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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第四部 [ 霊子降霊編]
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『カインの使者』第四部第11章「犯した罪の結果」

志門たちの居る部屋に乗り込んだ憲兵、監視委員と評議委員たち。志門らは一人ひとり尋問を受け、空間転移や霊子感応が出来ないよう裸にされる。一方、サンヘドリンの政務執行局の長官室では長官のエステルが監視委員から取り調べを受ける。一緒に取り調べを受ける評議会議長のエルメラから、今回、降霊に携わった者(霊子スピリットの持ち主)の処断を聞いたエステルは、かつて最高法廷でもそのような事例は無い、とエルメラに迫る。

ミカの処断を知らされた志門は激しく動揺し、他の者も悲しみに沈む…


『カインの使者』第四部第11章「犯した罪の結果」




全員がミカたちの帰りを待つ中、数十名の者が一斉に現れた。そう広くない部屋で現れた者はバラけるように広がった。その中にはアクエラ、ミカと果南、エディとネフェリーも居たが全員、全裸だった。左手のブレスレットは外されていた。


「ワッ、ウワァアアアーッ!!」、と驚きの声を上げる志門と始。来門と目を見開いて固まっていた。様子を冷静に見ていた静香は志門たち男性に向かって声を上げる。


「志門、貴方っ、後ろを向いて目を閉じていなさいっ!! それから、……貴方もっ!」、と静香は始にも言った。


「これは何事ですかっ!! 果南……、こんな小さな子まで素っ裸にしなくてもいいでしょっ!」、と静香は評議委員たちへ声を上げた、その声は怒気を含んでいた。


評議会監視委員は進み出て、さがれっ!と言うと強力な霊子感応で静香は座っていた椅子のところまで押し返された。椅子に足を取られ背面から床に転ぶ静香。来門はそれを見てすぐに駆け寄った。


「大丈夫かっ、ケガはないか、静香!?」、来門は現れた評議委員たちに言った。


「何をするっ! 裸でいる者に服を着せろ!!」、そう言ったが監視委員は無視するように前に進み出た。



「クライシストのアクエラ、メサイヤのミカ·エルカナン、Elle·シャナ、ネフェリーム·バリアント、……それから、そこの小さいやつ(果南)。そして、律法義委員ロタ·Elle·ファト。培養棟に居た奴はこの部屋に監禁拘束する!! この部屋に居た者は幕の向こうで審問する、連れてゆけっ!!」


部屋に居た志門らは評議会の憲兵に引っ張られ、幕を抜けて始の方の部屋へ入ると全員ブレスレットを外され、丸裸にされた。それは男も女も関係無かった。始の妹の望美は悲鳴のような声を上げ、手で胸と下腹部を押さえて床に座り込んだ。


「やめてくれっ!! あんたら人間かっ!?」、と始は叫ぶが憲兵は何くわぬ顔で始のブレスレットも外していく…


「ブレスレットを外すのは勝手に部屋の外に出られては困るからだ…」、と憲兵は言った。


来門と志門もブレスレットを外され裸になったが静香と望美に背中を向けて立ち壁を作った。


(マーナやアクエラお姉さんはともかく、カインでは男も女も、ただの生物……、個体数としてしか見ていないんだ。ミカやマーナ、アクエラお姉さんたちは、元々備わっている性を少しだけ取り戻したんだ。それを考えると僕がミカと一緒になってお互いを意識して結婚まで進めたのは奇跡かも知れないな……)、と志門は思った。


「風早教授、俺達には何か特典は無いんですか? 教授は今の世界線を作ったし、俺はセイルを此処へ運びましたよね……、もう少し手心は無いんですか。」、と始は不満そうに言う……、対し、志門は次のように返した。


「始くん、それは無いよ。どんなに功績を残したって、悪い事したら警察は捕まえるだろ。」


「悪い事なんてしてないですよ…」、と始はクソッと言う感じでチッと口を鳴らす。来門が監視委員から色々聞かれた、次に始が委員と向かい合ってアレコレ聞かれたが、それほど時間が掛からずに戻ってきた。


次に志門は自分が呼ばれるかと思ったが、監視委員は片手を上げ、もういいっ!と他の者に言った。



「部屋で待っていた者は降霊の事は聞いているが、それがどういう事が理解していない。間接的に関わっただけだ。」、そう言うと監視委員と憲兵は、ここで待てっと言うと遮蔽幕の中へ消え、志門たち家族のスペースへ戻った。




