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「っあー……つっかれたー」


 寮の自室に戻って、最初にしたのは寝台に飛び込むことだった。

 しばらくごろごろして感触を楽しんみ、それから仰向けになって大きく口を開ける。


「あーーーー! あーーーーーーー! あーーーーーーーーーーーーーー!!」


 なんだか、すごく久しぶりに息をしているみたいだ。

 実際何度か危なかったけど。


「このままお布団と友達になりたい」

『おいおい気がはええなぁ。まだ明るいってのに』


 明るいのは関係ないと思うけどね。

 とりあえず起き上がって『剣』を手元に引き抜く。

 あー……やべ、布団に思いっきり刺さった痕がある。

 後先考えずに布団に飛び込んだりするから……とりあえず枕もとの鞄から針と糸を出してみる。

 探索者ってのは基本的に足手まといだ。旅程を組んだり、必要なものを用意したりとか、そういった形での仕事がほとんど全部回ってくる。任されるかといえばまた別だけど、回ってくる。だからこうして鞄の中には針と糸だけじゃなくていざという時のあて布とか、砥石、ロープ、黄燐、その他もろもろすぐに出せるように用意してあるわけなんだけど……うん。

 針と糸の管理は俺の仕事だったけど、実際に繕い物するのが得意なのはユーティエだったんだよな。

 一度ユーティエに習って上衣シャツを繕ったとき、間違えて袖を閉じちゃったせいでなかなか痛い目を見た……ユーティエが。

 うん。けなげでいい子なんだよユーティエ。

 大丈夫、ちょっと糸が絡まってるだけだよ、ほら! ほら! とか言って一生懸命袖に手を通そうとしてくれたときの勇姿は……まあ忘れたけど、そのあとの衝撃的な光景は多分一生忘れないだろう。

 勢い込んだ拍子に上衣が真ん中から裂け、羽織っていた外套ローブが翻り、勢いのせいで胸巻き ブラジャーが……

 これ以上いけない。

 とりあえず布団は保留にしよう。うっかり敷布団に縫い付けでもしたら目も当てられない。

 それより確か針と糸の入ってるところには、一緒に別のものも……


「お、あったあった」


 そうそう、これこれ。巻尺。


「とにかくあれだ。お前の鞘も、使えそうなものが無いわけじゃないんだけど、専門の人に任せたほうが無難だから」

『まあ、オレの満足いくもん用意してくれるんならとやかくは言わねぇさ。それで、オレのサイズでも測るのか』

「ああまあ、そういうこと。ただその前にちょっといろいろ確認したいんだよな」

『確認ねぇ……? とりあえずこの部屋で話すのか?』

「そりゃそうだろ。お前と話してるとこ人に見られたら困るし」

『さっきみたいな黙ったままのやり取りじゃだめなのかよ』

「うっかりが怖い……なんだ? もしかして外に出たかったりするのか?」


 というかいまさらだけど、部屋の中でも黙って頭の中で会話したほうがいいかな。

 そんなに壁厚いわけじゃないし、いまさらだけどここは学園寮の一室。当然……かどうかは知らないけど五人の同居人がいる相部屋なのだ。

 一応今の俺は本来講義がある時間に寮に戻ってきてるのであって、ある程度の安全は確保しているつもりだけれど、それでも万全とは言いがたいだろう。まさに今の俺のように講義をすっぽかして帰ってくる人間がいるかもしれないのだ。


『そうだなぁ。50年ぶりの外だし、できれば歩き回ったりとかしたいな。少なくとも引きこもりはノーセンキュー!』

「『ノーセンキュー』? ってなんだ」

『……ごめんこうむるって言い換えてもいいぞ』

「なら最初からそういえよ」

『ありがたくも二代目勇者が残した言葉だぜ?』

「そんなの習わなかったけどな」


 っていうか二代目ってつい百年前じゃないか。別段ありがたい気もしないし。

 あんまり詳しい話が出る人じゃないけど、そんな意味のわからない言葉を口走ってそれに意味を作る癖のある人だったんだな……辞書でも残せば立派なもんだけど、個人で完結してるならあれだな、なんだっけ? 思春期病?


『そらそうだろうよ。あんまり人前で使う機会もあったけど、いちいち意味説明しても周りが取り合わなかったし』


 俺の中で二代目勇者とやらの評価が残念な人から残念な上にさびしい人になったぞ。

 っと、そろそろこの話は頭の中で打ち切ろう。勇者の招待を探るのもこいつとの会話の目的のひとつなんだし。

 多分。


「……しかし外か」


 外、ねえ。ついつい窓や扉のほうに目が行く。なんか一度壁の薄さとかが気になりだすと落ち着かないんだよな。

 ちょっとした音にもびくびくしてしまうというか、外の気配を無意識に探ってしまうというか。

 俺のせいで同室のやつらには若干ながら肩身が狭い思いをさせてるんだよな。

 出るか。


「よし、ちょっと学園外まで散歩……は無理なんだった。殺印が消えるまで学園から出るわけにはいかないんだ」


 かといってこいつをぶらぶらぶら下げて学園内うろつくのもな……

 静かで、できれば他の人がいなくて、独り言いってても聞きとがめられなくて、なおかつそれなりにのんびりできる場所。

 なんてこった、ただの自室じゃないか。と、普通なら言うところだが、今一個別のものを思いついた。


「うん、わかった試験競技場トライアルダンジョン行こう」

目をとめて下さってありがとうございます。

残念ながらラキスケは標準スキルでランクがD−です。月一であればいい方。

これが『つるぎ』による覚醒スキルだったら、もっと女の子に具体的なサーヴィスシーンを……いや何でもない。

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