24限目
あけましておめでとうございます。
何が面白そうなことかよ、というのが俺の思いなわけだが。特にこうやって怪我してるところに体重かけられれば尚更な。
「あ、はァ……!」
けれどもはやそんな思いも声にならない。っていうか、声にする余裕が無い。ただ息を吐き出して歯をくいしばる。なんで痛みをこらえてる時ってよだれが出るんだろうな。俺だけ?
「ほーらほら、とっとと喋った方が身のためだぞぉ?」
「しゃ、べれねえ、よ」
「んー? ディスケロスの殺印もらったってのに貧弱なのは変わんねーんだな」
変わるかっ! ただ瀕死だった幻獣にとどめさしただけだぞ。そんな経験一つで人が強くなったりするものかよ。そう言ってやろうかとも思ったけど、とにかく痛くてしゃべれない。なんだか知らないけどこいつ、どんどん力を強めてくるぞ。
「おま、えぇ……!」
「お、なんだ? やんのか?」
「や、らねぇーよっ」
「なんだ、やるなら離してやるのに」
「いいから離せっ」
こっちの事情 御構い 無し……っていうかわかっててねじ込んできてるだろ、お前。だけどな、さすがに1時間罠に苦しめられてたんだ。今更傷のある場所を握られたくらいで弱音を吐くと思うなよ。俺を参らせたいなら幻獣くらい連れてこいってんだ。
「お前が答えないとなー、そのうちオットーが来るぞ」
なん、だと?
「おま……」
「オレとオットー、二人分の体重に耐えられるか?」
「っざっけ……!」
「ほらほらどうした? オットーが魔獣 との戦いを終えて闘技場 から出てくるまでそんなに時間は無いぞ?」
こ、このや……女郎、なんて恐ろしいことを……ってこんなの恐ろしがるの俺くらいのものだろうけどさ。
基本的にオットーとモディエフは双子という響きを裏切らず、見た目も性格もそっくりだ。武器を使うときだけ利き手が逆だったり(なんでも昔矯正させられたらしい)、ちょっとした特技がお互いを補完できるようになってることを除けば、どこをどうとっても区別つかないくらいそっくりだ。
ぶっちゃけ行動傾向 は完全に同じだと言ってもいい。あいつが合流したら、状況が読めてなくても確実にモディエフの上から体重をかけてくるに違い無い。
「別に、なんもねえよ……」
「ようやく喋ったと思ったらそんなのか、つまんないやつだな」
「意味が、わかんないっつの」
「だーかーら、お前が今何してんのか教えろってんだよ」
「なんもねえって」
「ねーってことはねーだろ。なんでこここんなにしてんだよ? ってな」
「あ、おま、ちょ……そんなとこに、がっ!?」
「ふむふむ。どんなにいじっても骨の位置は変わんないな?」
何気色悪いこと調べてんだっ! さっきから指でゴリゴリしてると思ったらそういうことかよ!?
「なんでこんな怪我してるのかもわからねーけど、この怪我がどうなってんのかはもっとわかんねーな」
「満足したなら、離せ」
「オレが途中でやめたら後から来たオットーが引き継ぐぞ」
「やめなくてもあいつ同じことするだろ!」
「オレが止めてやろうかって言ってんだよ」
「適当言ってるだけだろ」
「それが無いとは言わない。まあ、あれだ。一人だと寂しいんだよ。構え」
くそう、オットーと同じようなこと言い出しやがって。
ううう、いっそ気絶できたら楽なのに、剣がさっきからなんかビリビリしてて全然気絶できる気配が無い。いっそ例の《連結》とやらで痛みを送り込んでやりたいけど、そんなことしたらこいつの気分が盛り上がるだけってわかりきってるしなぁ。あくまで怪我をしてることだけ に見せかけないと……
いや、なんか完全物理耐性のこと探られてるし、今更無理かなぁ。
「う、るせぇ、構って欲し、い、なら、医務室に連れて、けって、んだよ!」
「蹴れって」
「医務室、連れてけ」
「んー? オレにオットー置いてけって?」
「いつものことだろうが」
……ああ、ようやく肩から手が離れた。
これでようやく動ける。いや、動けないけど。なんか腰抜けた。




