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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第五部第1章[ アベル接触編 ]
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『カインの使者』第五部6章「血の絆と虚空の戦い」

ヒヒイロカネで強化した自分の意識をリベレーターCIC内へ飛ばすエディ。そこで見たのは敵性異星人の高次干渉によって意識の虚構へ迷い込んだ兄、レナートの姿だった。エディは敵の高次干渉をヒヒイロカネの波動で消し去るが、その後、彼女は兄のレナートに対し激しく罵る。だが、彼の言葉を聞き本当の気持ちを知ったとき、彼女は自身の暴言で後悔という名の血の涙を流す事となる…

一方、ループストライカーで待機していた志門たちはリベレーターの移動と戦闘状態を確認した。ミカの霊子感応でリベレーターの窮地が志門に伝えられる。


『カインの使者』第五部6章「血の絆と虚空の戦い」




「ループストライカー波動リンク(同期)ON! 波動マインド、ヒヒイロカネブーストッ! 意識投影ポイント、リベレーターCIC内!」、エディが叫ぶとヒヒイロカネによって波動増幅された彼女の高次意識は一瞬でリベレーターCICへ飛んだ。



電源を喪失したCIC内で敵の高次干渉に侵された科員たちは床に倒れていた。エディはCIC内に強い敵性高次干渉を感じた。


(このままでは生命が危ないっ! 私の高次意識をもっと強くして高次干渉の深度まで潜らないとダメだっ!!)



エディはヒヒイロカネの霊子波動で意識を更に強化し、倒れている者の意識の深部まで降りる必要があった。


彼女は足元に倒れている者を見ると、この艦の艦長、また自分の兄のレナートを見つけた。彼女は、この艦に居た時、酷い扱いを受けた事に対して彼の意識の中に入るのを躊躇したが、早くしなければ全員の生命に危険が迫る、……エディは意を決して兄、レナートの意識の中へダイブした。


 

  *******************



彼の意識の中へダイブしたエディは自分の意識波動がヒヒイロカネによって強化され、意識が人の形になっていく事に驚く…


(前に月のカインに意識を飛ばしたときは自分の体は見えなかったのに……、今、意識が存在の形に映し出されている!)、そう思いながら彼女は次第に輪郭がハッキリしていく自身の手を眺めた。次に自分の周囲を見回す。そこは彼女の兄が作り出している、正確には高次干渉に侵された彼の意識が作り出した虚構の空間だった…



(彼 [ レナート ]はリニアチューブでセントラルデッキへ行こうとしている……、何か独り言を喋っている…)



5メートルほど先を行く兄、レナートはこう言った。


”「クソッ、なかなか辿り着けないぞっ!? ニューラリンクシステムに記録している艦内図では、当に着いている筈だ、………一体、この原因は何なんだっ、これが人的要因なら許せんなっ………」“



その言葉の直後に、自分と同じ姿格好をした者が彼の前に現れた。エディはそれが敵の高次干渉によって現れた幻影と確信した。幻影は彼に話しかけた。


“「貴方が処断するかしら、………私の時のように…」“


レナートは反射的に、その声から距離を取った。しかし、暗闇の中では周囲が確認できず、彼は通路の壁に自分の身体を打ち付けた。



この様子を見ていたエディは敵の高次干渉の狡猾さに怒りを覚えた。


(私に似せて兄を誑かそうって言うのっ!!)


彼女は幻影の自分に走って自分を幻影と重ねると、ヒヒイロカネの霊子波動を開放させ幻影を消去した。



”「痛た………、誰だっ!!」“、とよろけながら叫ぶレナート。



「私よ………、私は艦に戻れば貴方に処断される。私は貴方から逃げた、………貴方はたった一人、血の繋がった私に酷い仕打ちをした。貴方の心は人間じゃないっ! 戦争の機械っ、悪魔っ!!」、この時、エディは自分の精神が高ぶっている事に気が付かず、兄のレナートを罵った。更に心の底に沈んでいた気持ちを吐き出した……


「貴方がバイオクローニングで造られた後、私も直ぐに造られた。成体になるまでの五年、………最初はGEのバイオエレクトリック社で暫く一緒だった時、貴方は私に優しく接してくれた………、なのにリベレーターに乗った時、何であんな酷い扱いをしたのっ………私はとても悲しかった。」、とエディは吐き出すように言う。



