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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第五部第1章[ アベル接触編 ]
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『カインの使者』第五部4章「エディとElle·シャナ」

カインの都市セイルの中央広場で既視感を覚えるエディ。そこは以前に統合機動宇宙軍の宇宙空母SCV-01〈リベレーター〉に居たとき、ロバートソン提督の部屋の中で見た月面ドローンの映像の場所だった。そこに映し出されていたのは、一緒に居るElle·シャナとミカだった。ここで何をしていたのかエディはElle·シャナに問う。

志門たちがカインへ戻って三ヶ月が経とうとする頃、ループストライカーで哨戒を行っていたエディ、ミカ、Elle·シャナと志門は同位空間内にSCV-01〈リベレーター〉の波動を見つける。


『カインの使者』第五部4章「エディとElle·シャナ」




エディは立ち止まり、周りを見回した。中央には広場があり多数の都市民たちが聖典を開いたり、詩を歌ったりしている。


(何かの既視感? 何処かで見た気がする……)


そう思った彼女は自身のニューラリンクシステムのメモリーを確かめた。目に映った風景は情報としてニューラリンクシステムへ送られ、過去データーと素早く照合が行われる。


立ち止まったElle·シャナは、どうした?と言う感じでエディを覗き込んだ。待ってっ!、と言うふうに手を上げて制止するエディ。



(あれは確か、SCV-01〈リベレーター〉に居たときに私が技術責任者のシュミット博士と一緒にロバートソン提督の部屋に呼ばれて月のドローン映像を見せられた時の…、手前に女性が二人映し出された……)


顔を上げたエディは再度、周囲をグルっと見回し、Elle·シャナの顔をジッ…と見つめた。




「やっぱりっ!……あの時、困った顔をした人だ。」、とエディは言った。


「困った……、顔?」、と意味の分からないElle·シャナは困惑の表情を浮かべる。


「貴方、ここでミカさんと何かやってたでしょ! ここに黒い幕が有って、それが消えたらミカさんが地べたに伏せて顔を覆っていて、貴方は隣に立って何か困った顔をしていた……」、そう言ってエディは、その場で身振り手振りでその時の状況を現した。それを見たElle·シャナは、何でそれを知っているっ!?、と驚き声を上げた。



「この都市がまだ月に在るときにSCV-01は周囲にドローンを配置させた……、それはいいから、何で困った顔をしてたの、ミカさんは何で地べたに伏していたの?」、とエディはElle·シャナに迫った。


「ああ、あの時な、……私はミカが志門と作った”子供“と言うやつに凄く興味が有ったんだ。どうやったら作れるのか、ミカに作っている時の記憶映像を見せてもらっていたんだ、遮蔽幕の中で、志門とミカが抱き合って志門の器官がミカの身体の中に入って、ミカは何か恍惚とも苦悶とも言えない表情をしていたな……、ミカが何でその後、地べたに伏して顔を両手で覆っていたのか今でも分からないが…」、とElle·シャナは特に言いにくそうでもなく普通に返した。


聴いていたエディは恥ずかしさで、思わず手で口もとを手で押さえた。


「カインはオープンSEXなのっ!?」、とエディ。

「SEX、…なんだそれ?」、とあっけらかんとした感じでElle·シャナは返した、次にこう言う…


「ミカの子供については、なんと言っていいんだろう……、自分はこの感情を表現できない。ループストライカーの中で志門に抱かれた時も、何か表現できない、今までにない感情を覚えたな。私はミカと同じように志門と子供と言うやつを作りたいんだ。自分の体で仲間を作りたい!」、それを聞いたエディはフラーッと後ろに倒れそうになる。


(とてもついて行けないっ!、カインには、この人たちって恥ずかしいとか、男女の感覚が無いんだ。ミカさんは多分、地上の生活でそれを知ったのね。)



