第五章:(4)
沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。
この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。
こんな事態の後だが、4時にはミッシェルを迎えに行き、他愛もない会話をしながらウィンドウショッピングをしたり、本屋でミッシェルが数冊購入するのに付き合い、楽しい時間を過ごした。
本屋を出たところでJが
「いつものカフェに行く?」と聞く。
「今日は前に連れていってもらったロングビーチのイタリアンレストランで、またケーキが食べたいな」
「OK。それならその前にちょっと付き合ってよ」
Jはミッシェルとシビックに乗り込み、モールに入るMacysに戻った。先程のウィンドウショッピングで二人で見ていたミッシェルに似合う青のワンピースをJは手に取った。
2人でレジに並ぶと「それどうするの?」とミッシェルが聞くが、会計の方が先に進む。Jは現金で支払うと
「これ、このまま着たいんだけど、試着室で着替えて良い?」
と店員に聞く。店員が「勿論、試着室は・・・」と試着室の場所を指そうとするより早く
「大丈夫。ガキの頃から来てるから」と笑いワンピースをミッシェルに渡し、ミッシェルの手を引いて試着室へと向かう。
「ありがとう。でもどうして?」
と喜んではいるが、理由が分からずミッシェルは聞くが、あんなことがあった後でもあり、J自身が今日を全力で楽しみたかった。
青のワンピースを着たミッシェルは改めて見惚れる程に可愛い。
「生きてて良かった」を比喩表現ではなくJは実感していた。
シャーデーの「Smooth operator」が流れるカーラジオを聴きながら、Jたちはロングビーチへとフリーウェイ110番を南にシビックを走らせる。
「クレームブリュレとチーズケーキ、それにカフェラテ2つをお願い」
Jがいつも通りイタリアンレストランをカフェ使いして注文する。
この店のクレームブリュレが曲者だ。
表面のカラメルが強化ガラスかと思う程に硬い。並の力でスプーンで叩いても、全て跳ね返される。しかし、それも含めてバニラが香るクリームが美味しい。濃厚なチーズケーキに負けない、こちらも濃厚なクリームなのだ。
ケーキと楽しむカフェタイムを過ごしながら、Jは昼の抗争の話をした。
「・・・そんな危ない状況だったんだ」
ミッシェルは驚きながらJの話を聞く。ルービンの話はあえてする必要も無いと考えJは言わなかったが、それでも十分にミッシェルを驚かせた。
「ホント良かった、Jが無事で。レースだったりギャンブルだったり、危ないことを色々してるの知ってるけど、あんまり無茶したらダメだよ」
ミッシェルの目が本気なのが分かる。止めるように言うことはないが、心配しているのは十分にJに伝わる。
「そうだな。気をつけないとだね」
今日の経験を経れば誰しもそう思うだろう。Jも静かに頷く。
話しが長くなり、辺りが暗くなると、徐々にお洒落をした男女が入店してくるようになり、店はデート客が主体となるディナータイムを迎えた。そしてそのまま、Jとミッシェルもイタリアンのディナーとなった。この時のためのワンピースだった。周囲の大人たちのお洒落なデートに比べれば、安物の服かもしれないが、高校生が楽しむデートとしては、十分にディナータイムの雰囲気を楽しめる。
小烏賊のフライやクラブケーキ、イタリアンシーフードレストランの濃厚で美味しいクラムチャウダーを注文し、美味しさを楽しむと共に、2人の時間を楽しく過ごした。
ディナーが終わり、店を出てシビックへと歩いていくと、ミッシェルがそっと手を繋いでくる。そしてそのままJに抱き付き
「今日はまだ帰りたくないな」
ミッシェルにしては意外なほどストレートな言葉だった。
「J、一応ルービンたちは命は取り留めたよ」
キングはショットグラスのジャック・ダニエルを飲み干しながらJに語った。
ミッシェルとの時間を過ごし、深夜に帰宅したJにキングから電話が入り、場末のブルースバーで待ち合わせをして、ジャック・ダニエルとナチョスを頼み、Jはキングからその後の顛末を聞いていた。
パトカーの突入と同時にキング達は上手く逃げ、警察には捕まらなかったらしい。
ラルフや部下は救急車を呼んでルービンたち倒れた若手の対応をしたため警察に話を聞かれたが、ラルフがやった訳ではないため、特に問題にはならなかったようだ。
抗争相手も散り散りに逃げた為、結局この日の逮捕者は出なかったようだ。ただ、重傷者が出て、抗争相手も明らかで、警察の面子もある以上、数日以内に数人は逮捕されるだろう。警察による警戒も強化されることになり、この抗争は一旦ここで終結となる。
「良かったよ。死んでたら後味悪過ぎる」
Jも安堵し、ジャック・ダニエルを一気に飲み干し、もう一杯注文した。
「な、だから銃なんだよ」
KENTを吸いながら笑顔になり、キングはいつものフレーズを口にする。
「オレの安全保障は、キングの存在だけで十分だ」
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