第二章 消却者と反逆者②
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レオナルド・ヴェルメーレンが帰る場所を失ったのは七歳の時である。
奪ったのは、神。
正確には神像を崇め、民を完全なる管理下に置いていた宗教国家フェアリースだった。
神像を守護するは祝福されし万夫不当の英雄たち。輝かしく美しく華々しい彼ら彼女らは、しかし異端とみなした者に対しては苛烈であった。
『異端の巣食う地に慈悲は無用』
抵抗も対話も意味などなく。故郷の森を焼かれ、両親を殺され、孤独の身となった幼いレオナルドに生きる術などあるはずもなかった。
だがレオナルドは生き延びた。
彼を救ったのは名も知らぬ男。異郷の地より流れ着いた放浪者を名乗る、長い灰髪の術士だった。
焔と鉄の奏者たる彼のもとでレオナルドは傷を癒やし、戦いと生きる術を学んだ。
レオナルドが一人前に達するのを見届けると男は姿を消し、それからはフェアリースに家族や故郷を奪われた人々が集う『レジスタンス』と行動をともにするようになる。
数多の敵を打ち破り、弱者を救ったレオナルドはこう呼ばれるようになる。
希望の象徴たる神に抗う者。
不要とされ、打ち捨てられ、穢らわしいと足蹴にされた者たちを導く希望の否定者、と。
戦いが続く中で仲間も増えていった。
年長者として仲間を導く三首長の一角、絶疾風の剣士ガウル。
レジスタンスに共鳴してフェアリースを捨てた聖騎士シフィナ。
太古の絶滅種と思しき蒼白の大狼ガーカス。
これらの戦力はフェアリースを徐々に追い詰め、やがて国の中枢へと迫る。聖騎士団による最後の抵抗もレオナルドたちを止めることはできず、首都陥落は確実と誰もが考えた。
未知の第三勢力が、神像破壊を阻止すべく並行世界より現れるまでは。
一転してレジスタンスは窮地に陥り、必死に抗うも一人、また一人と斃れてゆく。残された者たちは最後の希望を託して転移魔術を起動した。
レジスタンスの切り札レオナルド・ヴェルメーレンをどこか遠くへ。追手の目が及ばない、はるかはるか彼方へ。
切なる願いは、転移魔術の暴走によるレオナルドの並行世界転移という予期せぬ形で果たされることとなる。かくして並行世界へと降り立ったレオナルドは憎んだ。神像を、フェアリースを、道を阻む者たちを、何よりも無力な己自身を。
力をつけ、技を学び、元の世界へと帰って家族を救う術を探した彼は、その過程で知ることとなる。
レジスタンスの最終作戦を崩壊させ、家族を奪った第三勢力が、『消却者』と名乗る者たちであることを。
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