  ********************




元の志門たち家族のスペースでは厳しい尋問が行われた。特にミカとElle·シャナは以前の次元探査計画に参画していた者である事から、その場で有罪が確定した。石打ちは律法義委員のロタとクライシスト責任者のアクエラ、メサイヤ(パイロット)のミカとElle·シャナ、重禁錮(一生拘禁)はネフェリーとエディ、果南だった。


当然、ミカとElle·シャナは反論した。


「評議会の石頭めっ!! 私を処断したら、もうカインはこの空間から出られなくなるぞ!」、とミカ。Elle·シャナは拘束を逃れようとして藻掻いた。


エディは顔を青くして喋らなかった。ただ、カインにヒヒイロカネを渡した挙句、このような結果に自責と後悔の念が込み上げてきた…、身体が震え息は荒くなった。


(私は何のためにヒヒイロカネを渡したの、……大勢の人を裏切ってまで…私は…)


横に居たネフェリーは、静かに目を閉じて言う…


「私の子孫も堕ちたものだな……、カインの始祖に対してこの扱いか…」


果南は何も言わず、表情も変えずにただ手を組んで懸命に祈っていた。




      ◆ 




全員の尋問が終わった後、監視委員と憲兵、評議委員たちは志門らを連れていったん最高法廷サンヘドリンへ飛び、監獄へ罪状ごとに押し込んだ。但し、果南はエディの嘆願によって一時的に志門の元へ預けられた、石打の者は別に分けられた。



政務執行局の長官室では長官のエステルが評議会議長のエルメラと共に監視委員から取り調べを受けていた。


エステルは全ての責任を負う形で降霊を行わせた事を自白した。彼女は顔を上げ、罪人のような後悔の表情は一切ない……、彼女は自分を拘束した者に言う。


「評議会で次元探査計画再開の議決承認を待っていては今迫っている危機に対応出来ない。評議会がカインの最高意思決定機関である事は承知しているつもりだ。だが、それを待つ余裕は現在残されていない。」、エステルは評議会の権威に敬意を示しつつも政務執行局の立場を明確に示した。


隣のエルメラは大きくため息を吐いた。


「私は知らなかった……、とは言え、議会の中でこの事案が発覚した事に付いて、議長である私もその責を免れない、……エステル、何故相談してくれなかったのだ。」、とエルメラは残念な感じでエステルに言った。


「……時間が無かったのです。評議会で終了を承認された次元探査計画を再起させるには時間のかかる合議が必要です。……そして、承認は得られません…」


エステルはエルメラに呟いた…


「既に刑罰は確定している、……お前を含め現場にいた者十名が裁かれる。」、エルメラの言葉にエステルの表情は消えた。


「お前とアクエラ、律法義委員のロタとミカ、Elle·シャナは処断される…」

「バカなっ!! 私とアクエラはともかく、残りの者はElleスピリット(霊子の魂)の持ち主です! 最高法廷でも事例は無いっ、それを評議会は裁こうと言うのですかっ?!」、とエステルはエルメラに迫った。掴んだ肩にエステルの爪が食い込んだ……



エルメラは悲しい顔をして呟いた。


「評議会は人の心を失った、……もう善意が何なのかも分からない。文面化された教条的な文言に縛られている、でなければ霊子界から借りている魂を処断するなど考えも及ばない事だ。」




  ******************




しばらく経った時、志門はミカが処断される事を監視委員から聞き、大きく動揺した。裸にされた彼は全ての能力が遮断され空間転移や霊子感応も行えず、それが不安に拍車を掛けた。



「ミカァッ、ミカァーッ!!」



叫びながら部屋の壁を引っ掻いたり叩いたりしたがどうにもならなかった。余りの混乱に彼は自分が糞尿を垂れている事にも気が付かない。収容された部屋では、裸で居る事で、本来ならボディスーツの体内残渣の空間転送が出来なくなる為、排泄桶が置かれていたが、志門は気持ちの混乱に耐え切れず、その場で垂れ流した。



両親の来門と静香、始と望美もミカのことを思い激しく悲しんだ。






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