25限目
「で、どっちの医務室に行きたいんだ?」
「第一だよ」
医務室と呼ばれる部屋は学内に三つある。
わかりやすいのが怪我をしたばかりとかとか、調子が悪いとか、もっぱら診断とか応急処置を必要とする人間が行く部屋だ。第一実習室ともいうのだけど、普通医務室に連れて行けって言ったらこの部屋だ。
二つ目が第三医務室。二つ目 が第三医務室 。すぐに治らない大怪我をした人間がいる場所だ。泊まり込むこともあるし、同じ怪我やなんかで通うこともある。時々学内で妙な呪いとか病気が流行ってる最中は大忙しらしい。俺が入学してからそんなことは一度もなかったし、俺もお世話になったことは無いけれど、もしかしたら先輩がお世話になってるかもしれない。
ともあれ三つ目、医術の勉強をするための部屋だ。なんでそれを医務室というのかは知らないけれどとにかく第二医務室と呼ばれるそれには、多分今補習中のユーティエがいることだろう。なんでこっちが第二であっちが第三なのやら。
「ふうん? お姫様に会いに行かないのか……あ、それともこんな情けない姿見られたく無いってか?」
「ウゼェ……ただ死ぬほど辛いからってだけだよ。だいたい今行ったって会わせてもらえないだろ普通に」
「ん、それもそうか。ところでさ、その怪我が変なのって『殺印』のせいなのか?」
「いや、ん、うん? そう、なのかな?」
「なんで疑問系なんだよ」
「いや、なんでって言っても……」
モディエフが言うところの『怪我が変』な理由は、多分《完全物理耐性》のせいだ。それを一つ後ろに戻せば、すなわちディスケロスの『魂』とやらのせいになる。で、ディスケロスの魂は『殺印』と同じわけだから、この怪我が変なのは殺印のせいと言っても過言では無い。のかもしれない。なんとなく『剣』のせいだと言ってしまった方が早い気がするのだけど。
けれど、実際には『剣』のせいにするわけにもいかない。その話もできないのにそういうわけにはいかないだろう。だったらおとなしく『殺印』のせいということにしてしまうのが無難なのかもしれない。
「あ、お前いまなんかごまかそうとしてるだろ」
「なんでだよ! 別にしてないよ!」
「間が空きすぎなんだよ。お前嘘つきだし」
そうだろうか。うん、確かに会話中に間を開けすぎちゃうことはあるかもしれない。でもそれは違う。
「嘘なんてついてないぞ。物忘れが激しいだけだ」
「お前あんまり嘘ついてると落とすぞ」
「だからついてないってば」
「それはそれで問題だと思うけど」
うん。自分でもそう思った。いや、実際は忘れてるわけじゃなくてな。どうもいろんなことをいっぺんに考える癖があるせいか、考えていることが頭からすっぽ抜けるというか、なんだかそんな感じってだけだけど。
「あと、それに納得するかどうかと、お前がごまかそうとしてるかどうかの判断は別だからな」
「えええ……」
「ここを攻めろとオレの目が言っている」
「嘘つけ。見えない弱点の判断なんてできないだろうが」
「相手の反応で弱点を攻めてるかどうかはわかる」
「ほんっと才能に溢れてるようで何よりだよ畜生! 認めねえからな」
「妬むな妬むな」
まあ、妹の方は魔法の才能を見抜くことはできなかったらしいし、そう言った人の姿を見ただけでは判断できない才能が俺に隠されている可能性を捨てる必要は無いだろう。
きっと。
そのはず。
『剣』曰く俺は二代目勇者以来の逸材らしいしな!
……二代目の話なんてろくに知らないから、それがどれだけすごいのかさっぱりわからないけど。
「で、何を認めないって?」
「そりゃお前」
お前が今俺の弱点を攻めてるという主張……っとあぶね。
「弱点を攻めてることを判断できるってやつ。そんなこと言うの今日が初めてじゃねえか」
「ふむ」
俺の弱点を攻めてることを認めない……そう言ったてしまったら、弱点を攻めてることができるという主張を受け入れることになる。以前からそういう話があったならともかく、今回初めてなのにそれを受け入れたらほとんど弱点を見抜かれたと認めたようなものではあるまいか。
考えすぎだろうか。
ていうか、別にそんな深く考えなくてもこいつ何がなんでも難癖つけてくるんじゃ無いか。
「えいや」
「ぐえぇ!?」
また肩!? しまいにゃ泣くぞ?
お前これで『今は間違いなく弱点を攻めてる。オレにはわかる』とか言いださないよな。
「今は間違いなく弱点攻めてるぞ」
言いやがった。
「そんなもん見なくても悲鳴でわかるだろうが!? ていうか趣旨が違うだろ、なんなんだお前! 何がしたいんだよ」
「いやぁ、とにかくお前を虐めたい」
「何が楽しいんだそれ」
「何もかもが。お前弱いんだもん」
「弱いのもの虐めの何が楽しいんだよ」
「お前だから虐めて楽しいんだよ」
「時々お前ら姉妹と同じ言葉を喋ってるのか不安になる」
「……お前はもうすでに死んでいる」
「本当に意味わかんないこと言うのやめろよ!?」
まさかこの会話を医務室まで続けなきゃいけないのか……って。
あ、医務室ついた。
いつも読んでくださってありがとうございます。
この話、どんどん明後日に行っちゃう……




