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裏通りの東大生  作者: Jzou
高負荷トレーニング

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52/59

第五章:(3)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

袋小路に意気揚々と入ってきたネズミに向かって、獲物狩りをしようとギャングたちは鉄パイプやバットを手に一斉に走り出した。勿論その内の数人は銃を持っていただろう。しかし、そんな細かな部分まで見極める冷静さをこの瞬間のJが持っているはずもなかった。


相手がシビックを見つけ、走り出すまで、数秒あるか無いかだろう。しかしJだけでなく車内にいた全員にとっては、その時間は非常に長く、スローモーションに思えた。


迫ってくるギャングたちは口々に罵声を浴びせながら走ってくる。


その声が何を言っているのかは分からないが、破壊衝動、いや野性の本能に近い表情で向かってきていた。


「あぁ、ここでオレは死ぬんだなぁ」


そんなことを考える余裕さえあったが、次の瞬間、生きるための本能がJにシビックを逆走させた。ハンドルを握っていたことが瞬時にその判断を可能にした理由だろう。自分の腕に運命を委ねられたため、どうすれば生き残れるのかとっさに判断が出来たのだ。


Jは全速でバックし、カースタントのように車を反転させ、その場を後にした。幸いギャングたちは走って向かって来ていたため、誰も追ってはこなかった。


「お前のとこの連中がもう行ってるんじゃなかったのか?それに相手は4人って聞いてたぞ」


アクセルを全開にしながらJが口を開く。


「知らない、知らないんだ。なんでだ?なんでだ?」


今見た状況の整理が付いていないラルフの部下は「知らない」を繰り返しているだけだった。



その後、公衆電話を見付け仲間に連絡を取ったラルフの部下は、慌てて、そして顔面蒼白で戻って来た。どうやら入れ違いでブラックの若手が倉庫街に向かったらしい。


しかし、20人程しか集めていないブラックに対して、相手は幹部含めた50人規模であり、状況は厳しかった。


Jは猛スピードで再び倉庫街へと車を走らせた。正直間に合うとは思っていない。しかし、少しでも早く現場の混乱を落ち着かせるには、この車にいる連中がそこに着く必要がある。



キングやアーサーを乗せたブラックが頼りにする連合軍であるJのシビックが再び袋小路の奥に着いた時、現場ではブラックの数人が倒れていた。


彼らは微動だにしていないが、誰も彼らを起き上がらせようとしない所を見ると、あまり良い状況ではないようだ。しかし、その数人の犠牲がギャングたちの破壊衝動を満たしたであろう、J達の到着時には両組織が倒れた数人を挟んでにらみ合う休戦のような状況になっていた。


見た所、倒れている内の1人はルービンだ。


ただ、この状況は彼のシミュレート不足の結果ではない。この状況はJにとっても想定外だった。2人の結果を分けたのは、ほんの少しの運の差と、最善手が浮かぶまでの僅かばかり時間の差だろう。


ラルフの部下とキングが部下と最前線に向かい、アーサーとJは車の横で待機していた。


キングが交渉の真ん中に入ったことで、ある程度落ち着きが出てきていた。最終的にブルーを敵に回すことはどの組織にとっても得策では無く、キングに手出しをしようという連中がいないからだ。さらにこのタイミングでラルフのキャデラックを先頭に5台のブラックの車がそれぞれカーステレオの重低音を爆音で響かせながら袋小路に到着した。


キャデラックから出て来たラルフは厳しい顔ですぐに最前線の交渉の現場に向かう。ただ、これ以上抗争が激化することはないだろうという確信があり、Jはマルボロに火を点けた。そして、ラルフ、キングからもう大丈夫という合図をJは受けた。


動かない数人は、この状況をまとめるための犠牲となった。彼らがやられたことによって、それぞれの組織の若手が起こした問題は解決したと見なす、という結論に達したのだ。


キングたちブルーの連中は最後までこの状況を見届けるという役目を負ったものの、Jはこの場に残っている必要性が無くなり、なんとなく嫌な気もしたため、ラルフとキングに目で合図をしてからシビックに乗り込み車を走らせた。


動かず横たわるルービンたちを見た後でもあり、気分が晴れている訳はないのだが、事態がより悪い方向へ向かわなかったことへの安堵感はあった。そしてJのシビックが袋小路を出て走り始めたとほぼ同時に、サイレンをならしたパトカーの大群が袋小路へと突入していった。


網からはみ出た雑魚一匹は気にしないのか、シビックには目も留めず、袋小路へとパトカーは全車入っていったため、ここでもJとアーサーは「ミゼラブル」の道を進むことにはならなくて済んだようだ。これがさっき感じた「嫌な気」だったんだなとJは思った。

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