武器としては使えないやつだったんだな」
『ぐあっはああああああああ!?』
人の頭の中で大絶叫するんじゃない。とりあえず俺も当面はこいつ以外の武器を使うべきかもしれないな。そういえば室友 の一人がカリバール二刀流だった。わざわざあれを武器として使うってことは勇者に憧れてたりするのかもしれない。勇者っぽさに関わる武器について今度話を聞いてみよう。
それからええと……じゃあ次は武器以外での勇者っぽさだな。たしかものすごい魔法をがんがん使ってたとか、そんな話があった気が。まあ残念ながら俺は勇者の魔法なんて直に見る機会は一度もなかったし、『魔宝』が使用されるのも見たことはないけれど、精霊魔法をヒューマンが使えるってことを見つけ出した人は、勇者の魔法をみて憧れた普通の村娘だったとかなんとか。それだけ鮮烈に記憶に残るものだったんだろう。まあ、俺の魔法の腕前はたかがしれてるとしか言いようがないな。考えるだけ無駄だ。
あとは懐の深さとか? 世界中歩き回って人間たちを助けて回ったとかなんとか言われてるし、そういう面はあるだろう。当然、そこには何人もの仲間がいたという話だ。《反位力場結界 》によって完全無敵な人間がそうでない無防備な人間と一緒に旅をするというのはどんな感覚だったのだろうか? 多分、普通の人間だったらあっという間に仲間達を置いていってしまうことだろう、と思う。まあ真相は謎だけど。
……結論から言って、俺には勇者らしさは全くないな。
(ってことは『おまけ』ってのが俺が選ばれた理由なのか)
『……』
(おい、いつまで落ち込んでるんだ)
『……おぅ』
(少なくとも俺が使う限りは壊れる心配しなくていいんだろ?)
《覚醒》の効果で完璧な状態を復元して使えるらしいからな……ぜったいそれ《覚醒》の領分じゃないし、俺がこいつを使う気があるかどうかはまた別の話だけど。
『お、おう』
(じゃあ具体的にそれって何?)
『わるい、なんの話だ?』
(俺が選ばれた理由の話だよ。お前に……っていうか校長先生に?)
『あー……多分だけど《殺印》ってやつだろ。対象者に他存在の魂が絡まってる状態がオレの《覚醒》にどんな影響をあたえるのかとか』
(結果は……まあ大成功だったのか?)
なんてったってディスケロスの殺印で《完全物理耐性》がつくくらいだからな。ドラゴンの殺印とか、カーバンクルの殺印とか、そういうのがどんな影響を及ぼすのか気になるところだ。
『いや、微妙じゃないか? お前以外の殺印持ちがオレを使っても、取り付いてる魂にまで影響出ないだろうし』
(そうなのか?)
『多分』
(なんか……多分ばっかりだな)
『別にオレ、長生きしてるだけどなんでも知ってるわけじゃないし』
そんな開き直り方があるかよ……
《聖鍵エクスカリバール》
一見すると一本の金属の棒のようだけど、実際は数百とも数万とも言われる極小のパーツが寄せ集められたバールのようなもの。パーツ一つ一つが透過魔法を備えているので壁の中や鍵穴に入り込んで絶妙に鍵をこじ開けることができる。
《カリバール》
エクスカリバールを模して造られたただのバールのようなもの。一般的には工具。時々武器として使われる。
ちなみにあまり一般的ではないが長さの単位にもなっており、バール=30センチ リバール=45センチ リリバール=60センチである。
一般的に工具として使われるカリバールの直線部部は1バール、武器として使われるカリバールの直線部分は1リバール程度。リリバールは聖鍵エクスカリバールの長さである。ややこしい。




