第三章:(4)
沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。
この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。
翌日の放課後、Jは珍しく家に居た。シミュレーションゲームでもして遊ぼうと思っていたらケイトから電話があり、会いたいということだった。
デートの誘いかな、と多少の期待も込めつつシビックはケイトの家に向かう。大音量のヒップホップと共に住宅街を進むと、ケイトもまたミッシェル同様に、着く前に家から出て来た。
「よっ、J」
軽く挨拶をしながらバックパックを背負ったケイトが助手席に乗り込む。Jがラジオの音量を絞ると、ケイトはステーションをポップスステーションへと変える。そして彼女を乗せて街のカフェへと向かうことにした。
「ねぇ、今度の微積のテストなんだけど・・・」
車を走らせると早速ケイトが呼び出した理由を告げる。
「お前はブルータスか!」
期待を見事に裏切られJは答えるが、
「えっ?」
とケイトはキョトンとしている。
「お前もか!って意味だよ」
ラジオから流れるUB40の「Can’t Help Falling in Love」のリズムに合わせて頭を軽く振りながらJは笑いながら運転する。
カフェのテラス席は、冷えてきた夕方の秋空の中でも賑わっていた。
相変わらず客層はギャング連中が主体であり、ガラも飛び交う会話もしっかりと悪いが、それでも皆楽しむためにカフェに来ているため、一般市民がテラス席に交じっていても、そこでいざこざが起こることはなく、住み分けが出来ている。Jとケイトはカフェタイムではなく、勉強が目的となるのでテラス席ではなく、店内で教えることにした。
ケイトもまた微分積分学の授業を履修しているが、Jとは異なりミッシェルと同じ時限の授業を受けている。ミッシェルやジャック同様の教え方で30分程教えたが、まだ十分理解していないとJは思っていた。しかし、ケイトは早々に教科書やノートをバックパックにしまい、そこからは世間話へと移った。「大丈夫か?」と聞いたが、本人が大丈夫と言う以上本日の授業はここまでだ。
しばらくしてケイトがトイレの為に席を立つと、
「J。デート?」
後ろから近付いてきたエイミーがそっとJの耳元で囁く。
「おっ、ビックリした」慌てて振り返るJに、
「大丈夫、邪魔する程野暮じゃないから」
ウィンクをしてそっとレジの列に並ぼうとする。そのエイミーの手を取って
「デートなら嬉しいんだけど、ブルータスへの教育的指導だな」
とJが言うと
「えっ?何のこと?」
当然のことながらエイミーはキョトンとするが、同時に
「また連絡するね?ちょっと相談に乗ってもらいたいから」
と言いJの頬に軽くキスをしたら、髪をかき上げて他人の顔となり、レジの列に並んだ。
「どうしたの?微妙な顔して」
丁度席に戻ってきたケイトに言われたが、Jは「別に」と首を傾げながらキスをされた左頬を隠すように頬杖をついた。ケイト越しに並んでいるエイミーを軽く見ると、悪戯っぽい表情を一瞬して、そのままレジで注文をする。
エイミーが絶妙なタイミングで列に並んだため、ケイトが気付くことはなく、その後も2人の世間話は盛り上がった。
後日返された微積のテストは、Jは100点でありジャックも80点台後半と満足の行く結果だった。
「良い点数が取れたよ、J」
笑顔で言うジャックに
「じゃあ報酬はデニーズで」とJが返すと「OK」とジャックは笑顔で応じる。
微積の授業が終わり、この日はジャックと寝過ごすことなく教室を出て、Jとジャックは笑いながら廊下を歩いていた。そこに他の教室から出て来たケイトが合流する。
「ねえ、教え方が悪かったんじゃない?」
口を尖らせながらケイトが文句を言う。
ケイトの微積の点数は70点台前半と不本意な結果だったようだ。
「じゃあ、ミッシェルは何点だった?」Jが聞くと、
「90点」
それを聞いたジャックが
「じゃあ、教わり方が悪かったんじゃない?」
笑いながらケイトをからかう。
「同じ人に教わって、ジャックも80点超えたぜ。自分で大丈夫って言ってコーヒー楽しんでたんだろ」
Jが言うと益々ケイトは口を尖らせた。
その後、ジャックはアニーと合流するために駐車場とは異なる方向へと向かうために別れ、Jとケイトは2人で駐車場へと向かった。
「あーぁ、ビリヤードでは格好良かったんだけどなー」
「なら、勉強でまで格好良かったら惚れちゃうだろ」
Jは笑いながら軽口を叩いてみる。
そして二人はケイトの車までやってきた。
「確かに、危ない、危ない」
ケイトも笑って見せる。白のターセルの後部座席のドアを開けバックパックを投げ入れたら
「でも、ありがとね」
Jの頬に軽くキスをしてサッと車に乗り込む。窓を開けたケイトが「じゃあね」と手を振りながら車を走らせる。
「さーて、明日の天気を皆に伝えないとかな」
手を振りながらケイトを見送り、Jもまた赤いシビックに乗り込んだ。
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