Elle·シャナはエディに聞いた。


「お前はまだ子供というのが無いのか、作らないのか?」

「私はまだ結婚もしてないのよ、……好きな人は……、居た。」、とエディは遠くを見るような眼差しで返した。


「好きな? 意味が理解出来ない。」、とElle·シャナ。


「貴方が船の中で志門に抱かれたとき、言い表せない感情が有ったでしょ、多分それが”好き“って言うことなのよ。男女が互いに好きになったら結婚して、そこで家庭が出来るの。その後、子供を作って家族が出来て、それが代を超えて遠々と続いていく……、ここでは女性しか居ないから、そういう感覚は無いのね。いや、そもそも女性という意識自体が無くなってる。」、エディは冷やかな眼差しと哀れなものを見るような感じで返した。それに対し、Elle·シャナは敏感に反応した。


「お前、……今、心の底でカインを見下しただろう。クロスライザー(交感器)で伝わって来た。」


「エッ!? ごめん、そんなつもりは無かった、自分でも気が付かなかった!」




これを切っ掛けに、エディはその場でElle·シャナからカインの種の優位性を延々と聞かされる羽目となった。




  *******************




やっとElle·シャナの説教から解放され、一人志門たちの元へ戻ったエディが感じたのは非常に重苦しい雰囲気だった。


「何が有ったのっ!?」、重く張り詰めた空気が支配する中、彼女は志門たち家族と両親の来門と静香、また、隣から出張って来た始らを見た。


エディは望美に何が起きたのか聞いた。望美は目に涙を溜め、顔を腫らしながら重たい口を開く…



「果南ちゃんが、……新しい世界の人柱になるって…」


この時、望美の言葉がエディの高次意識で感じていた事と重なった。



(私が感じていたのは命の代償……、って言う事は私も…)


彼女の気持ちは重く沈んで行った…




      ◆




志門たちがセイルに戻って凡そ三ヶ月が過ぎようとしていた。


マーナは体調が安定し、下腹部も少し膨らんできた。志門たち家族や始らは来たるべき日に臨むため、果南と一緒に居る時間を増やした。彼らの目に涙は無かったが、何れ来るであろう絶対的な別れを思うと激しく心が痛んだ。


最高評議会ケルブとセラフィムでは聖エルシアーナを首長とし、エルメラ以下、評議委員たちは政務執行局サンヘドリンと連携して本格的にカインの進むべき方向性を検討し始めた。この中にはアベル(地上人)との交渉が正式に入れられた。



カインの技術部門、クライシストでは都市セイルによる次元境界層破壊のため、必要エネルギー量の算定が行われた。だが、以前行われた世界線統合の時と全く条件が異なるため、その作業は難航した。


ミカ、エディ、Elle·シャナらはループストライカーの稼働率維持と、またアベル艦船の同位空間内出現に対応するため哨戒飛行を繰り返していた。



ミカは娘果南の事もあり、以前と比べて口数が少なくなった。それを心配した志門はミカと一緒にループストライカーに乗る事が多くなった。果南に関しては新世界創造の要となる為、セイルから外へ出ることは許されなかった。




  ******************




ある日の哨戒飛行を行っていた時、船とリンクしていたエディは近くに地上の船の波動を見つけた。


「ミカさん、直ぐ近くに異相波動を見つけた! これはっ?! 統合機動宇宙軍のSCV-01だっ!!」、エディは叫ぶとパーソナルディバイスの格納室から出てコントロールデッキへ走った。


「こっちの波動位相は検知されてないかっ!?」、とElle·シャナはミカより先にエディに向かって言う。


「大丈夫、同位空間と言っても波動には固有の振動数が有るから同期しない限り見つからないわ。」、エディはSCV-01の波動が描き出した物質の形を映すオプティトロニックモニターを見た。


(間違いないっ、SCV-01〈リベレーター〉だ! でも、あの艦は超次元空間[ 霊子空間 ]を長時間航行出来ないはず………、あそこにはレナートが、……兄さん)


エディはリベレーターから遁走した時の事を思い出す。


ヒヒイロカネを志門に渡した後、兄レナートから激しい責を受けた時の事を……、だが、兄に対する憎しみと同時に、たった一人の肉親という感情が彼女の中に同居していた。



「……暫く様子をみよう。」、と志門は皆に言った。





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