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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第五部第1章[ アベル接触編 ]
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『カインの使者』第五部3章「世界創造の犠牲とメサイヤ」

意識の物質化と復活の事を話す聖エルシアーナと志門。話の中で志門は聖典の記述が歴史の変遷のなかで改竄された事を知る。また、新しく創られる世界がどのようになるかも聖エルシアーナによって語られる。世界は方向性を維持するために果南の犠牲が必要で、彼女は唯一人、人の形で復活しない事を知り志門は激しく取り乱す。

一方、エディとElle·シャナはループストライカー84号機とカインの剣の同位体、ヒヒイロカネの同期テストを行う。ここでエディはメサイヤ(パイロット)とヒヒイロカネの波動特性を鑑み、Elle·シャナに船とヒヒイロカネ、メサイヤの霊子波動回路の変更を申し出る。


『カインの使者』第五部3章「世界創造の犠牲とメサイヤ」




聖エルシアーナは続けて言う…


「そう、復活だ。無くなった人間の記憶は霊子の記憶として残り続ける。高密度の霊子と物質が混ざり合った世界では人の思いが直接霊子に働きかけ物質として再構築される。もし誰か亡くなったとして、その者を生き返って欲しいと強く願うなら亡くなった者は速やかに復活するのだ。これは元々、人間が物質と霊子に働きかける能力を持っているからだ。人間の完全性は保たれていた、だが、それを発現できる環境……、平たく言うなら霊子と物質が分離された事で本来あるべき能力の発現が出来なくなった。」


ここで志門はふと疑問を抱いた。


「聖書、いや此処では聖典ですか…、何故その事が記述されなかったんですか?」、と志門。聖エルシアーナは少し厳しい表情を見せた。


「聖典に関して観念的、道徳的な事以外の事柄は物質世界に残された反対者によって、また、それらに迎合した人間によって改竄されたのだっ!」、と聖エルシアーナは返す。志門は浅く頷き、納得を示すと次の事を聞いた。


「納得した。それでか…、聖書は沢山の人に読まれている、だけど争いは続いている。先の復活の話だけど、聖エルシアーナ…、果南は生き返るんですか?!」、志門の言葉に対し、彼女は首を横に振った。その時の表情は悲しみとも苦悶とも取れるような複雑なものだった…



「志門、ミカ。聞けっ……、前の世界線を終わらせた時、貴方たちの魂は新しく統合された世界線の事の始まりの時へ戻された。志門は八歳の時だった……、だが、これから創られる世界は現在の世界線の延長で起きる。すべての人がその変化を認識するのだ。果南の魂はその世界の方向性として存在し続けなければならない、………果南は人の形として戻らない。」、聖エルシアーナは物質、依代のアダムα(ルーファ·Elle·シアーナ)の感情の高まりで声を詰まらせた。


「そんな、皆生き返るのに………、果南だけ…」、志門は呆然とその場に佇んだ。その後、膝を崩して床に手を突き声を上げた。



”ウワァアアアアアアアアアアアアーッ!!“



ミカと果南は、まるで気が触れたかのように叫ぶ志門に走り寄った。




       ◆




クライシストへ飛んだエディとElle·シャナはループストライカー84号機の稼働状態を再度確かめるため、船内でカインの剣の同位体である”ヒヒイロカネ“と同期を試していた。


船と同期するためパーソナルディバイスのスペースへ入っていた。何回も同期を試すがヒヒイロカネの波動特性が合わないのか船はまともに動かない。Elle·シャナは感応バイザーを外し、クソッといった感じで壁を殴った。


パーソナルディバイスの部屋から出た彼女はエディに言った。


「このヒヒイロカネとか言う同位体は紛い物なのかっ!? 全く動かないぞ!」、とElle·シャナは怒鳴った。それに対しエディは大切なヒヒイロカネを紛い物と言われ気分を害した。


「酷い言いようね、貴方の同期の仕方が下手くそなだけでしょっ! この船とパイロットとヒヒイロカネのエネルギー回路はどうなってるのっ!? 私が変わる前に教えてちょうだい。」、とエディは突慳貪に答えた。


「エネルギー回路?、この船自体が回路のようなものだ。」、とElle·シャナ。


「そうじゃなくてエネルギーの流れの事よ!」、エディが言うと、彼女は面倒くさいなぁ…、という感じで空間にオプティトロニックモニターを立ち上げ、船のエネルギーの流れを示すパラメータを投影した。


