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裏通りの東大生  作者: Jzou
ウサギとカメ

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41/60

第四章:(5)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

「いやぁ~悪かったなJ、まぁその分の埋め合わせと言ってはなんだが、好きに食べて飲んでってくれよ」


ソファーに腰掛けたラルフがウィンストンを吸いながらJに言う。


結局警察に情報が抜けてしまったため、あの日の抗争は無くなり、ラルフたちも早々に避難していた。その情報を得ていなかったJたちは、警察が待ち構える場所へと向かうことになった。しかし、裏駐車場へと直接向かわなかったのはJの運の良さであり、あの時の判断は正解だった。


ラルフに連れられブラックの誰かの家に来た。


見たことのないメンバーの家のようで、紹介はされたが彼としてもラルフが連れて来た「誰か」程度であり、実際興味を持たれることはなかった。彼とは挨拶時以外一言も話すことはなく、もう名前も忘れている。


通されたのはその家のリビングで、男8人ほどに女が10人ほどいる。暗めの空間にビールの小瓶が適当にあり、スナックが少しある程度だ。好きに食べて飲んで、と言われてもチョイスそのものが少ない。ヒップホップが流れるのは良いが、パーティーなど大人数が好きでは無いJにとっては最初から心地良い空間ではなかった。

ソファーに座るラルフの両脇には派手な化粧と露出の多い服を着た女が座り、別のソファーに座るJにも女が配され、初対面で話もしないまま腕を組まれ足を指先で触られていた。


女性には奥手なキングとの付き合いの中で、こういう女たちが配されるような空間に遭遇する事が無いため、興味深い光景ではあった。視界の向こうでは、ベッドルームへと消えていくメンバーもいる。しかし、話すことも無い相手と何かをする気にはならない。


「結局抗争ってのはどうなったんだ?」

ミラーズライトを飲みながらJが聞く。


「警察の介入で双方共になんか戦意を削がれてな。今は休戦状態だよ」


ラルフは横にいるコロナを持つ女の手をその上から握り、女が飲んでいたコロナを飲みながら答える。


「4人も連れてきたんだろ?ホント悪かった」

ラルフの部下の男も続く。


「シビックに乗れる人数までがオレの最大だ。ま、そのうち1人はマイキーだけどな」


「じゃあ、4人じゃなくて3.5人ってところか」

ラルフが応じ、Jと笑いあった。


「ま、これでラルフからの要請には応えたぞ。ビールありがとう。オレは帰るさ」


ビールを飲み干すとボトルを置き席を立った。居心地の良くない場所に長居するほどJは人間が出来ていない。ラルフもそれを十分知っている。


「J、この埋め合わせは何かするさ。危ない連中からの取り立てとか・・・」

ラルフが言い終わらないうちに


「そういや、ゴールドのウィルだっけ?あの日オレから金を借りたやつ。あれから金が返って来てないな」

Jが思い出したように言った。


「それは面倒だな。ゴールドとまで抗争には入れないが、何か手を貸そうか?」


「いや、大丈夫だ。オレのせいでブラックとゴールドが抗争に入ったら、ラルフに一生分の貸しが出来る。自分で何とかするさ」


言い終わるとJはブラックの誰かの家を出た。



見知らぬ女に体中を触られた後だ、身体に妙な香水の匂いも付いているだろう。これでデートに向かえば、自ら疑われに行くようなものだ。デートよりはジャックと女論でも語りながら煙草をふかそうと思い、まだ23時だったのでジャックの家へと向かった。


ジャックの家へ行くと彼は「丁度夜食を作ろうと思ってたんだよ」と言いながら歓迎してくれる。それが本当かどうかは分からないが、嬉しい気遣いだった。


中華スープにニンニクのみじん切りを入れ、酒、醤油で味を付けた所に空芯菜を入れて、そのスープの中で茹でていく。しっかりと灰汁を取っておけば、青菜の臭みもなく美味しいスープが完成する。


この日の夜食は空芯菜のスープとジャックが得意とするザーサイと豚のそぼろご飯だ。そぼろご飯を箸で口に流し込み、そこにスープを一気に飲む。居心地の悪い飲みの後でもあり、Jはガツガツ食べた。


PCが置かれている机の方を見ると、「経営学」の分厚い本が見える。大学では経営学を専攻しようと言うジャックは、少しでも事前に知識を入れておきたいということだろう。


ジャックが見据える夢は遙か遠くでは無く、目に見える場所にある。将来の起業に向けて大学で経営学を専攻し、その大学での日々に備えて、こうして専門書も徐々に読み始めている。

霧で霞む見えない遠い未来ではなく、確実にそこに存在する掴むべき未来に向けて逆算して行動している。「日々の努力」には無縁のJには関心するばかりであった。Jの周囲には少ない、向かうべき将来が見えている人間の強さとでも言えるのかと思いながらJはスープを飲みながらその本を見ていた。

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