”「…………、自分は人工人だ、………艦を与り、仕事を与えられた………、エディに酷い扱いをしたのは事実だ…、だけど本心からじゃない……」“


レナートは言ったがエディは追い打ちを掛けるように彼を責めた…


「仕事だからっ?! それでも、ランドー……、いや、レナート(ランドーの名前:R·ランドー→レナート·ランドー)、貴方がやったことは何っ、私の事を人間扱いしてくれなかったっ…」、と彼女は声を大きくした。


”「自分は………、自身が人工人と言うことに憚りが有ったのかも知れない、いや、………有ったんだ。エディに辛く当たったのも、その裏返しかも知れない………、だがっ………エディが”Thing X ヒヒイロカネ“をカインに渡し、月面の敵の基地を攻撃した時に、私の射線を遮った、………この時は軍人として彼女が許せなかった、……これは確かだ、だけど………」”


レナートは言葉を詰まらせながら続けて言う。



“「彼女がリベレーターへ帰投中に遁走した時、……」”



レナートはその場に崩れ、床に両手を着いた。ポタッ、ポタッと涙が床を叩く音が聞こえる。




“「私は酷いことをした以上に、……悲しかったんだっ!!」”とレナートは独白した。




彼は立ち上がりエディを呼んだ。


”「エディ、………こっちへおいで…」“


「…………」



レナートは彼女を抱きしめて言った。


”「ごめんよ………、エディ。本当の自分の気持ちは、…………君を愛していたんだっ。自分にとって、たった一人の妹…」“


彼の気持ちに気が付いたエディは自分が彼に言い放った事にハッとした……、そして、自身の内で後悔という名の血の涙を流した。




       ◆




ループストライカーで待機していた志門とElle·シャナはエディの意識がなかなか戻って来ないことを心配した。リベレーターが移動し、土星のアステロイドベルトの中に消えたのを確認していたからだ。その内、リベレーターと敵の巨大な船の真横に滞宙していたイギリス防空軍の艦、ヴァンガード級と撃ち合いとなった。リベレーターから再び飛び立った艦載機のロケットの噴射炎が浮遊する隕石群の隙間を通して見える…




「エディはまだ帰らないのかっ!? 戦闘が始まってるっ!」、と志門。

「どうするっ、追うのかっ!?」、とElle·シャナは志門に言った。


その時、やっとエディはパーソナルディバイスの格納室から出て来て、志門に抱きつくと声を上げて泣き出す。

状況の分からない志門だったが、エディに何らかの精神的インパクトが有ったと確信した。志門はエディと出会ってから、彼女がそのような素振りを見た事がない。どちらかと言えば彼女は軍に携わった者らしく、しっかりした感じの女性だったからだ。

志門は何があったのか聞いたが彼女は自分の兄(リベレーターの艦長)に会った、と伝えるだけだった。



志門はエディに問うた…

「リベレーターが移動して戦闘を行っている……、追った方がいいか?」、対しエディは志門に抱きついたま頷いた。


横に居たミカが空間に映し出されたリベレーターを注視しながら言う…


「志門、あの人…五十鈴さんが危ないっ! あの船は難しい状況にいるっ!!」、ミカはループストライカーの霊子波動と五十鈴から貰った勾玉のネックレスの波動で自身の波動を強め、リベレーターを操艦している五十鈴の波動と重ねて観ていた。


「このまま見過ごせないっ!! あの人は僕たちを助けてくれたんだ……、お姉さん、リベレーターを追ってっ!!」、と志門はElle·シャナにお願いした。彼女は困ったなぁ…、という顔で志門に返す。


「あまり近づきたくないけど、承知した! エディ、お前はここで少し休んでいろ。船の霊子エネルギーは十分に有る、コントロールデッキから私が動かす。それと志門、後で始末書に署名してくれ!」


「OKーッ!」、と志門は笑った。



Elle·シャナはループストライカーの移動を開始した。





この章の行はSFミリタリーアクション『USSF機動空母リベレーター戦記』【Ep:55】「血の絆と軍の規律」https://ncode.syosetu.com/n3174kl/55 とリンクしています。

カインとアベル(地上人)の双方向の立場を描いています。

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