表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/42

34限目

 結局、毒はなかったらしい。


「味……どう……?」

「悪くない」

「うん。悪くないんだけど、こう」

「肉本来の旨味みたいなものが薄いような気がするな」


 出てきた薫製肉は約三分の一 ()ディコン キロ。味は……不味かないし、毒で舌がしびれるとかめちゃくちゃ辛いってこともないんだけど、まあなんか普通。美味しくもない。まさに魔獣肉! って風味もない。あえて言うなら若干筋ばってて硬いかな。脂身もあんまりないし。

 そっか、そういう意味では薫製って風味とかを足すものだし、いい調理法なのか? 詳しくはわからないけど、俺からの魔獣肉に対する評価は一点。良い出汁は取れなさそうだということに尽きる。


「オレが目で見るに、肉自体の熟成が足りねーんだろうな」

「なんだその専門家っぽい意見」


 調子に乗ってモディエフが何やら偉そうに宣い、それに先輩が突っ込む。ですよねー。自分でろくに料理もできない……かどうかは知らないけど、少なくともしようとはしないくせに、偉そうなこと言うな。

 ん?


「目でって……お前まさかそれ、生き物じゃなくても効くのか?」

「それ?」


 先輩の突っ込みは無視して、モディエフの言葉をより深く考察する。

 まさか弱点を見極める魔眼が料理の欠点も見抜くというのか。もしかして栄養均整 バランスなんかも!? だったらもっと普段から料理に加わって意見言ってくれよ! 人が普段どんだけ気を使って料理してると思ってんだ。

 ……いや、ちょっと待てよ。お前の目、見てわかる弱点しか拾えないんじゃなかったか? 味って見てわかるものなのか?


「流れ的に『それ』ってのは魔眼のことか? 見抜く系?」

「あ、もう面倒なんでバラしますけど、弱点とか弱ってるところを見抜くやつです」

「おい! お前がばらすなよセイ」

「いや、でも、今更だけど先輩方、お前の名前も知らないんだぞ?」

「……おお」


 お前が口にしたから、俺の名前はベスティカ先輩知ってるけどな。


「今更ですけどベスティカ先輩、マキシア先輩、俺は未専攻のセイです。こっちが【戦士】専攻のモディエフ」

「ユーティエっていうのは? 妹?」

「や、妹はオットーって言ってこいつと同じ【女戦士】です。ユーティエはパーティの【癒し手】で」

「女の子?」

「はあ、まあ」

「……それで……全員?」

「ええ、一応。魔法使いが欲しいとこなんですが」

「……やるね……包列女 ハーレム?」

「いいえ雑用です(俺が)」

「照れるな照れるな。美少女に囲まれてお前も嬉しいだろ?」


 マキシア先輩、窓から手だけ出して親指立てないでください。いらっときます。

 ベスティカ先輩、多くは語りません。ただその身振り ジェスチャーはなんていうか……死ね?

 あとモディエフ、お前は死ね。


「おほん、それで、こいつの妹もまあ魔眼持ちなんですけど、こいつとは逆に相手の強みとか自信を持ってるところを見抜くんだそうです。魔法の素質とかは無理らしいですけど」

「なるほどな。そっちは進化させると未来視とかいけるかもな」

「そうなんですか?」

「噂だ噂」

「……信憑性のある、噂」

「え、じゃあオレのは?」

「……」

「……さあ? そういうのは専門の研究部で聞いてくれ」


 まあ、魔眼持ちも貴重らしいし、さらに魔眼を進化させるのって難しいらしいからな。先輩だからってなんでも知ってるわけじゃないか。

 だいたい200年位前のことだと習ったか。青の精霊を束ねて精霊王を従えたヒューマンが精霊王と交渉した結果、世界中のヒューマンは生まれつき一つの精霊と一生を共にすることになった……らしい。そのせいで、万民の魔法と呼ばれた精霊使いは選ばれた人間だけのものになったけど、その代わりヒューマンは『成長』という魔法を得た。

 研鑽を積み、年を重ね、戦うことによってその経験値を自身の体に反映する魔法『成長』。努力がよりはっきりとした形になる魔法というべきか。個人の素質……というか結んだ精霊の持つ素質でその成長の方向性にはある程度型があり、強い精霊であれば彼女たちのように魔眼なんて形質も現れるという。俺はまあ、未だに自分の精霊の方向性がわからなくて四苦八苦してるわけだけど。ちゃんと方向性を見出し極めた人間は、一人で魔獣と戦うことができるそうだ。実際【銀の千嶺】は単独で幻獣 ディスケロスすら討伐できてたしな。

 まあ、あそこまで至るのはほんの一握りだろうけど。


「どうする? 今後の訓練の方向性、魔眼の進化に切り替える?」

「お前はオレらのこと考える暇があったら強くなれ」

「ちゃんと役割はこなしてるぞ」

「一生雑用で良いんならほざいてろ」

「む」


 耳に痛いことだが、結局お前も俺のこと雑用だと思ってるんじゃねーか。


「ええと、まあ、よければ魔眼研の所在教えようか? 多分向こうも貴重な魔眼持ちの情報は欲しいだろうし」

「……まあ、一応お願いします」

「ん、マキシア」

「……書いてくる」


 窓から目も手も引っ込んだ。そういえば、結局マキシア先輩の全体像を見てない。廊下とかであったら向こうは気付くのにこっちは気付かないとかで気まずい思いをしそうで嫌だなぁ。いや、案外全面兜 フルフェイスヘルメットとかでやっぱり目だけとか、そんな感じで現れるかもしれない。

 人が一人減ったせいで途端に無口になる中で、もそもそと薫製肉をかじりながらそんなことを考える。そもそも片目は催眠の魔眼だったか。そっちは眼帯などで隠している可能性が高いわけで。もしかしたら、教室の扉の隙間から片目だけを出して声をかけてくるかもしれない。

 うん。なんか風味の強い野菜とか、味噌とか欲しいな。あんまりぱさぱさしてないし、食べやすいんだけど。やっぱり味だよな。

 と、背中から影に飲まれて、肩が叩かれる。


「書いてきた」


 おい、普通に出てきたぞこの先輩。

いつも読んでくださってありがとうございます。

金曜日、土日と、言ったことを守れなくて申し訳有りません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