六話 魔力測定
現世にある家に帰り、両親と再会する為にも、ダイヤマトで魔法を学び強くなる必要がある。
魔法を学んで強くなろう。華がそう決心したその日の朝。周囲は魔導具を手に何やら準備を開始した。
「測定器がありませんー」
「蔵にありましたー」
従者に混じり、小綺麗なネズミも忙しなく走り回る。可愛らしい光景だ。
「なんかみんな大変そうだね……」
可愛らしい着物に身を包み、手の込んだ美味しい朝食を食べ終えた華は、花樹に連れられて広く長い廊下を歩く。
「花樹、あの走ってるネズミって……」
「彼らも従者です。家鼠と呼ばれる、性質は式神に似た妖怪ですね。主に雑用を任されています」
「へぇ……」
床や柱、梁の上を走る家鼠を華は興味深そうに眺める。
「それにしても、みんな何の準備してるの?」
「魔力測定です。道場に魔導具を用意し、外から術師を呼んだりと、色々していますね」
「術師?」
「はい。姫の測定結果により、特訓の内容が変わりますから。姫の測定を見てどんな修行をするか見定めてくださったりします」
「おぉ〜」
花樹とそんな会話をしつつ、華はふと外の広い庭に目を向ける。
そこには、妙な道具を抱えながら道場に運び入れる従者の姿が。女性は重そうな道具を簡単そうに運んでいる。
「えーっと、術師は1人前の魔法使い?」
「はい。そして術者はふつうの魔法使い……という感じですね。因みに私は「術者の若党」です」
花樹は胸に手を当てながら説明をする。
「さて、華さんも魔法を使う為にお着替えしましょうか」
「はーい」
程なくして。女中が用意した薄桃色の可愛らしい魔法衣に着替えた華は、広い道場に移動していた。
「この服可愛い!」
「魔法衣です。様々な大きさのものを常に揃えているので、姫の大きさに合う衣装も勿論あるわけで……」
「用意周到だね!」
見るからに高価な、現代でも通用しそうな可憐な衣装に華は大満足の様子。
「そうそう、測定方法についてある程度説明しておきます。まず……」
花樹は移動しながら魔力測定の方法を解説し、一通り説明を終えたところで道場に到着。
「測定方法は何となく分かりましたか?」
「うん! なんとなく!」
「分かりました。では、お入りください」
「向こう、沢山の人の気配がするね……失礼しまーす……」
花樹が扉を開け、緊張気味な華と共に道場内へと入り込んだ。
道場には数々の未知の魔導具が置かれ、周囲には沢山の術師や術者達が集まっていた。
中には侍と術師に護衛されたご老公、つまり華の祖父もいた。
「沢山いる……」
「この屋敷の術師と、外から数名術師が来ている状況です」
「外からも……?」
「はい。では、とっとと始めるとしましょうかね。まずは魔力測定です」
困惑する華を移動させ、綺麗な水晶が置かれた台の前に立たせる。
「これって……」
「西洋の魔法水晶です。この水晶に手を翳して、魔力を流し込んで魔力量を測定します」
「へぇ……もう始めていいの?」
「はい、どうぞ」
花樹に勧められるがままに、華は水晶に手を翳した。
「姫、魔力の放出のし方は分かりますか?」
「うん、何となく……」
華は翳した手から魔力を放つ。すると水晶は黄色の強い光を帯び始めた。
「おぉ……」
「まさかいきなり黄金とは……」
水晶が反応を示し、周囲がどよめく。
「これ、もっと魔力を込めていいんだよね?」
「手加減してるんですか?」
「うん」
華の言葉にこれまた周囲がどよめいた。
「では姫、遠慮なく魔力を放出してください!」
「はいっ!」
花樹に促された華は元気よく頷くと、自身の魔力を限界まで放出した。
その瞬間。目の前にあった水晶は一瞬、太陽の如く白く煌めいたかと思うと、水晶は華の目の前で音を立てて割れ、呆気なく崩れてしまった。
「ああっ!?」
手を翳していた水晶が割れ、華は声を大にして驚く。
「おおーっ!」
「これはこれは……!」
道具を壊してしまい気まずくなる華とは裏腹に、術師達からは感嘆や歓声の声が上がった。
「素晴らしい……!」
花樹も周りの術師と同じように感嘆の声を上げていた。
「か、花樹……壊しちゃった……」
「いやぁ素晴らしい! まさかこの年で玉崩しを成し遂げるとは……! 実に素晴らしい!」
「……?」
玉崩しの意味を華はよく理解できなかったが、それが偉業であることは何となく理解できた。
その後の測定も、ことあるごとに術師から歓声が湧き上がった。
体内に魔力を循環させ、身体強化をしたまま重い物を次々と持ち上げた。
身体強化のまま外の庭をとんでもない速度で走り回った。
魔法弾を生み出し、的を目掛けて放つ測定では、生み出した魔法弾の出来はそこそこ。
しかしどんな小さな的も、遠くにある的も、そこそこの魔法弾により正確に狙い当てた。
ほぼ全ての測定で最高得点を叩き出し、会場を沸かせ、やがて全ての測定が終了した。
「これにて測定は終了となります」
「はーい」
華は元気よく返事をする。あれほど動き回ったにも関わらず、まだ余裕がありそうだ。
「姫様! 素晴らしいお力です!」
「なんと素晴らしい力……! この目で見られて大変喜ばしい限り……!」
「ありがとうございます!」
術師から称賛の言葉を貰い、感謝の言葉を述べる華。沢山褒められた華は満足げに道場を後にした。
「初めてにしては魔法の基礎はしっかり出来ていました! 力の扱いは完璧!」
「やったー!」
「しかし、魔力の形成に不安があるように見えました」
花樹は長い廊下を歩きながら話を続ける。
「とりあえず魔力形成を中心とした、魔法の基礎から始めましょうかね」
「はーい!」
「あと礼儀作法も!」
「はい!」
花樹の言葉に華は元気よく返事をしていく。
「あとは勉強もですね。ダイヤマトの歴史、基礎知識などなど……」
「えっ……」
勉強と聞いた華は途端に表情を曇らせる。
「必要なことでしょ? だって一年後、華さんは魔法学園に通う身になるのですから」
「……えっ? 私、魔法学園に通えるの?」
「はい。今日の測定は確実に手ごたえがありました! どう考えても、魔法学園に通う資格があると判断されたことでしょう!」
「ええっ!? もしかしてこの測定って、魔法学園の入学試験も兼ねてたってこと!?」
「その通り!」
嬉しそうに告げる花樹に対し、華はこれでもかというほどに声を荒げて驚く。
「なんでそんなことを!? これって最低限の基礎とか学んでからやる物だよね!? 何も言わずにいきなりそんな……!?」
「その通りです。しかし、昨日の戦いぶりを見て「あ、これなら大丈夫そうだ」と思いまして……ほら、善は急げと言うでしょう?」
華の至極当然な反応に花樹は笑顔で答える。
「何はともあれ、今日からお勉強の始まりですよ! 頑張ってください!」
「はーい……」
苦手な勉強に力なく返事をする華だったが、この時の彼女はまだ知らなかった。
華はこの測定により、ダイヤマトの中で特に有名な名門魔法学園『四季魔法学園』に選ばれたことを。
そして、名門に選ばれたことがきっかけで、とある令嬢から恨みを買うことも……今の華には、知る由もなかったのだった。
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