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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第三部 [ 世界再創造編 ]
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『カインの使者』第三部第16章「セイルへの帰還」

クライシストの空間監視部で接近する船の出現位置を知ったエステル、アクエラとロタは直ぐにそのポイントへ飛ぶ。其処にはエディと望美を乗せた高天原(霊子世界)の船、隈野出津速雄イズハヤが到着する。エステルは降りてきた彼等を連れてエルメラの居る最高評議会へ飛び、その場にはアクエラとロタが残り、イズハヤを追うようにしてカインの空間に現れたミカを迎える…


『カインの使者』第三部第16章「セイルへの帰還」



エステル、アクエラ、ロタは天使の船が入ってくるポイントへ飛んだ。

船の出現を待っている間、エステルはアクエラにマーナ(元次元探査計画主任)の事を尋ねた。


「アクエラ、マーナはどうしてる? 最近、政務が多忙で会ってないんだ。」


アクエラは少し考えるような素振りを見せた後こう言った…

「マーナは……、志門との融合体を身体に持っています。エステル長官…」

「融合体…、 お前は何を言ってるんだ?」


「アベルの言葉では子供が出来た、と言う事です。カインでは成員の生産は幾つかの種類で人工的に生産されている。アベルでは女性と男性がペアになって作るらしいです……、実際に作っているところは見た事は有りませんが。前にループストライカーの中で志門に抱かれたことが有るけど、とても心地良かった……、マーナにはそれ以上の事が有ったのだと。」、とアクエラ。そしてポツリと呟くように言う…


「私も志門の融合体が欲しい……」


「……私には解らんな。」、とエステル。


「一度抱かれてみて下さい、男性という生き物に。そうすれば解ると思います……」


エステルとアクエラが話し合っていると横に居たロタが声を上げた。


「出てくるぞっ! 天使の船だ!!」


三人の目の前の空間に光る点のような物が現れ、それは一瞬で大きな光球となった。三人は大きさの規模がどの程度になるか分からなかったので後ろに引いた。


数秒後、光球の光は消え、鈍い鉛色の船体が確認出来た。


船体の中央が、まるで生き物の口のように広がり、中から出てきたのは………、エステルが叫んだ。


「アベル(地上人)ッ!!」


エステルの声でその場にサンヘドリンの憲兵たちが現れ、船から降りてきた者を確保した。その中に居た宇宙服を着た男が ”離れよっ!!“と声を上げると憲兵たちは後ろに飛ばされた。


(強力な霊子感応!!)、と三人は理解したが、出てきた者が何故アベルの格好をしているのか分からなかった。


宇宙服を着た男が言った…

「私は霊子世界の船、イズハヤである! 霊子の魂を持つ者、エディ·スイングと地上の者一人を確かに此処へ送り届けた!」


ロタが進み出てイズハヤと握手し、後ろに居たエステルとアクエラに言う…


「心配ない、イズハヤはアベルの格好をしているだけだ。他の二人と合わせるために形を変えている……、そちらの二人はアベルのようだな。」


降りてきた他の者が声を上げる…


「兄ちゃんに会わせて下さいっ!!」、その声を聞いたアクエラは慌てるなっ、という感じで片手を上げ、近づくと腰のポーチからクロスライザー(交感器)を取り出して、イズハヤ以外の者の額にそれを埋め込んだ。



「これでいい……、話してみろ。」、とアクエラ。その者は一呼吸し自分を落ち着かせて声を出した。


「私は独 望美、ここに来た兄の始を探しています。」


望美の話を聞いたロタはオオッと声を上げた。


「君は始の系統の者だな。始は確かに此処に居るよ。セイルをこの世界まで飛ばした功労者だ。」、そう言うとロタはエディの方を向いた。


「……これは? 霊子界の系譜の者か!? イズハヤが言ったように確かに、とても弱いが霊子界の波動を感じる。………アクエラ、この三人には一度エルメラ議長に会ってもらった方がいいな。エステル長官、残念だが天使は居ない、船だけだ。この船の記憶では霊子界から下ってきた物ではない、地上からだ。」、ロタはイズハヤの船体に触れながら言った。


「地上からか……、確かに。物質世界の高次元意識体(天使)は霊子の次元を跨ぐことは出来ないからな。プレアデスも追って来れなかった。この三人は私がエルメラ議長の元へ連れて行く、ロタとアクエラはもう一隻の船の出現をここで待ってくれ。」


