18 偶然の産物のようです。
ハイスペックスライムソームと三回言ってみよう(特に意味はない)
「モフ神の御神託はモノホンだったようですね…」
フサフサのレイの尻尾(本人はキャパオーバーで気絶して倒れている)がサラツヤだ。申し分ない柔らかさも兼ね備えている一級品の物に。
「恐るべし、オシリス…」
目を回しているレイのことを僕がいじり倒しているのも、あれの衝撃を和らげるためだ。相手は夢だと思っているみたいだし、ファーストキスが価格破壊である。
ぶっちゃけ泣きたい。
気にしていないと言えば、真っ赤な嘘だ。ここで変な挙動をしようもんならーーからかわれたりするのは必至。
僕は結構他人の好意に臆病なんだ。
ただひたすらに、誰かに『何か』を預けてしまうような気がして、怖い。
だから、あんな夢現だから出てきたと言っていい、真っ直ぐなレイの好意が、存在の無さと鉄面皮と毒舌で守ってきた無防備な部分を引きずり出しそうで。
だから逃げた。
相手が覚えていないことを言い訳に、僕は逃亡したのだ。
「惨め」
口調すら崩して、僕は僕を蔑んだ。
嫌い、嫌い、大嫌い。
夢だなんて言い繕って、ばれないのをいいことにそれにあぐらをかいている自分が。
レイの髪を、そうっと撫でた。
ささくれ立った心に、その感触がじんわり染みて。
ルリエの方は魔法の研究を、と言って僕が作り上げた謎空間に引きこもった。レイは倒れているしーー。
「ソーム、遊びましょう」
『遊ぶの!ますたー』
やだかわいい。
「なっ!?なんでスライムなんかテイムしとるんや!?」
『あ、ロドリゲスさん…違うの、シュトレーゼマンさん…しゅ…なの』
「ボケが長いわボケが!ちゅうか人の名前くらい覚えさせぇや!」
ぽよん、と体を震わせて異界の文字で『テヘッ☆』と体に浮かび上がらせると、器用にサムズアップ。
スライムやべえ。
「…い、いやー、スライムなんてひっさびさに見たわ。おとんのとこでも稀やのに、俺の所やと護衛の使い魔がスライム?あかん、あんたらといたらおかしなりそうやわ…」
「えへへ、褒められました」
「褒めとらんわ!ちゅうか無表情で照れるな!怖いわ!」
「うら若き乙女(笑)になんと失礼な。ねー、レイさん」
「……認めへん、大体銀狼の血ィ入った奴が国を出てくるっちゅうんがめっさ珍しいんやぞ!?」
一般人が一般食堂で有名人数人が食事してるとこに行きあったりして非常に気まずいパターンですね。しかも非常に狭い店内で。
わかります。
「それはさておき」
「おう待てや兄ちゃん」
「なんでしょうか?」
「そのスライム、俺と会話できるやなんておかしいとかちょろっとでも思わへんのん?」
あ。
「そう言われれば」
そういや念話しか出来なかったんだったっけ。そんなことも失念するなんて。でも、理由は一体…?
『簡単なの!ますたぁがこの力くれたの!』
「待ってくださいソーム、僕が遠因なのは分かりますけど表現が曖昧過ぎてわかりづらいです」
僕のステータス?いえいえ、高い物じゃないですし。
もともと僕がしたことと言えば、食事洗濯テント張りなど、そしてソームは何か食べたり飲んだり…
「あ、」
一つ音波攻撃を放ってくるカエルがいましたが…あれですか?発声器官としては十分。食べて能力の奪取とかやっちゃったんでしょう。
「なんぞヒントでもあったんか?」
「ポンドフロッグ食べたからかもしれませんね…」
古池や、みたいな場所でよく出てくるらしい。体は青緑色で、その肉は生臭く、泥と砂の食感がし、とても食べられないらしい。毒腺しか使えないという、無駄が多いやつだ。
『ますたぁ、ソームが食べちゃいけなかったの?』
「あ、いえ。大丈夫ですよーーあ、レイさんおはようございます」
ゆっくりと起き上がった眠そうなレイが、ふわわわわ、と欠伸をした。挙動はまさに犬!
「透、ル…エリルは?」
「エリル?ああ、「透!助けてぇ、うぅぅ」
おぅふぃ!?
「腕が一本千切れて、ちょっと中身が出ちゃった☆」
「っ!?何やってるんですか!はい、エリクサー!」
超級魔法薬。伝説アイテムと呼ばれるそれを、僕があっさりと作ったのは、五日前。
ルリエが酔っ払い、走り回ると「あははははははは!」と言いつつ消えて行った。まあ朝になったら戻ってくるでしょうと思っていたら、
「何ですこれ」
目の前には魔物の死体の山。超新鮮だ。
無言で捌いていく。五体目で心を殺す事を覚えた。十体目でナイフを放り出したくなった。二十体目で諦めた。
「アイテムボックス優秀ですよね」
素材も全て剥ぎ取り終わったあと、ルリエは「あー終わった!ご飯ね、楽しみ♪」と言い放った。
何も、していなかったくせに。
「………いい度胸ですねぇ?」
その日僕は修羅になる事を覚えた。
そして、罰ゲームのためにいろいろ貴重なはずの物を惜しげもなく突っ込んで(ドラゴンの血だのグリフォンの瞳だのペガサスの角だの)ぐつぐつ寸胴鍋で煮ていたら。
出来てしまったエリクサー。
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超級魔法薬(シェフの気まぐれver)
あらゆる体の状態以上に対応。
一瓶で部位欠損、万病を治す優れもの。
味は二度と怪我なんかしないと誓うくらいまずい。
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「あんな偶然でできるなんて思ってなかったんですよ」
「んな贅沢素材ばっかりで煮出した言うんか!?ああそりゃあ薬師ギルドも浮かばれんのう…」
「うぇぇ、まずぅぅぅぅ」
グロッキーなルリエは放置した。
ヒトのざわめきがかすかに風に乗って聞こえる。馬車の外へ降り、並走しながら道の先を見る。
高い高い塔。
バベルの塔、と言ったらいいのだろうか。とにかくそんなものが、比べると矮小に見えてくる城壁に囲まれていて。
「…すごい、です」
「この分じゃ、昼前には着きそうだな。さっさと都市に入る手続きしてうまい物でも食いたいぜ」
「迷宮都市、どんな物があるのかしらね」
「二人とも心配です。ダンジョン壊さないでくださいね」
「「努力する」」
「あんたらホンマ何者なん!?」
「ただの偉い人、偉い人、…あれ僕ってスライム以外特徴ないです?」
「「「……否定出来ない所が………」」」
知ってます。
なにはともあれ、これで迷宮都市に入るーー
ことが出来ない程、審査待ちの列は長かった。
透「ソームはハイスペックスライムソームに進化したようです」
ソームって一体ナニモノ?何か作者の意図する所からどんどん離れているような、
ソーム『初めましてなの!作者、作者の好きな物は何なの?』
え?うん、甘いもの?
ソーム『ソーム…甘いの…食べられるの!?』
!?
透「説明しよう!スライムは体が甘いために食べられやすいのだ!……そんな事しないですよ~、この怖いヒトは僕が始末しておきます」
ソーム『ありがとうなの、ますたぁ♡』
え、この展開…ぐべらっ!?
透「次回はテンプレでいきますかねえ…」




