第三章:(8)
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この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。
「それで、その後ギャング君はどうなった?」
少し肌寒くなってきた季節を迎えても、Jは相変わらずテラス席でアイスモカを飲む。暖を取る代わりにマルボロにジッポを弾いて火を点けて煙を空へと吹き出した。
エイミーは首を振りながら
「ダメ、全然。『そいつは何者だ』『俺の組織の方がデカい』なんてことを言うばかり」
カフェラテを口にして続ける
「次はいついつ空けておけ、とかとにかく強引で困っちゃう」
「そうかー。そいつの組織・・・デカいのか。それは面倒だな」
Jはアイスモカを飲みながら、色々な想定を頭の中でしてみる。これもまたシミュレーションゲームのようなものだ。ただ今回の場合、相手の戦力が見えないのがこのゲームを難しくする。
「どうすれば良いかな?」
エイミーの問いに、
「どんな組織だって、一人のメンバーの色恋沙汰で組織は早々動かさないし、別の組織と対立もしたくないだろ。次にそいつに会う時にオレも付いて行ってちょっと遊んでみるさ」
「大丈夫?」
「何とかなるでしょ」
「それ、何とかなる方の『何とかなる』?」
エイミーは当然の疑問を口にするが、少し楽しそうなのはJの楽天的な態度が気持ちを楽にさせていたからだ。
「何ともならなかった時にどうしようかな、という『何とかなる』だよ」
エイミーを見ながらJが言うと「ダメじゃん」とは言いながらエイミーは笑い出し、結局2人で笑うだけで解決させるアイデアは出て来なかった。
エイミーを家に送り届けた後、Jはロサンゼルスの夜景が一望できるスポットに車を走らせた。夜景は綺麗だが、有名なスポットでは無く、常に夜景を独り占めできる場所であり、夜景を見るためでは無く、Jは一人で考えたい時ここに車を走らせる。
少し冷たい夜風を受けながら、Jはシビックに寄りかかりマルボロをふかす。相手がどこの組織に属し、どれほどのヤツか分からない以上、作戦の練りようも無いが、いかにして危険を回避するか、なりたくない自分、負け犬にならないようにするための手段を考えていた。
待ち合わせ場所を街外れのゲームセンターにしたのは、リチャードがよくここを使うからだ。
学校でキングを探したが、キングは数日前に
「やっぱり銃は大切だぞ。裏ルートの回すから持っておけ」
といつもの台詞を言いながら部下を集めて色々と準備をしていた。
相当危険な仕事をしなければいけないようで数人の部下を引き連れて銃も携行してサンフランシスコの方まで遠征に行くと言っていた。それが具体的にいつなのかは聞いていなかったが、その日以来キングが学校に現れることが無く、キングという最強のカードが使えない以上、リチャードには何も言ってないが「Just in case」の保険になってもらうつもりだった。
エイミーは言い寄る男をここに呼び出している。そこにJとエイミーがカップルとして登場し、話を付ける予定だ。喧嘩になった場合、Jはその方面に自信はないが、リチャード達がいれば何とかしてくれるだろうとの思惑があった。
駐車場の外れで待機しているとエイミーの黒のミニも駐車場に入ってきた。2人で来なかったのは、もしもの場合を想定してエイミーだけでも逃げられるように車は別々にした方が良いと考えたからだ。エイミーはシビックに気が付かずゲーセン近くに車を停めたのでJがそこまで歩いて行った。
「心の準備はOK?」
車から出てきたエイミーに声を掛ける。
「J、ありがとう。私一人なら平気だけど、Jがいると心強い反面、心配にもなるね」
エイミーは緊張気味だ。十中八九喧嘩となる現場に行くのだから無理も無い。
Jはエイミーの腰にそっと手を回す。するとエイミーも自然と寄り添う。カップルとして行く以上これくらいしないと逆に不自然だろう。
ゲーセンに入ると相変わらずリチャードは女連れだ。
「おっ、J、What’s up!彼女か?」
リチャードから話し掛けてきた。
「まぁ、そんなところだよ。こっちはエイミー。で、こいつはリチャード」
これで保険のほうは契約済みといったところだろう。リチャードの他に男が2人いるし、ある程度のケースまでは対応が出来そうだ。
「オレらはちょっと奥に行ってるよ」
Jは店の奥の方を顔で指し、エイミーと共に向かった。さすがに一緒に遊んでいる場合ではない。
店の奥の方は大型のゲームが多い。別に遊ぶために来たわけではなく、入り口近くのソーダや軽食が売っている売店の死角となるからだ。
「その相手はいるか?」
「今のところ見当たらない」
エイミーは左右を見渡すが、それらしい人物はいないらしい。
すると、店内に見覚えのある男が入ってきた。そして、その男も左右を見渡し、そして店の奥へと歩いてきた。J達の存在には気が付いていないようだ。そしてそのまま奥のコーナーへと足を踏み入れた時、
「あっ」
エイミーと共にルービンも同じように反応した。
ルービンの存在以上に、ルービンの反応にエイミーが混乱している。そして、ルービンの頭にも様々な状況が巡っているのが分かる。ルービンがエイミーに言い寄っている問題の男だった。
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