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35限目

「ゴブリン……いや、ハーフゴブリンなのか」

「おお、ご名答。よくわかったね」

「はあまあ、すごい美人ですからね」


 俺に紙片 メモを差し出したその人は端的に言って、下着の上から前掛け エプロンだけを身につけた美少女だった。単に見た目がいいというより、その良さが非常にゴブリンの特徴に合致している。本来のゴブリンが持つような自ら光を発するような金髪に透き通るような白い肌を備えていて、濃い体毛や筋肉が付きがちの体格はヒューマンの血のせいか丸みが優り体毛もほとんどない。他の大概の人種であれば目の白い部分がうっすら黄色いのが印象としては良くないだろうか。

 もうちょっとゴブリンの血が濃ければ美少女というより美女と呼べる体格になったかもしれないけれど、背は俺よりもだいぶ低そうに見えるかな。多分ゴブリン特有の【強化魔法】は使えないのだろう。


「ああ、ヒューマン基準だとそうだよね」

「ええっ? ヒューマン基準?」


 どうやら同性から見ても美少女だったらしく、納得したような先輩の言葉にモディエフが素っ頓狂な声で返す。勉強不足。

 ちゃんと勉強してると習うんだけど、ゴブリンの顔ってみんな結構似てて容姿ではあんまり美醜の区別がつかないそうだ。ハーフになってもその特徴は変わらないそうで、容姿ではない美醜の基準に当たるところで、この先輩は自信がないんだろう。


「美人ていうか、女の子 ロリじゃん。寿命はヒューマンもゴブリンも同じくらいだろ?」


 あ、『美』じゃなくて年齢的なことを気にしたらしい。ちなみにそっちだとしても勉強不足な。ゴブリンとヒューマンの寿命が同じくらいで年の取り方も若い頃は同じくらいだけど、彼らはヒューマンから見ると不老と言っていい。見た目は年を取っても若いままだったりする。純粋なゴブリンはそれでもヒューマンから見た成人的な体格になってから成長が止まるのだけど、ハーフだとかなりばらつきが出るらしい。彼女もかなり早いうちに見た目の成長が止まったのだろう。


「まあ、年を直接は、言わないけど。多分君の1.5倍は、生きてるよ。うん」

「ちなみに俺は今年20になるが、マキシアは俺より上だぶっ!?」

「ベスティカ。余計なこと、言わない」


 マキシア先輩にどつかれたベスティカ先輩が(1.8)ハード メートルくらい吹き飛んだ。多分、自分で飛んで威力を殺した……とかだと思うけど、それにしたって力の強さはまさに〝悪たるゴブリン〟て感じだ。ハーフだけど。っていうか今更だけどこの先輩の専攻ってなんだろう? 魔眼持ちだし、所属してる研究部も知識 インテリ系だから、てっきり魔法使いやなんかかと思ってたけど、もしかして前衛職? この体格で棍棒とか振り回すのはあんまり想像できないなぁ。

 と、今更のように魔眼研究部の所在が記されたであろう紙片がモディエフに渡される。そういえば俺、受け取ってなかった。もらったモディエフはなんだか嬉しそうだ。


「マキシア先輩まじかっこいいっすわ」

「お前は何語を喋ってるんだ」

「いやだって、オレは今見たんだよ」

「何を?」

「先輩があいつの意識の隙を完全について、機と位置を完璧に合わせた攻撃をしたのをだよ」


 ベスティカ先輩は自分から飛んだんじゃなくて意識の隙を貫かれてぶっ飛んだそうだ。ひでーな。


「催眠の魔眼の補助があってこそ、だけどね」

「そうなんですか?」

「ええ。まともな催眠には時間かかる、けど一瞬意識をそらすのは簡単、私はこの技で前衛を務めた」

「先輩、今度ちょっと遊んでくださいよ」

「暇なときに、ね」


 肉体派女子同士話が通じるんだろうか。結構モディエフの言動は酷いもののような気がするんだけど、先輩は一向に気にした様子がない。なんか俺一人おいてけぼりくらってるんじゃないだろうか。ここまで来てこの先輩方に二度と会わなかったりしたら、この時間がなんだったのかわからなくなるよな。そもそも腹を満たしに来ただけなのに、一体何をこんなにしゃべってるのか、既によくわからないというのが本音なんだけど。

 うん、そろそろ帰ろう。


「ええと、それじゃあ俺、今日はそろそろ戻ろうかと思います」

「そう、なの?」


 そうなんです。


「や、結構楽しかったんですけど、報告書 レポートの課題が残ってるんで」


 ディスケロス討伐についてのね。やられたのが右じゃなくて本当に良かった。だったらきっと期限までに間に合わなかったことだろう。確かに物をつかんだりするにはそれほど苦労はしないけど、腕が全然持ち上がらないものな。何かを書いたりとかできる気は全くしない。


「そう、お疲れ、様」

「あの、また来ますよ。今度は妹の方も連れて」

「お前何仕切ってんだよ」

「別に問題ないだろうが」


 ええい、別れ際までいちいち突っかかってくるんじゃない。話が進まん。


「まあそういうわけなんでベスティカ先輩にもよろしくお伝えください」

「え、持って帰らない、の?」

「おまかせします」


 美少女のそこはかとなく納得いかないという顔が印象的だった。いや、気絶させたのあなたですし。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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