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裏通りの東大生  作者: Jzou
ウサギとカメ

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第四章:(6)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

「なぁ、大学ってのは楽しいのか?」


Jはエイミーのベッドで上半身を起こし、机の上に、そして部屋に転がっていた分厚い本たちを見ながら聞く。机の上には書きかけのレポートも見える。


「将来」なんて遠く霞むものが見たいほど暇でも無く、日々のギャンブルやレース、デートで十分間に合ってはいたが、大学への進学とその先を見据えるジャックや、やはり大学進学を考えているミッシェル、そして現在カレッジに通うエイミーなどを見ていて、Jも少しずつ来週よりも遠い時間について考えるようになっていた。


「何?突然」


ベッドから起き、素肌の上にシャツを羽織ながらエイミーが意外そうな声を出す。


「いや、そのままの意味だよ」


「う~ん、楽しいかと言えば楽しくないかな」

笑いながらエイミーが答える。


目の前の分厚い本を見ただけでその答えに納得がいく。この本1冊を読み終わるのにどれだけの時間がかかるのか、Jには想像もつかない。


「私が行くのはカレッジで、将来有望な一流大学の学生達とは全然違うけど、それでも色んな人はいるわ」


エイミーは机の上に置かれていたJのマルボロの箱に手を伸ばし、ベッドに戻るとJの口に一本咥えさせ、火をつける。Jがふかすと、エイミーはその煙草を持ち、今度は自分で吸い始めた。


「大学への転学を考えて真面目に出席してレポート出す人、目標のために必要な知識を学ぶ人、こういう人もいる一方で、親のお金で入学して、毎日パーティー三昧で大学には来ない人、単純に授業に付いてこれなくて遊びにだけ来るようになる人、色々ね。そしてそういう人たち向けに大学のレポートを売ってる業者があるんだけど、親のお金で遊びに来てるような学生はやっぱり買ってるわね」


需要があるところには供給がある。Jのようにギャンブルやレースで稼ぐ奴もいれば、危険は避けつつ稼ぎたい頭の良い奴などは、各種レポートを要望に応じて書いたり、色々なケースに対応可能な汎用性の高いレポートなどを商品として販売して稼いでいる。


「話は聞いたことあるけど、レポートなんかも買えるんだ」


「でも、Jは奴らみたいな道に入っちゃダメよ。まぁ、Jとは相当タイプが違うし、ならないとは思うけど」


エイミーはマルボロをもう一回ふかすとJを見た。もうこれ以上は吸えないのだろう。Jは人差し指と中指を出して、エイミーはその指にマルボロを置いた。


「私も相当不真面目に生きてるけど、目標に向かう訳でもなく、勉強する訳でもなく、ただ大学に在籍だけして、毎日出来ない人同士で集団で遊んで、レポートは買って提出って何のために生きてるのかなぁって思うの。遊ぶのは勿論楽しいけど、遊びの時間は必ず終わるしね。レポートくらいも出来ないで、その人の人生にその先は見通せないわ。格好良い男は自分の火の粉は自分で払うものだしね」


「エイミーは格好良いな」

普段見せないエイミーの一面にJは関心していた。


「それは褒めてる方?それとも皮肉の方?」


「圧倒的に褒めてる方」

エイミーが笑顔でJの頬にキスをする。



「そういや、週末エイミーのカレッジに行くよ」

煙草を消すために灰皿のある机に行こうとJはベッドから起き上がる。


「えっ、週末だと私いないよ」

シャツだけ羽織ったエイミーが机の上の本を整理しながら振り返った。


「エイミーとのデートならカレッジじゃない場所がいいかな」

Jが笑いながらエイミーに近付きキスをする。


「SATを受けないといけなくてね」


SATはアメリカ版のセンター試験のようなものだ。アメリカの大学やカレッジに進学するには受験しておく必要があり、明確な志望校や将来を見据えてはいなくても、アメリカの高校最終学年になると大半の学生は受験する。そしてSATは日本の大半の大学を受験するためにも必要となる。願書提出時に点数を添付し、その点数が足切りに使われる。そもそも大学に進学するのか、その大学はアメリカなのか日本なのか、今のJにはあまりにも未来のこと過ぎて何も決めていなかった。ただ、大学という選択肢を得るために受験だけはしようと思った。


SATは英語と数学の2教科からなる試験で、生徒の基礎学力を判別するための試験であり、その特徴は何度でも受験できることだ。そのため毎月のように受験する高校生も珍しくは無いが、Jにとっては今週末の試験が初めての受験となる。


「折角カレッジに来るんだし、私が案内するよ」

エイミーは既に笑顔でデート気分になっている。


「でも、試験の間暇だよ」


「大丈夫、カレッジでの時間の潰し方は慣れてるの」


Jの週末の予定は試験とデートで埋まった。

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