第一章:(7)
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この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。
金曜日に学校に行き、図書館へと向かうが、図書館への道にも、図書館にもJの友人たちの姿は無かった。
つまらない高校での時間を過ごし、22時を待ってジャックの家へと向かう。玄関を開けると体調が悪そうなジャックの姿があり、
「おい、どうしたんだ?大丈夫か?」
「いやぁ、酷い目にあったよ」ジャックは弱弱しく答える。
「こないだ予想した通り、昨日のパーティーでキングは格好付けてね。それだけならいつも通りなんだけど、昨日はキングがチキンの料理を作ったんだ。強い火力で火柱上げて焼くと一見格好良いだろ?それをやったもんだから、表面しか焼けてないチキンの完成さ。中が生のチキン食べたら・・・結局この有様さ」
ジャックや友人らには悪いが、その火柱を上げて料理をし、得意な顔をしているキングの姿が簡単に想像出来る。Jは声を出して笑っていた。
生焼けのチキンを食べたパーティー参加者は食中りとなり、学校を休んでいたようだ。
「用事があって本当に良かったよ、災難だったな~」
Jは笑いながらマルボロを持ってベランダへと向かった。
「明日アニーやミッシェルにJが人の不幸を喜んでたって伝えてやる」
ブツブツ言いながらジャックもパーラメントライトを持ってベランダへと向かう。キングの格好付けた姿などパーティーとキングの悪口の話題一色で夜は更けていった。
週が開けると全員学校に戻っていた。朝の図書館で、教室で、キングは皆に散々嫌味を言われている。ブルーの幹部でありながら、嫌味を言われ小さくなっているような所が、キングの好かれている要因でもある。
ランチタイムとなり、パーティーに参加した連中などが同じ教室へと集まってくる。キングとしては一番嫌味を言われる時間となる。Jは毎日ランチに母親が作った弁当を持っていく。漢は黙って丼飯。が弁当のコンセプトであり、何の飾りも無いシンプルな丼飯が毎日の弁当だった。この日の弁当は親子丼だ。それを狙った訳ではなかったが、キングが面白いように反応する。
「当分俺にチキンを見せるな」
これをきっかけにジャックやアニーなども一斉にキングへ嫌味攻撃を再開させる。
「お前のせいなんだから諦めろよ」
Jも笑いながら一緒にキングをからかっていた。
そこにいつもならこの教室には顔を出さないマイキーが顔を出した。Jは何かを言いたげなマイキーと目が合った瞬間、何か事態が動くと予感した。
「J、聞いてくれよ、こないだギャンブルで散々に負けたんだ」
Jの隣に座ったマイキーが切り出す。夜の世界に顔は出すものの、どこかの組織に所属する訳でも無く、背は高いが線は細く、決して喧嘩が強いタイプでは無いため、いつか危険な事に巻き込まれるのでは、と以前からJは気にしていた。
「そりゃ運が無かったな。で、ギャンブルの負けを自慢しに来たのか?」
ギャンブルで負けたと言われても、自己責任の世界であり、特に返す言葉は見付からない。
「いや、ルールが変だったから聞いて欲しいんだ。オレだってずっと負けてる訳じゃない。お前に鍛えられてもいるしな。でも、オレが勝った時と負けた時で倍率が違ったりするんだ」
たちの悪い連中とのギャンブルではよくある話だ。自分たちの勝ちに対しては倍率が突然高くなり、相手の勝ちには倍率が付かない。そこで文句を言えば強烈な脅しが待っており、屈すれば大金を払うこととなり、屈しなければ生きている保障は無い。この世界、一度相手に舐められたら、一生搾取される側へと回ることになる。
「お前はそいつらの場に出掛けて行ってギャンブルしてるのか?」Jが聞く。
「場というか、ミックがいるグリーンの組織が持っているレストランの一室でやってるんだ。ブラックジャックをしてるんだけど、場にキャッシュは無く、後で精算だから目立たないんだよ」
「ブラックジャックか・・・そりゃ、その手の連中にはルール無用のゲームだ」
トランプで2枚以上のカードの合計で21を目指すゲームだが、そのカードの組み合わせ方で倍率が自分たちに有利なようにコロコロと変わる悪いゲーム運用をする連中は実際にいる。Jはマイキーに諦めろと言う様に首を左右に振る。すると横で聞いていたキングが割って入り
「お前、Jにギャンブル習ったんだろ?じゃぁ実力ならお前が上だろうし、次はポーカーで勝負して来いよ。」
キングのこの一言にマイキーは表情を明るくしたが、一方のJはキングを呆れた顔で睨んだ。
完全にカモにされたマイキーが、その手の連中とギャンブルをして勝つことは絶対に無い。それならば、もうそいつらとギャンブルをさせないことが良策なのだが、キングの余計な一言に勇気を貰ったマイキーは
「あ、そうだな。次はJに仕込まれたポーカーで勝負してくるよ」
と喜び、教室を後にしてしまった。
「お前は馬鹿か?」
Jが完全に呆れながらキングに言う。状況が掴めていないキングはキョトンとするが、
「あいつが何の勝負をしても、その手の連中に勝てるはず無いだろ」
と言うと、横で同じく聞いていたジャックやアーサーも声を揃える。パーティー以降、未だキングには分の悪い日が続いていた。
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