表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第四部 [ 霊子降霊編]
58/77

『カインの使者』第四部第9章「神降ろしの祭壇と評議会」

アクエラとロタは次元渡航の可能性を探るため行動に移る。しかし、霊子界への移行は空間接続技官の存在が不可欠であり、霊子の魂の降霊はカインの成員培養棟の中に在る霊子スピリットディスプライザーを稼働しなければならなかった。ロタはエステルに報告するが、それには次元探査計画の継続が最高評議会で議決されなければならない。同じ政務執行局から出ている最高評議会議長エルメラの立場を案じるエステルにロタは責任は全て負う、と言い、その申し出に折れたエステルは霊子の魂の降霊にGOサインを出す。

一方、カインの意思最高決定機関である評議会ケルブとセラフィムでは評議委員が緊急招集され、議長のエルメラはカインの進むべき二つの道筋について語り、クライシストの責任者アクエラがそれを補足する…


『カインの使者』第四部第9章「神降ろしの祭壇と評議会」




「パパは悪くない! パパは私を産むために選ばれたの。後は私がやるの。」、と果南は言った。聞いた来門はエッと思った。


(この子、こんなに喋っていたか? それに五歳の子が何でこんなややこしい話を理解しているように返したんだ?!)、と来門は思った。


「私がやる? 何をするんだい、果南。」、と返す来門。

「世界を変えるの、もう直ぐお迎えが来る……」、果南の言葉に来門も志門も首を傾げた。




      ◆




その日から志門たちは共同で生活するようになった。その間、アクエラたちクライシストと律法義委員会のロタらは次元渡航の手段の確保と霊子界との通信を試みていた。

それにはミカ、Elle·シャナら霊子界の魂を降ろされた者とアベル(地上)から来たエディとイズハヤも参加させられていた。


ミカは何回か船になり境界層を越えて霊子界へ入ろうとしたが上手く行かなかった。また、ループストライカーでElle·シャナとヒヒイロカネの波動同期を試したが、これも上手く行かなかった。エディとの同期は彼女より少しマシなほうで、辛うじて船を動かすに留まる……、境界層の壁は予想を超えて強固であり、霊子界側の許可を取り付ける必要が有ったが、以前にそれが出来た空間接続技官ルーファ·Elle·シアーナの亡き後、その役を肩代わり出来る者は居なかった。ロタは再度、次元探査計画の立ち上げをエステルに申請した。



「やはり空間接続技官無しでは霊子界への次元渡航は難しい……、それを行える者は特別に霊子界から魂を降ろされた者でなければならない。成員培養棟の霊子スピリットのディスプライザーを起動させてくれ。」、とロタ。聞いたエステルは難しい顔をした。


「………クソッ、難しい話だ。84回目の次元探査計画で計画そのものが終了、と最高評議会で認定されている。新しい次元探査計画を立ち上げるには評議会で議決を得なければならないんだ。」


それに対しロタはエステルに迫った。普段は控えめで余り大声を上げない彼女だったが、この時は違った。


「議決なんかしている場合かっ!? カインの存続が掛かっているのだぞっ!!」、と凄んだ。


「計画が認可されてもElleクラス(霊子の魂を持つ者)が確実に出来るわけじゃない……、上(霊子界)が許さなければ魂は降りてこない。」、とエステルは言い渋った。


ロタはエステルの心を調べた。彼女を言い渋らせている原因は………


「……エルメラ議長が心配なんだな、エステル。議長もお前も政務執行局の出だからな。………失敗すれば袋叩きで吊し上げられる。前に地上に降りたミカが志門たちを連れてセイルに戻った時もそうだ! 計画は失敗だった、やめてしまえっ!と評議委員たちは喚き散らしたからな…………、お前が責任を取れないなら私は一人でやるっ、責任は私が負うっ!!」、そう言って背を向けるロタの肩をエステルは掴んだ。


