閑話 勇者蓮夜の矜持
何かが起きた…?
「それはその、すなわちどういうことです?」
「お前らはエルセリアの宰相のクローディアスを覚えているか?」
クローディアス。何でも国王の従兄弟で、公爵家の人らしい。頭の切れる宰相だったようだが。
隣で腕を絡めてくる美優の頭を撫でると、僕はシグムントさんに向き直った。
「あの人がこの事態を仕組んだと?」
「いや、本当はもっと前ーー150年前ほどにはすでにそうだった」
僕は言葉を失う。
別にそれに心当たりがあったとかではない。単純にシグムントさんの疑心暗鬼に呆れたのだ。
「お言葉ですが、ドーラ姫は嘘をついているようには見えませんでした」
「だろうな。だがお前らはこの国のことを『知らない』だろ?」
「もしかして、国ぐるみで情報統制してたってこと?」
シグムントさんはそんな言葉に頷く。僕はその発言をした嶺緒さんをジロリと睨む。困っている人がいると言うのに、それに水を差すような発言はいったい何事かと。
「睨んだって何にもならないでしょ。現にあの透って子は魔王側についた。それを踏まえての発言よ」
「その通り。そして、周りの国が世界の危機という割には『動きを見せない』のもおかしい話だとは思わないか?」
「それは、魔王側とか」
シグムントは首を左右に振った。
「いいかよく聞けよ。お前らはあの宰相のクローディアスが代々受け継いだ通りにかけた罠に引っかかった哀れな犠牲者なんだよ。エルセリアは、基本奴隷制を認めている国、そして武器を作っている国だ。周りがそれを廃止した後も続けているのは、戦争を引き起こして、奴隷を、武器を他国に売りつけるつもりだ」
「もしかして、アメリカみたいな…感じなのかなぁ?」
美優の言葉にシグムントは頷いた。
「ってかあんた一体何者だ?」
そんな言葉に僕は振り返る。
「おおっと、武器が売れないところは戦争を作りたい、この理屈はわかるよな」
何だ?
今何か無理やり話を転換させられた気がする。
「分かる。だが、その事が本当かどうかなんて、確かめようがないあんたの憶測だろう。証拠はどこにあると言うんだ」
認めない。
そんな三文芝居めいた理由であっていいはずがない。
僕は正義の味方なんだ。
僕が世界を救うんだ。
お前らなんかにはわからない。
「証拠ならーーっておい⁉︎」
僕は気付けば外にいた。
そのあと僕は何かがあったーーいや、何かと話したはずなのだが、覚えていない。
「ここが、ドラグニアの神都…神様がいるのか」
「…ってか、あの木なんの木不思議な木…って感じだよなあ」
有名なCMのフレーズをつぶやいて圭一がその木を見上げた。
小さな屋敷ほどの木は、圧倒的存在だ。
こちらに応対していたドラグニルが、シグムントから事情を聞いて難しい顔をした。
「今は、国中が大事にある。旧知のシグムント殿と、そのお連れであろうと迂闊に入国を許可などできないのだよ」
「なんかあったのか?トオノのおっちゃん」
「今、神龍様のお孫様がこの国におられるらしくてな。ただ、大怪我を負ってたようで、伏せっておるのだ」
「そうなのか!それで、怪我の具合は?」
難しそうな顔をして彼は腕を組む。緑色の髪が風に揺れてきらめいた。
「それがな、体を槍で貫かれて、内臓が悉く潰れたようなのだ」
「なっ…それは助からないだろう。ご愁傷様だな」
そんなシグムントの言葉に、ドラグニルは首を左右に振った。
「治ったよ」
「…は?」
「安静になれる場所に横たわらせた後に、皆が心配そうに覗き込む中銀狼の方が持っていた薬を飲ませてな、治ったよ。多分あの二人は出来てるんじゃないかね?」
そんなのんきな言葉を言っていたが、そんな場合ではない。
ポーションは傷を癒す。だが、治せるのは少なくとも表面の傷1センチくらいで大怪我になると死ぬしかない。
そんなポーションはあって良いはずがないのだ。
と、門番の後ろから声がかかった。
「お孫様が目を覚まされたようだ!」
「本当か!」
「…あ、時に後ろの方々は?部下かね?」
僕は苛立って、こう言った。
「僕たちは勇者だ!この国に逃げ込んだ魔王を倒しに来たんだ」
「なっ…バカ!」
「そりゃ本当か?おいおい、また面倒を持ち込むなど勘弁してくれよ、シグムント」
「俺が悪いんじゃねぇのに…!」
そして、僕らは通された先で、
「あれって、」
「あの人…」
「やっぱ」
「髪色が若干輝いてるな。あれが、」
この国の神龍の孫娘の、トールと出会うことになる。
透「作者、忙しそうですね」
うん、まあね?でも更新はするよ!勉強してばかりだと息詰まりそうだし!
透「ここで黒幕のアイデアでもスポーンと出してほしいけどそうはいきませんよね、作者ですから」
なんかひどくない?
レイ「けっこう俺出番ないな」
今度出すからキニスンナ。




