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裏通りの東大生  作者: Jzou
高負荷トレーニング

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58/60

第五章:(9)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

J、ミッシェル、ケイト、それぞれがモールへは自分の車で来ていたが、急ぎだったこともありミッシェルとケイトをシビックの後部座席に乗せてJはモールの駐車場を出た。遠くでパトカーのサイレンの音が聞こえるが、恐らく全員が無事に逃げることが出来ただろう。


後部座席では泣いているミッシェルの肩をケイトが抱いている。「大丈夫か?」と聞きたいところだが、あんな経験をした後だ、大丈夫では無いことは分かっているのでミラーで2人の様子を確認しながらJは車をなるべくモールから遠くへと走らせた。



ビーチ沿いの道に来るとJは車を停めた。


この街でJの赤いシビックはそれなりに有名だ。

車を降りて少し海岸線の道の歩道を歩いてシビックから距離を取った。


海岸沿いのこの道には、海を見るための4人掛けの石で出来たベンチが点々と設置されている。夕暮れ時になれば、サンセットを肩を寄せ合いながら観るカップルたちでベンチは埋まるが、まだ陽が高い時間でもあり空いていたため2人と共にそこに座った。これでウィルたちが来ても、警察が来ても、シビックからは離れたために時間を稼ぐことが出来、その間に2人をビーチ客に紛れ込ませることが出来る。


「ケイト、ありがとう」


ベンチに座って落ち着いたのか、泣いていたミッシェルがようやく話すことが出来た。


「私だって怖かったけど、ミッシェルよりはあんなバカたちへの耐性はあるからね」


ミッシェルの肩を抱いていたケイトは優しく笑いながら話しかける。Jはミッシェルの隣に座って辺りは警戒しつつも、2人を見ていることしか出来なかった。


「そして、ケイト、ごめんね。ケイトがJのこと好きなんて知らなかった。友達なのにね。気付かなかった」


ミッシェルは顔を上げてケイトを見ながら謝る。


「それは仕方ないよ。知られないようにしてたしね。ミッシェルには特に」

ケイトはそこで一呼吸置き、海の方を見ながら


「ただ1つハッキリと言えることは、今日のこと含めて全部Jが悪いってことだね」


そうケイトが言い切ると、ミッシェルも笑顔になり、


「そうだね。全部Jが悪い。ねえ、知っている?Jは他にもキスしてる女がいるんだよ」


「まだ他にもいるのか?」


「そう、私それ見ちゃったんだよね」


ミッシェルを心配する空気から、風向きはどうやら完全に変わったらしい、と感じたJはマルボロを取り出してジッポで火を点けた。


「なに自分の話じゃないような雰囲気出してるの」


ケイトはミッシェルの肩を抱いていた手をそのまま伸ばして、反対側に座るJの肩を小突く。


「どこか他の世界のJってヤツの話ならいいな~と思ってね」海の遠くを見ながらJが言うと


「私たちが大好きなこのJの話です」


ミッシェルは人差し指でJの頬をつつきながら反論した。



「それにしても、あれがJの世界だし、キングたちの世界なんだね」


ミッシェルは改めてさっきまでの出来事を思い返した。


「それだって、ミッシェルやケイトみたいな経験はそうそう出来ないよ」Jが言うと


「やりたい経験じゃないけどな」ケイトが返す。


「2人を完全に巻き込んじゃったよね。ごめんね」


「凄い怖かったけど、Jが多くの人に守られてるのも分かった。キングも凄いんだね」

ミッシェルが感心すると、


「キングは男の世界だけだと凄いんだ。女がいると生焼けチキンを焼いちゃうけどな」

Jが笑いながら言うと


「あ~あれは酷かった・・・」


今も定期的に語り草になる、キングが女の子たちの前で格好付けて火柱を上げながら生焼けチキンを焼いたあの日のパーティーに参加していたミッシェルが変な顔をするが、そんな顔をしても可愛いのがミッシェルだ。ケイトもその顔につられて笑い出す。


「キングやラルフが凄いからこそ、オレは自由に遊んでられるんだ」


「デートに関しては、自由に遊びすぎだけどな」ケイトがチャチャを入れると


「そう、自由過ぎるね」ミッシェルも応じる。そして、


「ねえケイト、ケイトはこの後Jとどうするの?Jは卒業したら日本の大学に行くみたいだけど」


ケイトの方を向いて問いかける。


「私は今まで通りかな。Jのことは好きだから卒業までは時々デートくらいはするつもり。卒業までの思い出作りかな。ミッシェルは?」


「じゃあ、卒業まではライバルだね。その後はまだ決めてない。考えたくないってのが本音かな」


どうやら話の方向としては軟着陸したらしいと感じたJは、再びマルボロを取り出して火を点ける。


「だから、Jの話なんだよ」


ミッシェルとケイトからJは再び小突かれた。

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