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裏通りの東大生  作者: Jzou
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33/58

第三章:(7)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

ギャンブルが無くなり、早めに時間が空いてしまったため、Jはボーリング場へと移動し、公衆電話からミッシェルに電話をした。


「今何してる?」


「あれ?Jこそ何してるの?なんだか後ろ騒がしいけど」


意外な時間の電話にミッシェルは驚きながらも、嬉しそうな声で話す。


「電話探してボーリング場に来ただけだよ。空いてたら今から会わない?」


「あ~残念、ベンに誘われて今からカフェに行くんだよね」

わざとらしい声を出してミッシェルはJを試す。


「そうか~、じゃぁまたの機会にするよ」


Jが電話を切ろうとすると、慌ててミッシェルが反応する。


「待って、待って、全然空いてるよ~」


「知ってる。ミッシェルの架空の彼はいつもベンだからな」

笑いながら答える。


電話を切る気なんてJには最初から無かった。


「も~!知っててわざと?」


怒った声を出しながらも用意をしている音が受話器越しに聞こえてくる。結局ボーリングを久し振りにやりたいというミッシェルの要望もあり、ボーリング場での待ち合わせとなった。


電話を切った後、ボーリング場内にある小さなゲームコーナーに向かう。数種類置いてあるレトロゲームでミッシェルが来るまでの時間を潰すためにパックマンを選んだ。


Jはパックマンが得意だ。これもまたシミュレーションゲームである。敵の動きをシミュレートし、それ以外のルートを常に正しく選択していかなければいけない。クリアを重ねていくと、敵の動きが早くなるが、それ以上のスピードで正しいルートを選択出来ていれば、難易度が上がっていくわけでははく、楽しいスリルが増していくだけだ。

そして、早いスピードのステージで遊んだ回数が多くなればなるほど、そのスピードに慣れていくため、最初のステージたちは軽々とクリア出来る。負荷が高い状況での高速シミュレートを行うゲーム、それがパックマンだろう。一度もゲームオーバーになることなく、かなりの時間が過ぎてしまい、そろそろミッシェルが着くころだろうと、近くに居た中学生か高校生かの若者に声をかけ、そのままゲームを譲った。


駐車場に出てマルボロに火を点けミッシェルを待っていると、程なくしてミッシェルの車が入って来た。Jを見付けて手を振りながら、空いているスペースに車を停める。Jもミッシェルの車に近付いていく。


「ハイ、J。待った?」


「パックマンがゲームオーバーにならない程度かな」


「それって長いの?短いの?」

Jがパックマンを得意とするのはミッシェルも知っているので、笑いながら反応する。


「まあ、待ちくたびれては無いということ」


2人は軽くキスをして一緒にボーリング場へと入っていく。ゲームコーナーでは先程パックマンを譲った若者は既に違うゲームをしているので、早々にゲームオーバーになったようだ。



2人ともボーリングは久し振りであり、100点台前半という低いスコアを争いながら2ゲーム行った。1勝1敗だが、勝負がしたい訳ではなく、2人の時間を楽しんだだけで互いに十分満足だった。


「もう腕取れそう」


久し振りのボーリング2ゲームは確かに腕に来る。駐車場に出ると腕を振りつつミッシェルはJと腕を組んで肩にもたれる。そのまま2人でミッシェルの車まで歩いて車に乗った。


先程までボーリング場内の騒音の中に長く居たため、車の中は無音の空間のように感じる。ミッシェルが車のエンジンをかけるとカーラジオが流れる。ミッシェルが少しボリュームを絞ったポップスステーションからはシールの「Kiss from a Roses」が流れる。


「ボーリング楽しかったね」ミッシェルが笑顔で話す。


「あぁ、楽しかったね。1勝1敗だから、また来て決着付けないとね」Jが返すと、


「また2人で来るために1勝1敗で止めたんだね」


楽しそうに話すミッシェルだが、2ゲームで打ち止めた理由は腕が疲れたからだ。それは彼女も同じだと思うが、ミッシェルはJのことを良い方に勘違いしてくれることが多い。折角ならその勘違いに乗ろうと考え、Jは話題を変える。


「そういや、どうしていつも架空の彼の名前はベンなんだ?あれだけ続けられたらバレるぜ」


「とっさに出す名前だからかな。ファーストキスの相手の名前。今度は架空の話じゃないよ」


少しだけ沈黙が出来た。


Jとしても反応のしようが無い話で、会話に間が出来た。


「ヤキモチ・・・焼いた?」

運転席に座るミッシェルがハンドルに手を置きながらJの顔を覗き込む。


「いや、別に」


「なんだ、つまんない」

不服そうに少し口を尖らせる。


「今の可愛いミッシェルを失った奴の話だろ?ヤキモチ焼く必要は無いさ。今のミッシェルが横にいるんだから、オレにはそれが全てさ」


ボーリング場のネオンが照らす暗い車内で二人はキスを交わした。

カーラジオからはグロリア・エステファンの「Don’t Wanna Lose You」が流れている。

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