「お前がそこまで言うのなら私は黙っていないっ!!」、とエステル。

「黙って? いない……、どういう意味だ。」

「律法義委員会には権限はない、委員会は政務執行局内の部署だ、……ロタ、私が許可する。評議会には事後報告する、その代わり絶対に成功させるんだ!」


ロタは表情を緩め、肩を掴んだエステルの手の上に自分の手を重ねた。そして小さな声で言う…



「ドバルカイン……(カインに栄光を)」




  ***************




ロタは間を置かず、直ちにクライシストのアクエラに成員培養棟の中に在る霊子スピリットディスプライザー(降霊子魂展開器)を稼働させた。また、その機器の前で律法義委員たちは祭壇を作り、それをループストライカー84号機に保管してあるヒヒイロカネとミカの持っているネックレスの勾玉(霊子物質)を特殊な霊子回路でリンクさせ強力な霊子場を形成させた。これにより、通常の霊子感応や通信より遥かに感度の高い確かなメッセージとして霊子界へ送る事が出来た。


この祈りに参加した者は律法義委員たちとミカ、果南、Elle·シャナ、エディとネフェリーム·バリアントで何れも霊子の魂を持つものだった。



”コオオオオーッ“という稼働音を響かせる霊子スピリットディスプライザーの前で、設けられた祭壇に向かい、ロタは聖典を詠唱し、他の者は霊子界の魂が降霊するように祈った。


(私に周りの人と同じ力が有るのかしら…)、そう思いつつエディはとにかく祈った。横にいる果南は椅子に座り、背筋をピンッと伸ばし目を閉じて祈っている……エディはチラッと果南を見たが、それは子供とは思えない強い気を放っていた。




霊子の魂の依代よりしろの器となるカインの成員のボディタイプは、前に寿命を終え、亡くなったルーファ·Elle·シアーナと同じアダムα〈Alpha〉型だった。霊子スピリット専用のこの生体は空間の位相覚知に特化した特徴を持つ。




祈りは長い間続いた。降霊が確認されるまで全員その場を離れる事は許されない。いつ終わるのか分からないその作業は果ての無い苦行のようにも感じられた。




   ********************




そんな作業が行われている中、カインの最高意思決定機関の評議会ケルブとセラフィムでは評議委員が緊急に集められ、今後のカインの行方について討議が行われていた。しかし、それは討議ではなく論争の場と化していた。


前議長のメトセラはエルメラを激しく責め立てた。彼女は前に志門とミカたちがカインへ帰還した際、第84回次元探査計画の成否についてアクエラの報告を罵り、挙句、エステルによって強制的に降壇させられ戒厳令により評議会は閉鎖された経緯を持つ者だった。


「この世界に移行する事を高々に謳ったのは、エルメラ、お前ではなかったか!? 正直に言え、これは失敗だったとっ!」、とメトセラ。


「私は失敗を宣言するつもりはない。あの時、月に留まれば多くのカインの血が流れた! 我々は避難したのだ。だが、この避難場所の空間は人が永続的に住むには適していない! 人は汎ゆる世界に住むにしても外部から知見を得られなければ人間らしいとは言えない。だから私は二つの道筋を提案したのだ……。境界層を超えて霊子界の深部へ行くか、元の物質空間へ戻るか。前者はもう人の姿を保てないだろう、そして我々が霊子界のどの階層で固定されるかも分からない。霊子界は数値として見ることは出来るが、人間の感覚では不可知領域なのだ。元の物質世界に帰ればアベル(地上人)が我々を追って来るだろう。この議会は成否を問うものではない! 我々がどの方向へ進むかを決める場だ。」、エルメラの言葉にメトセラはウウムッ……と黙り、周りの評議委員も其々に呟いた。


クライシストの責任者アクエラはエルメラの指し示した道筋に技術的な対応を説明した。彼女は疲れた感じで額の汗を手の甲で拭った。


(こんな時、誰かがやってくれれば……私も忙しい。クソッ、マーナの奴!)


「クライシスト責任者、アクエラ·レイピアが評議委員に申し上げます。現時空間では意識の物質化により必要な資源は月に居た時のような空間転送を行わずとも確保されています。但し、我々の都市を形作っている霊子物質はその能力が落ちているか消失の危機に直面しようとしています。既にご存知と思いますが、先刻カインの空間へ入った霊子世界の船イズハヤは消え、変わって人の形になりました。イズハヤは霊子世界の言わば自動機械です。人間の意識に同期していない物体はこの空間で形を保ち続ける事が……多分出来ないのだと。」


アクエラに野次が飛んだ…



「多分とは何だっ!! クライシストが言う事じゃない!」、多数の評議委員たちはブツブツ文句を言った。議長のエルメラはガベルを鳴らし、静粛にするよう呼びかける…



アクエラは説明を続けた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