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裏通りの東大生  作者: Jzou
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35/60

第三章:(9)完

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

「よっ、ルービン、こないだはジョーダンに危険な目にあったな」


Jは先日の話を切り出すことでペースを掴んだ。


どうやらルービンは一人でゲーセンに来ているようだ。これで万が一何かが起こった時でも、Jにはリチャードや彼の組織であるブラウンのメンバーが加勢してくれるだろうから数的優位を作ることが出来た。ルービンが相手では問題は起こらないだろうとは思っているが、やはりリチャードたちの存在は大きな安心材料となった。


エイミーは何故Jがルービンを知っているのか分からず、驚きの表情のままJとルービンを交互に見ている。


ルービンの表情から諦めが見て取れる。


ブラックに属する以上、並の相手ならば自分の方が優位に話が進められるはずだ。しかし、組織には属していなくとも、先日ジョーダンに「Jの後ろはでかい」と言われ、ブラックの幹部ラルフの友人であり、レッドの連中との仲も見ているだけに、Jはルービンにとっては最悪の相手となった。それらの認めたくない現実の数々がルービンの記憶の中から引き出されているだろう。


リチャードたち含めて、店内の誰もが気にしない程に、3人の間には何の緊迫感も無い。その証拠に今この瞬間も3人の横を高校生と思われる男2人が笑顔で話しながら店の奥のコーナーへ向かうために通り過ぎていった。


「J、こんな所にも居るんだな。ゲームをしようと思ったけど、良いゲームが無いらしい」


ルービンはJとエイミーに軽く挨拶をするとそのままゲーセンを後にした。自分からは決して自分がエイミーに言い寄っていた素振りを見せないのがルービンのJに対する最後の抵抗だった。


言い寄っている相手が危険な人物でなくて本当に良かったとJは胸を撫で下ろした。Jとラルフとの関係もルービンは知っているだけに、この問題が妙に大きくなることも無いだろう。ラルフに一言連絡を入れておけばより万全となるが、恐らくルービンが組織の力を使う事はなく、隠すであろう恋の失敗を、Jからラルフに告げる必要も無い。



ゲーセンにはゲームをしに来た訳ではない以上、これ以上2人がここに居る理由はなく、Jは使う必要のなかったカードであるリチャードに挨拶をすると、エイミーと共に駐車場へと出て行った。


「あの・・・いまいち、いや全然状況が掴めないんだけど」


Jと腕を組みながらもエイミーが驚きの表情で聞いてくる。


「ちょっとだけ奴を知っててね。そして、ついでに奴が属する組織の幹部も友達だから、もうルービンがエイミーに言い寄ってくることは無いはずだぜ」

笑顔でエイミーに答える。


「Jの本当の顔ってまだまだ知らないんだね、私」


「ゲーム相手の手札が全部分かったらゲームにならないだろ」


Jが言うとエイミーは少し寂しそうな表情をする。それを見て、

「時間はあるんだし、これからゆっくりと知っていけば良いさ」Jは続ける。


「そうするね。本当にありがとう」


エイミーは心からホッとしているようだ。自分に降りかかった嵐が過ぎ去ったことも大きいが、それ以上に喧嘩となる事態を想定していたのに、何事も無く終わったことが彼女の緊張を解いていた。


Jに寄り添っていたエイミーは、スッとJの前へと移動しキスをする。今日の分の感謝でも、友達のでも無い事は経験上Jでも分かる。Jもこの時間に身を任せ、エイミーの背中に腕を回した。数分ほど二人の時間を楽しんでいたが、いつまでも駐車場にいても仕方が無い。


「ねえ、今夜は・・・」

甘い眼をしながらエイミーが言いかけるが、


「流石にお互い緊張で疲れただろ。夜は今夜だけじゃないよ」


もう一度キスをして、彼女を帰すためにミニへと向かった。名残惜しそうにエイミーは車に乗り込み、駐車場を後にする。そしてJもシビックに向かう。



「J、今の見てたよ」


シビックに寄りかかりミッシェルが立っている。


つい3分前まではヒーローだったのだが、今のJは完全に被告人となっている。


ミッシェルも友人とゲーセンに来ていたようだが、Jはリチャードやエイミーの相手を探すことばかりに集中し、店内にいる男にしか目線を移していなかった。一方のミッシェルは二人が入店したところから見ていた。


「Jが沢山デートしてるの知ってるけど、目の前であんなの見るとショックだよ」


ミッシェルの正論に対する反論をJは持ち合わせていない。ここでエイミーとの事情を説明しても、意味を成さないばかりか言い訳となるだけと判断した。


ヒーローから被告人に。ルービンがもたらした意図しない反撃は、結構強烈なようだ・・・

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