表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏通りの東大生  作者: Jzou
なりたくない自分にならない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/59

第一章:(5)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

運転席に座るキングはケントに火を点ける。


「で、その相手ってのはいつ来るんだ?」


助手席のJもポケットからマルボロを取り出して火を点けた。キングのフォルクスワーゲンの後部座席にはキングの部下2人も乗っている。

ジョージやミックたちとのギャンブルの後、Jはキングと約束していたビリヤード場に着いた。しかし、キングに大事な用事が出来たと告げられ、巨大組織ゴールドとの交渉か何かがあるらしく、それに行くという。本来ならJには関わりの無い話だったが、話の流れからこうして助手席に座る羽目になった。


「これだけ車が居なかったら、来た車が相手のだよ。黒のメルセデスだ」


23時過ぎのモールの駐車場。数千台が停められる巨大駐車場だが、この時間はキングの車以外一台も停まっていない。駐車場の真ん中に停めてあるため、相手も直ぐに分かるはずだ。


「やっと来たな」


Jが煙草に火を点けてまもなくこちらに向かってくるヘッドライトが見えた。確かに黒のメルセデスであり間違いは無さそうだった。


近くに停めたメルセデスの運転席と助手席から男が降りてくる。明らかに冗談が通じる相手では無い。煙草を咥えたままJはキングたちと共に車を降りた。

メルセデスの後部座席からはTシャツに白ジャケットというラフなスタイルの黒い長髪の男が降りて来たが、独特の緊張感を漂わせる彼が交渉相手なのだろう。


「よぉビリー」とキングは挨拶し、握手をしているが、場の緊張感は高い。その中でJだけがキングの車に寄り掛かりマルボロを楽しんでいる。


「乗れよ」


とその男は後部座席へとキングを導き、二人が入るとドアが閉じられた。


この街でブルーは最大クラスの組織だ。そして一方のゴールドもそれに負けない組織だ。ガキの不良団体とは異なる両組織の間で何があったかは知らないが、組織同士の本格的な抗争であれば、さすがにキングでは交渉するのに身分が低過ぎる。もう少し小規模ないざこざでもあったのだろう。

どれくらいの緊張感を持てば良いのか全く分からないため、


「あ~寒い、夏も終わりかなぁ、夜は冷えるね」


独り言を日本語で言いながら空を眺め、煙草をフッと吹き飛ばした。ゴールドの二人にJは直ぐに睨まれた。あまりに場違いで大胆な行動だったようだ。


メルセデスの扉が開きキングが出てきた。


「話はまとまったよ。別に難しい話は無かったよ。どうだ、ジャック・ダニエルでも飲みに行かないか?」


キングは上機嫌で車に乗り込んだ。


「あぁ、危険手当ってことで当然奢ってもらうぜ」


Jも笑顔で車に乗り込み、ビリヤードの夜はジャック・ダニエルの夜へと変わった。



バーに着くと、キングはジャック・ダニエルのストレートを2杯オーダーする。

「乾杯」

とグラスを合わせ飲み始めると、すかさずキングはJに目で合図をする。顎を少し上げて「後ろを見ろ」との合図だ。見ると長い黒髪が綺麗なアジア系の女がJの2つ隣の席に座っていた。


「いい女だな」Jがキングに言う。


「じゃぁ、お前が口説けよ」


キングならばそう言うだろうと思っていた。裏社会では実力者のキングだが、恋の道では多少奥手なのだ。



「ジャックローズです」

カクテルグラスに注がれたそのカクテルは、赤のドレスを纏った都会の女性のような危険な美しさがある。カルバドス主体のこのカクテル気品に、彼女は決して負けていない。

マルボロのメンソールを取り出し、火を点けようとするが上手く火が点かないようだ。バーテンダーも気付き、火を用意しようとするが、それより早くJがジッポを弾いた。


「ありがとう」


長いストレートの髪を指でかきあげ、彼女はJに礼を言う。


「ジャックローズ、よく似合ってるね。そのカクテルが似合う女はあまりいないのだけど」

ジャック・ダニエルのグラスを軽く持ち上げ、「乾杯」と目配せをする。


「それは口説いてるの?」


ちょっと笑いながら彼女もグラスを持ち上げた。


「口説いて良いんならね」Jも笑ってみせる。


否定はしないまま彼女はジャックローズを飲む。店の薄明かりの中でバーテンのシェークの音とMiles Davisの「Bye Bye Blackbird」が響いていた。


「次のカクテルはオレが頼むよ。気に入ったら口説いてみるさ」


「面白いね、それ。じゃあ気分は赤で、何か頼んで」

悪戯っぽい顔で彼女はJの事を見ている。


「カンパリシェーク2つ。十分に冷やして」


バーテンダーはシェーカーにカンパリを2杯分入れ、リズミカルにシェークをする。十分に冷やすにしても、ハードにだけやると氷が融けて水っぽくなる。氷に逆らわずに冷やすにはリズミカルに振ることが重要だ。

グラスに注がれたのは薄ピンクに変わったカンパリ。カンパリの赤は情熱的だが、冷やすと独特の苦味が程よく引き立ち美味くなる。カンパリはシェークが一番美味い。


「美味しい」


彼女は驚きの表情を浮かべると同時に可愛らしい笑顔を見せた。都会的で危険な香りのする一方で、笑顔には可愛らしさが満ちている。


「賭けには勝ったかな?」Jが聞くと


「でも簡単には口説けないわよ。男を知らない子供じゃないし」


「じゃあゲームをしよう。惚れた方が負けってのはどう?」


彼女の目を見ながら提案したが、ゲームは既に始まっていた。


「名前も知らない男は口説けないわ。私はエイミー、あなたは?」

シェークの音の中、曲はLee Morganの「I Remember Clifford」に変わっている。


【作者からのお願い】

『続きが気になる!!』『面白い!!』と思って下さったら、下にある【☆】をタップして評価やブックマークをして頂けると執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