「先ずメサイヤ(パイロット)の意識波動が船の霊子金属に蓄えられた霊子エネルギーで増幅される……、現在、この船のエネルギー密度は殆ど残っていない。だから、カインの剣の同位体、ヒヒイロカネを通して船にエネルギーを供給している訳だ。」、Elle·シャナの説明でエディは直ぐに問題点を見つけ出した。


「ヒヒイロカネは私を介してエネルギーを放射する方がいいかも知れない。勿論、貴方が示したエネルギーの流れはSCV-01でも同じだったけど……、意識波動の増幅なら船とヒヒイロカネの間に私を介した方が正しいような気がする。」、聞いたElle·シャナはエエッ!と驚く…


「そんな事したら焼け死ぬか、先ず同位体が出力しない。同位体は意識の受動体だ。」


「ヒヒイロカネは他のマテリアル(TX同位体)とは別の特性を持っているの。私が代わるからやってみてっ!」、とエディは言うとパーソナルディバイスの部屋へ入りバイザーを着けた。


船のコントロールデッキに着いたElle·シャナはコンソールの薄い光で表示されたモニターを確認し、エディに指示を出す。


「ヒヒイロカネ、メサイヤとのリンクを確認した。エネルギーラインの切り替え……完了! メサイヤを同位体と船の中間に置いた。エディ、エネルギー密度は段階的に高めて行く、身体に異常を感じたら直ぐにリンクを切ってくれっ!……それじゃ、始める。」


{ ラージャ! }、とエディの声が返る。



Elle·シャナは慎重にエネルギーラインのボリュームを開け、霊子エネルギーの密度を高めて行く…


「現在、23%開放……、問題ないかエディ?」、とElle·シャナ。


{ Elle·シャナ、ラインのボリュームを全開にして。大丈夫、私がヒヒイロカネのパワーを引き出すからっ! }


エディの声を聞いてElle·シャナは額に脂汗を浮かせた。


(万一、高密度のエネルギーが身体を通ったら丸焦げになるぞ……)、彼女は恐る恐るラインのボリュームを全開にした。ここでエッと思った、霊子エネルギーは最初のボリューム開度、23%を維持していたからだ。そして、徐々にヒヒイロカネは霊子エネルギーの密度を高めて行った。


(メサイヤ側で同位体の力を制御して、尚且つ出力しているのかっ!! こんなの初めて見た!)、とElle·シャナは思った。


{ 今、エネルギー密度はボリューム開度の3/4……さらに上げる! }、とエディの声が返って来る。


「こいつは驚いた! これはまるで始のようにエネルギーの整流を行っているのかっ、いやそれだけじゃなくて船にエネルギーを送っているんだっ!! よくこれで丸焦げにならないものだ!」、とElle·シャナは感嘆の声を上げた。そして次に彼女は実際の飛行テストを持ち出した。


「エディ、そのまま船とリンクを維持してくれ、船を飛ばしてみよう。許可を取る、待ってくれ…………、空間監視センターから許可が下りた。セイルの外へ出れるかっ?!」



{ ラージャ、やってみる! }、と返すエディ。



船はフワリと地面から離れ上昇を開始する。船とリンクしているエディはまるで船と一体になったような感じを覚えた。


{ 凄いっ!! なんてダイレクトな応答性なのっ! これがカインの技術っ!! もうニューラリンクシステムは要らない。 }、そう言いエディは自身に埋め込んである反応の遅いニューラリンクシステムを切った。




  *******************




セイルの外へ出て霊子空間の境界層でテスト飛行を終えた二人はクライシストの空間監視センターへ戻った。責任者のアクエラが二人を迎えて労をねぎらう…


「ご苦労だった、こちらからも観ていたが良い動きだったな。これならイケる!」、とアクエラは満足そうに言った。


「カインの剣の同位体、ヒヒイロカネとエディの波動同期は完全だ。だが、エネルギー回路は彼女とヒヒイロカネの特性で少し変えてある。84号機のメサイヤのメインは彼女にやってもらおう。私は船にエネルギーがある状態ならコントロールデッキから船の操作を行える。」、とElle·シャナ。



二人はクライシストを後にすると、直ぐには志門たちの居る部屋には帰らず、話しながら都市内を歩いた。


暫く歩くとエディは見覚えのある場所に来ていた。そこは都市の中心にある広場のようだった。





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