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裏通りの東大生  作者: Jzou
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第五章:(5)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

ジャックが言った「東京大学」というワードは、あまりにも荒唐無稽で、現実的なワードでは無かったが、日本の大学という選択肢をJに与えた。


ただ、その前にはJが既に忘れていた漢字を中心とした日本語、日本でしか習う事のない日本の社会科知識など、問題は山積していた。

漢字、慣用句、古文、地理、歴史、公民、Jが触れる必要なく過ごしてきたものたちだが、ここに来て覚える必要性も出て来た。ただ、これらの教科は、一から学習するとゴールは遠いが、覚えれば何とかなる分野でもある。


「覚える」という行為は、テクニックがあれば何とかなる。


アメリカにも地理の授業はあり、全米の州を覚えて書くテストはあった。アメリカの歴史の授業では、歴代大統領を覚えて書くテストもある。


これをダラダラと覚え始めると、最初と最後は覚えやすいが、途中の部分で情報が脳内で混線し、間違いに繋がっていく。


この現実の中にヒントは隠されている。


「最初と最後は覚えやすい」のだ。


そのため、地図を覚える時でも、人物を覚える時でも、元素記号を覚える時でも、何か所か絶対に間違えないポイントを決める。そうすることで、そのポイントが新たな「最初」となり、次のポイントの前が「最後」となる。覚えやすい最初の数個と最後の数個を複数作り上げることで、情報の混線が起きにくく、単純暗記は格段に楽になっていく。


数学においても、特定パターンにおける数字を覚えてしまえば、計算スピードは上がっていく。

「九九」を暗記していることで、計算スピードが速くなることを実感している人は多いが、その暗記する範囲を広げること、その他の頻出する計算問題の解も暗記することで問題が楽に解けるようになる。


代表的な例は円周率だろう。

「3.14」かける2から9までの解を全て暗記してしまえば、πを使わないパターンでの計算スピードは段違いとなる。


「九州と四国、東北は覚えたな」


日本人ならば小学生で暗記しているであろう日本の地理も、ようやく覚え始める段階だが、Jの情報量は着実に増えていた。


しかし、大きな問題があり、それはJがうさぎ派であり、やる気が出ない時には動かないことと、勉強よりもデートが好きなことだった。




いつものバーのカウンターの席にJとエイミーが座った。


「今日は何飲む?」


Jが聞くと、黒いドレス姿のエイミーはマルボロのメンソールを取り出しながら


「それはJが決めて」と言う。


「サイドカーを2つ。レモンはフレッシュで」


Jがバーテンダーに告げる。

Jもジーンズのポケットからマルボロを取り出すと、エイミーの煙草に火を点け、そして自分のマルボロに火を点けた。バーテンダーはレミーマルタンV.S.O.Pとコアントローのボトルを用意すると、レモンを手際良く絞り、それらをシェーカーに注ぎ、氷を入れてリズミカルにサイドカーを2杯分振っている。


「なにか大きな喧嘩があったみたいね。カレッジでもギャングが抗争してた話が出てたよ」


「そんな所にまで話って広がるんだな」


「やっぱりJも関係してたのね」


「抗争が終わってから行って、警察が来る前には撤退してたけど」


マルボロの煙を天井に向かって吐き、Jは笑いながら答えた。


「それって行ったって言うの?」エイミーも少し笑い出す。


「野次馬の方がその場に長くいただろうね。でも、来てくれって頼んできたヤツには感謝されたから、行ったことにはなってるみたい」


「Jのことだから大丈夫とはいつも思ってるけど、本当のことを言えば、危ない場所には行って欲しくないな」


Kenny Dorhamの「Blue Friday」が流れる中、サイドカーが来たのでグラスを合わせる。


「あっ、美味しい」


エイミーは一口飲んだグラスを見ながら驚いた表情を見せる。


「レモンがフレッシュだと、立つ香りが圧倒的に違うし、ブランデーの美味しさも引き立ててくれる」


「今まで飲んだものとは違うものみたい。今日のカクテルも美味しいよ」


もう一口サイドカーを飲み、Jを見ながらエイミーが言う。


「じゃあ、もう一回エイミーのこと口説いても良いのかな?」

Jが笑いながら言うと、


「その必要はないわ。好きな人だからこそ危険な場所に居たら心配するの」


「惚れたら負けるゲームは?」

2人が出会った日、この場所ではじめた惚れたら負けのゲームのことだ。


「あら?これも含めてゲームかもよ?」

エイミーがウィンクをしながらいたずらな笑顔になった。


「うそうそ。いい女は負けるゲームはしないの。私はJが好き。ただそれだけよ」


「ハートのクイーンを引いてのストレートより強いね、そのエイミーの台詞は」


Freddie Hubberdの「Open Sesami」が流れる中、2人の夜もまた開けていく。

【作者からのお願い】

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