17 気まずいようです。
レイ視点。
side : レイ
馬車の旅の途中、透が糸が切れたように眠りについた。夕飯になって起こそうとしたのだが、いい寝顔であり起こすのが……。
違う。決して見惚れたわけじゃない。
「にしても、あったけぇな。ガキの体温だな」
「あら、そのガキにいいように手玉に取られてるのがあなたでしょ」
ルリエの妥当すぎるからかいに、牽制の意味も込めて睨みつけるが、全く反応しない。
「そう言えばお風呂に入った時に、ちらっと透の胸を見たんだけど」
自分にしなだれかかっている眠りこけた少女を見てしまう。触れている感じではあまり期待は出来なさそうだけどな。
「…なんで神って不公平なのかしら」
「全て察した、もういい喋るな」
この見た目で…いや俺も大きい方が好み、って落ち着け俺。
サラシか?潰してんのか?
…ダメだ俺……
何はともあれ、ぐっすり眠ってもルリエの波動で小物は寄りつかないということらしいので、有難く眠る。
夜中にうっすら身じろぎをした感じがして、靄のかかった頭のまま腕の中のそれを見る。ルリエは間に挟まっていたし(「健全さは一応必要だしね!」とほざいて俺が血涙を流すのを放置した)、透を抱きしめてるなんて夢以外の何物でもない。
驚きをもってこちらを見つめる透に、わけもなく意地悪したくなる。
好きな女にちょっかいかけるのはダサいと思っていたけれど。
「夢…なら、」
その驚きを隠せない表情に顔を近づけて。
ふにゅ、という感触。甘やかな香りが、体躯からかすかに漂って。
腕の中でかすかに強張った身体が、愛おしい。細くて折れそうだ。
ざまあみろ、鈍感娘。
と、同時に、恐ろしいほどの眠気が再燃して。
俺は夢の素晴らしさに酔いつつ、意識を飛ばした。
「ぐおおおおお…寝言で全部呟いてただと!?」
「ええ、まあ……気にしませんよ、犬に舐められたくらいに思いますから」
翌朝俺の腕の中に、透がいるわけもなくーールリエの向こうに昨日着ていたらしい服が畳んであった。
ドンマイ俺。いや匂いと感触付きの夢なんて凄すぎやしないか?
「あ、おはようございます、レイさん」
「っぉう!?び、びっくりした…」
「昨日はお楽しみだったようですね、夢で」
「っ!?」
「寝言、随分愉快でしたよ?」
「っ~~!!」
ひれ伏して、服従のポーズ。お袋、これ教えてくれてありがとう。
「ご、ごめんなさい。俺、夢の中で透に色々と失礼をばやらかしたようでして」
「失礼?」
いやに俺に似合わない殊勝な態度に、透の動かない表情が動き、少し眉をひそめた。
というかこいつ笑ったりする所見たい。笑ったら可愛いんだろうな。
シニカルな笑みはお腹いっぱいだけど。
例えば夢の中で驚いていた表情とか、口…づ、した時の赤くなった表情とか。
「もっと具体的でいいですよ、どうせ『喋っていた』ことですし」
「なぬ!?」
俺寝ながら何を口走ったんだ!?いやいや待て待て。
これもし正直にキスしたくらいなら許してーーもらえるわけないですよね。ごめんなさい俺の見通し甘かった。
「フルスイング・クリーンナップ!」
なんかトゲのついた金棒、いや鉄木の棒を取り出して、はちきれそうな笑顔で二三回それをいい風切り音をさせつつ素振りして。
こんな笑顔が見たいんじゃねぇ!
「覚悟、できてますか?」
で、例の犬に云々発言である。
「まぁまぁお二人さん。仲がよろしいのはええことですけど、こない待たされるとどうにも…」
ぐぅぅぅぅー。
ま、俺も鳴りそうだけどな!
「分かりましたよ。レイさん手伝ってください」
最近料理の手伝いをするたびに思うんだが、料理って一つの工程それぞれはさほど難しくないし、『すげぇ包丁さばきだぜ!』とはならない。
けれど正しい手順で、正しく調理しなければ美味しくはならないのだ。
そんなこんなで出来上がったのが。
「ティポトのガレットです」
余談なんだが、こいつの飯は美味い。本人はいまいち不服そうで、『コメが…』とか呟いているが、俺たちからすりゃ、餌付けも大概にしろと怒りたくなるレベルで。
すなわち眼前の湯気を立てている料理は。
「「正義」」
「なっ…何なんこれ!?外はカリッと、中はホクホクかつベーコンの油がしみてしっとりしとる!うまい!うまいわああああ!」
「うーん、やっぱり香草だけじゃ限界点が見えますね。やはり格安で胡椒の育成をしたいです」
「「「だからなんで不満そうなんだよ」」」
三人のセリフを無視してうなる透と、はたと視線が合って、お互いそうっと目を逸らす。
いやなんか俺はぐりんっ!て回ったけどね。
いや、あの態度ってまだ脈はあるんだろうか?
マジで気になる。女心の勉強くらいしとくんだったぜ、ちくしょうめ。
ちなみに食後、あの綺麗な髪を隠すためのカツラをタダでもらえたらしい。もったいないので、もとの髪を梳いてやったらモフられた。
何このコレジャナイ感満載のラブコメ、とルリエに毒を吐かれた。
俺のせいじゃない。
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「リッチーが出たそうだ」
「あん?それがなんでSランカーの緊急招集につながるんだい」
黒髪の美女に軽く睨まれたちょい悪親父のような男が、肩をすくめる。
「どうもそれ、元勇者のイチノセ・シキらしいんですよー」
少年のような声に美女が視線を向けると、そこにはエルフの美少女が笑顔でいた。
「アウロラ…情報、…不確定。発言、不用意…」
「かったいなー、リリネット。六芒星の一角としてはいいんだけど、ユーモアのセンス、ないんですよね~」
青いローブととんがり三角帽子の少女が、帽子のつばをちょっと下げた。
「…二人、休み。…奴隷商人、手伝い…してた…『ヘカトンケイル』、消えた」
「ほう?」
ロアス王国のギルド支部。Sランカーたちは山積みの問題に頭を抱えていた。
透「鈍感じゃないんですけどねえ」
まあ、多分両者とも気づいていながら…ってパターンだね。
透「作者の恋愛遍歴もわりとおかしいですし」
作者のじゃない!作者に告ってきたやつがおかしいんだ!
透「わかってますよ」
わかってない…くそ、次回は「キャラ紹介しますー?」
だあああああああやられた!