二人にそう告げるとエステルはイズハヤとエディ、望美を連れてその場から消えた。





残された二人。ロタはアクエラに尋ねる…


「アクエラお前……、志門の子供が欲しいって言ってたよな。始とネフェリーム·バリアントがやったような事をしたいのだな…」


アクエラは都市セイルがこの霊子世界へ飛翔するのにネフェリーム·バリアントのカインの剣の霊子エネルギーを調整開放させる為、始とネフェリーが行為をしていた事を思い出し何とも形容しにくい気持ちになった。それは本来、人間が持つ本能だったが何十世紀にも渡り、女性だけの集団で過ごして来たカインの者には理解し難かった。アクエラの身体は次第に火照って来たが、その変化を捉えた霊子金属で出来たボディスーツは素早く熱を奪った。


「したい、……したいんだ!」、俯いて激しく鼓動する胸を抑え、呟くように言うアクエラの肩に手を置きロタは返した。


「私だって……、したいさ。」、ロタも同じ気持ちだったが、それがどんな感情なのか彼女も分からなかった…



”シュワアアアアアーッ“



二人のすぐ近くで空気が撹拌されるような音が響く…



直径3メートル程の光球が目の前に現れ、次にその光はシュウウウーッと音を立て収縮し人の形になった。


数秒の後、その光は消え現れたのは……、アクエラとロタはほぼ同時に声を上げる!


「ミカッ、志門っ!!」


志門とミカと果南、両親の来門と静香は其々が手の平を顔の前に持って来て、自身を確かめていた。


「果南、良くやったね。成功した…」、そう言ってミカは果南を抱きしめる。一方、志門はアクエラとロタの声に気付き、彼女らに駆け寄った。



「アクエラお姉さんっ、ロタお姉さんっ!! 会いたかったよぉ~っ! やっと、……やっとセイルに来れたんだ!」


志門は先ずアクエラに抱きついた。それはハグではなく、身体を密着させるような抱き着き方だった。


「お姉さん、お姉さん……、前はゴメン、身体はもう良くなったの?」、と志門はアクエラに聞いた。アクエラは優しい表情を浮かべて返す…


「もう大丈夫だ。志門、私もお前に会いたかった…」

、そう言うとアクエラも志門を強く抱きしめた。横で見ていたロタはウゥ〜ンッといった感じで志門に言う。


「私には……してくれないのか?」、ロタの言葉を聞いた志門はアクエラの手を優しく解き、ロタにも同じようにした。背丈が志門と同じくらいのロタは顔を合わせると志門と視線が合った。彼女の肌の色はカインの成員では珍しく薄い褐色で瞳の色は深い紫色をしていた。律法義委員(神職)らしく、神秘的で美しい雰囲気が漂い、香を使っているのか、とても心地よい匂いがした。


「ロタお姉さん、会いたかった!」、と志門。



離れた所で見ていた来門と静香は志門のリアクションを見て驚く………、それは志門の取った行動ではなく、自分の息子がしっかりとした大人になった事を強く印象づけた。


ミカは果南を連れてアクエラとロタのもとに駆け寄った。


「ロタッ、アクエラッ!」、と叫ぶミカ。アクエラは船は無いのか聞いた。


「ミカッ、お前たちはどうやって此処に来れたんだ!船は?!」

「船はコレ…」、ミカは手に巻いた勾玉のネックレスをアクエラに見せ、次のように説明した。


「これはカインの剣と同じか、それ以上のエネルギー密度を持っている。これは霊子物質よ! 私とこの子、果南がこの物質と同期して船になったの。」、聞いたアクエラは頭を捻った。


「身体が船にっ?! そんな話、今まで聞いた事も無いぞ!」、アクエラの言葉にロタが言う…


「ミカの魂は霊子世界から降ろされたものだ。名前に”Elle“が入る者、私やElle·シャナもそうだが霊子の魂が……目覚めたのかっ!? 通常の成員との差はまだ分かっていない事も有る……」



アクエラ、ロタ、ミカが固まって考えている所に来門が呼びかけた。


「君たち、マーナ君は何処だ! 知っているなら連れて行ってくれ。」、とせがむように彼は言った。来門の顔を見たアクエラはハアッ?という顔をする。アクエラとロタはミカと志門の言葉は理解出来ていたが来門の言葉が分からなかった。二人とも首を傾げたが取り敢えずクロスライザーを来門と静香の額に埋め込んだ。



「悪いがもう一度言ってくれ。」、とアクエラは来門と静香に言った。







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