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裏通りの東大生  作者: Jzou
なりたくない自分にならない

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第一章:(4)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

「ヨー、J、バドいるか?」


シビックの車の中、後部座席からしゃがれ声をしたミックはJにマリファナを差し出す。浅黒い顔をしたミックは痩せ型だが鍛えられた体をしている。グリーンという若手主体の中堅の組織に属する彼はヤクの売人らしい。実力はありそうだが、態度や言葉の端々に粗暴さも見え、少々自信過剰という振る舞いだ。

このミックを連れて来たのはJの友人のマイキーだが、温厚な性格で、正直マイキーの知り合いにミックのようなタイプがいることに驚いていた。


「大丈夫だ、いつも世話になってるからな。タダでやるよ」


マイキーはそう付け加えるが、問題は金じゃない。


「それがいくらでも買うだけの金はある。気持ち良くなるだけなら女でも買うさ」


Jはぶっきら棒に答えるが、やはりこの手の連中は女の話が出ると妙に喜び、そして納得する。馬鹿らしいとも思えるが、分かりやすい。こういった世界で上手く物事を流すために身に付けた言い回しだ。


車がいつものビルへと着き、裏階段へと向かうと2人の男が既にいた。

1人はリチャード、金髪のイケメンで組織というよりは小規模な少年ギャング団のようなブラウンのリーダーをしている。非常にモテる男で物腰は柔らかく、態度にも余裕がある。Jとは同じ高校ではあるが、高校内での友人というよりも、ギャンブルを通じての友人である。もう1人は先日も来ていたジョージだ。妙なヤツに気に入られてしまった、とJ思った。


「J、こないだ負けてた25ドル持ってきたよ」

リチャードが口を開く。


「おっ、サンクス。で、今日はやっていくのか?」


正直面倒なヤツらが多いので、リチャードにはこの場に居てもらいたいのが本音だったが、


「いや、今夜は映画観に行く約束しててね。お前に借りた金、遅れると倍になるからさ」


と、リチャードは笑いながら25ドルを差し出した。


「今日の相手は1人か?」とJが聞くと、


「今日は2人。サンディーは知ってたよね?あともう1人と行って来るよ」


「相変わらずのモテっぷりだな。オレはこれから女っ気ゼロの男たちとの時間なのに」


笑いながらJが言うとリチャードも笑い出す。こういう楽しい雰囲気の中でギャンブルもしたかったが、リチャードが消え、これでJはミック、マイキー、ジョージと勝負をすることになったが、なんとなく良くない胸騒ぎを感じていた。



ジョージという男について、Jはキングに聞いていた。無精髭に長髪で汚い印象を受けるこの男は常にナイフを携帯しているという。巨大組織ゴールドに属してはいるが、下っ端であり、喧嘩の実力は皆無と言っても良いらしい。しかし、すぐにナイフを出すというやっかいなタイプのようだ。

「なるべく関わらない方が良いぞ。気をつけろよ」とのキングからのアドバイスだったが、向こうから来てしまった以上は相手をしない訳にはいかなかった。


今回はポーカーではなくブラックジャックでの勝負にした。Jが最も得意とするゲームだ。マリファナを吸っている奴、知性の無い奴、そしてマイキーと、こんな奴等を相手に負ける理由がなく、勝負は直ぐについた。開始30分程度で100ドル近くを手に入れていた。そろそろ場を切り上げるという時に、


「お前は早く帰って母ちゃんとでもヤッてな」

ミックがジョージを挑発した。


共に負けて興奮状態にあり、ジョージのナイフが光を放ったのは次の瞬間だった。

ジョージのナイフが数回空を切った。ナイフの使い方に慣れていないことはすぐに分かる。目には殺気と躊躇の両方が入り混じり、暴言と共にナイフを振りかざすだけだ。ナイフは直線的に使う武器であり、振り回している内は、怪我をすることはあってもそこまでであり、威嚇以上の効果は無い。

一方のミックも喧嘩のポーズは取るが、自分の組織の名前を誇示しながら挑発するのみで戦う気配はない。しかし、この喧嘩、続ければ確実にミックが勝つだろう。


「ここはオレの場だ。勝負で負けてガタガタ言うんじゃねぇよ」


Jは双方に言ったつもりだったのだが、ジョージのナイフが脇腹の直前まで来た。


「オレにそんな口の聞き方するな。どうだ怖いだろ」ジョージは言う。


正直怖くはない。刺される可能性もあるが、怖くなかったのは、これがただの脅しだと判っているからだろう。彼にそれ以上の事をする気概は無いとの確信があった。


「あぁ、怖いよ」

少し笑ってJが答えると、満足そうにナイフをしまった。


これで場は落ち着き、ジョージは街へと消えて行き、ミックたちも徒歩でどこかへと消えていった。

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