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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第五部第1章[ アベル接触編 ]
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『カインの使者』第五部9章「性の解放と交渉の準備」

聖典の事例の後、ロタは地上の制度や慣習が志門たち家族と共に暮らす時の障害になると言う。だが、新しい世界でそれらの障害を補えれば一緒に暮らす事も出来る、とマーナを励ます。一方、Elle·シャナは自室でミカと志門が子供を作っている記憶映像を見て、一人激しく自分を慰める。志門の存在は彼と触れ合ったアクエラ、Elle·シャナ、ロタらに生理を起こさせる。

霊子と物質の境界層破壊計画の進捗を政務執行長官のエステルに報告するアクエラは、エステルからアベルとの交渉の準備と対応を伝えられ、志門らにもカインとの中継ぎを行うよう伝える。


『カインの使者』第五部9章「性の解放と交渉の準備」




ロタは難しい顔をしてマーナに言う…


「それな……、地上の生活や遅れた社会システム、慣習が邪魔をして難しいと思う。ミカでさえ向こうの慣習にどっぷり浸かったらああなった訳だし。聖典に描かれている人物のように心を広くできる者はほんの一握りだ。それを守り続けるには物理的にも困難だ。我々と違って地上では生計と教育が必要なんだ。カインでは培養される成員はカプセルから出る前に必要な教育(情報)はインプットされるし、培養棟からラインアウトすれば直ぐに活動できる。カインでは”個“という概念じゃなくて”種“……つまり仲間だ。アベルではその存在が細分化される。個の次は家族、その上は社会、更に国と言うふうに。」、ロタを説明を聴いていたマーナは、とても面倒だな……っという顔をした。ロタはパタッと聖典を閉じる…


「確かに面倒な事だ。カインは個の概念を種に引き上げるため、敢えて女性という単一の性を選んだ…。そうする事で確かに個と家族は無くなって、一気に社会枠までその概念を押し上げた。だけど……それは本来、男と女という2極の自然から逸脱している。マーナ…、新しい世界が、この2極を残したまま、その非効率を補うならお前も志門たちと一緒に暮らす事が可能になる。志門なら非効率が有っても受け入れてくれると思う。彼は元々そういう人だから……」、とロタは優しい笑みをもってマーナに話した。そして遠くを見るように言う…


「私も志門との間に子供が欲しい……、この気持ち……、言葉で表せないけどカインが永い歴史で置き忘れた”女性“の気持ちなのだろうな。」


マーナはハァ…、と溜め息を吐くと少し膨らんだ下腹部に手を置いた。




  *********************




一方でElle·シャナは自室へ戻ったあと、ボディスーツを脱納しベッドで横になると見えないように遮蔽膜を展開させた。


仰向けで横になった彼女の真上の空間に記憶映像が映し出される…、それはミカと志門が子供を作っているところと、都市セイルが現在の空間へ移行する際にカインの剣のエネルギーを開放させる為に始とネフェリーがお互いを求め合っている場面だった。


それを見て彼女の鼓動は高鳴り、表現のできない感情が身体を支配する。ハァ、ハァ…、と息は荒くなり、体が熱くなって薄っすらと汗を掻いた。流れる映像を見る彼女はそれに合わせるように手を胸に持ってきて、もう片方の手は脚の付け根を弄った。


(ああっ……私もミカやマーナのように子供を、……作りたい……欲しい……欲しいっ…ウッ……ウッ、アアアーッ…)


目の前の映像はミカと志門が重なり、志門は激しく自分の腰をミカに押し当てクネらせる……志門の器官がミカの体内に入るとミカはアアーッと言って身体を仰け反らせた。彼女の足はM字から上に重なった志門の身体を挟み込んだ……、二人は固くお互いを捉え、志門はンァーッと声を上げるとミカの脚の付け根から白いヌルッとした体液が勢いよくミカの下半身を濡らした。



(志門、志門……アア……もう…ダメェーッ!!)



Elle·シャナは志門を想像し、自分の人差し指を脚の付け根の割れ目へ入れた。彼女はアアァーッと声を上げると、ハァ、ハァ、ハァ……と息を荒くしたまま体の力が抜けるような感じを覚えた。




       ◆




志門とミカが果南を連れてカインの都市セイルに帰った影響は大きかった。始とネフェリーム·バリアントの存在もあったが、実際に作った子供を連れてきた志門たちに注意が向けられた。


このような事もあり、ロタ、Elle·シャナ、アクエラらは暫くした後に初めて生理(月経)というものを知った。生理に依る下血はボディスーツの転送機能で体外に取り出され、本人が血を見ることは無かったが、生理痛や精神的変化が起きた。



彼女らの体調がすぐれない時、志門は頻繁に彼等を見舞った。だが、始は妹の望美がいる手前、なかなか志門のように大胆に彼女らに接する事が出来ないでいた。始は志門に比べ、地上の慣習から抜けれなかったからだ。また、志門の父、来門はカインのボディスーツと現在の空間特性により老化が抑えられ、以前より驚くほど健康になったが妻の静香により行動が制限された。彼女らに触ることが出来ない来門は仕方なく彼女らと会話に勤しんだ。


ミカやエディ、果南など霊子の能力に長ける者以外は日常に於いて、これと言ってやる事が無く、一日の大半を自分の部屋で過ごした。




  ********************




ある日、アクエラは作業の進捗を報告するためサンヘドリン政務執行長官、エステルの元へ向かった。


アクエラは長官室へ入ると右手拳を左肩へ乗せ、エステルに敬意を示す…、アクエラを見たエステルは彼女の雰囲気が少し変わったのに気が付いた。


「アクエラ、お前……、何かやったか? 何か違うものを感じるが。」


「最近、生理というのになったんです。少し気分も変わるので原因はそれでしょう…多分。」、そう言って彼女は次に計画の進捗を説明した。



「霊子空間の境界層破壊の為のエネルギー算出ですが、まだ完全に仕上がっていません。もう少し時間が掛かります。」


「推定で構わん、言ってくれ。」、とエステル。アクエラは部屋の空間に光子で数式を映し出した。


「都市セイルの霊子金属構成部材の霊子エネルギーと、ループストライカーのヒヒイロカネの霊子エネルギーを合わせた総エネルギー量で計画に必要なエネルギー量を少し超える予定になる筈です。まだ細かな補正が必要ですが…」


「市民の脱出用の船の確保は?」、とエステル。


「ミカが船に成ります。船内の空間を拡張できれば一度で数百人は運べる筈です。ミカの持っているカインの剣の同位体はループストライカーの同位体、ヒヒイロカネよりエネルギー密度が高い、……なのでミカの方を船として使います。」、とアクエラは述べた。


「承知した、エルメラ議長に伝えておく。……聖エルシアーナの予言では間もなくアベル側の使者が訪れるそうだ……、その時はアクエラ、お前も手伝ってくれ。」、申し訳なさそうに言うエステルだったがアクエラは露骨に嫌な顔をした。


「エステル長官、私にアベルどもの応対をしろとっ!?」


「お前は志門や他のアベルの者との接触が多いではないか。」、と困った顔をするエステルだった。


「あれらは志門の取り巻きの者だから特別ですっ! 志門はアベルでもヤーワァ(神)に選ばれた器ですよ。長官は私がアベル嫌いなのは知っておられるでしょうっ!」、そう言ってアクエラはテーブルをバンッ!と叩いた。


「とっ…、とにかく志門や他の者にも伝えて置いてくれ。大事な役だ。私が主体でやるからお前は心配しなくていい…」、エステルは心の中でヤレヤレ…と思う。それはクロスライザー(交感器)を通じて彼女へ伝わったのでアクエラは、申し訳なく思い頭を下げた。




アクエラはサンヘドリンを出ると志門の部屋へ行き、来たるべきアベルとの交渉に備え、心積もりをしておくよう伝えた。


「アベルとの交渉は当然地上に居た志門たちにも協力してもらう。上手く我々カインの中継ぎをしてくれ。」


聞いた志門はアクエラに質問する。

「偉い人が来るんですか?」

「向こうも代表だ、それなりの地位の者が来るだろう。」、と彼女が返すと志門はエ〜ッ…という消極的な表情を浮かべた。


前に軍に拘束監禁され、厳しい尋問が有ったのを思い出したからだ。





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