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裏通りの東大生  作者: Jzou
ゲームから学ぶ

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第二章:(9)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

「よし、いいか。ゴールはPCHとローズクラウン通りの向こうにあるゴルフ場の駐車場。フリーウェイを使う、使わないは自由だ」


主催の男が話す、ゴール地点からは30キロ程離れているロサンゼルス南部にあるパロスバルデス半島の先の公園には、スピードが出そうな改造車が10台ほど集まっている。車だけ見ればJのシビックが一番地味だろう。しかし、このレースの勝敗を分けるのはスピードではない。


レースは「キャノンボール」と呼ばれる、A地点からゴールのB地点まで最も早くゴールに着いたものが勝者となる単純なもの。日中の公道を使ったレースとなるため、敵は参加者だけではなく、邪魔となる一般の車、捕まえようとする警察、守るも守らないも自由だが、交通法規や信号など障害だらけだ。しかも、あえて夕方近くの徐々に交通量が増えた中でのスタート、Jはワクワクしていた。


このキャノンボールは、ギャンブルとはまた違うJの小遣いの資金源となる。定期的に参加してはなかなかの戦績を残している。この日も学校が終わると友人らと別れ、キャノンボールに参加するべく一人パロスバルデス半島まで車を走らせた。


「J、こないだの借りはきっちり返すからな」


黄色のポルシェに乗ったメキシコ人が指を向けて挑発する。積んでいるエンジンが違い過ぎてゼロヨンでは勝ち目が無いが、このキャノンボールならJは負ける気がしない。


他の奴等からもJは注目されている。車の価格と改造費の合計で、圧倒的に劣るJのシビックに改造高級車が負けるのだから、悔しくなるのは当然だろう。完全なる包囲網の中、レースはスタートする。



全車爆音を上げながら駐車場を出ていく。


スタート地点からの攻略法は、半島を半周する形で高低差なく行くか、一端半島の山を登り、そこからダウンタウン方面へと下っていくパロスバルデス半島の中央を行くかという2つのルートとなる。


シビックを含めた8台ほどが登りを選んだ。この道はロサンゼルスでも有数の大通りへと繋がる道であり、車線数が多いこと、道が広いことが選ばれる理由だ。一方の迂回ルートには3台が進んだが、信号がない海沿いの道も、途中1車線になり、さらに夕方には渋滞となる。この時点であの3台が敵となる可能性は無いだろう。


急勾配な上に左右に曲がる登りを一気に8台の車が駆け上る。2車線あるが、一般車を含めると十分なスペースではない。Jはベタ踏みにする。大きなエンジン音と共に回転数がどんどん上がるが、やはりポルシェなどの敵ではなく、奴らの車は軽々と山道を進んでいく。


太平洋と傾き始めた太陽を背に受けて色とりどりの暴走車がスピードを増して行く中、シビックは最後方から追いかけている。


キャノンボールの面白い所は信号があるところだ。この信号を無視しても良いのだが、狭い2車線の道で一般車が両方の車線に停まっていれば、当然停まるしか選択肢はない。


山道を登りきったあたりの信号で、案の定全車が信号待ちをしている。あのままレースが続いていれば勝負にならないが、これで一気に追いついた。


追う者よりも追われる者の方が、プレッシャーが大きいのは世の常だ。あれだけ圧倒していたシビックが信号待ちの間に後ろに付いているのだから気分は良くないだろう。信号待ちの間もアクセルを吹かす爆音が各車から響いてくる。


青へと変わると同時に少しでも早い一般車の後ろに各車次々と付き、そこから車体を左右に振りつつ追い抜きをかけていく。


しかし、どうせまた信号はある。つまり勝負のポイントはこの狭い2車線の道ではない。Jは最後方から遅れない程度に付いて行く。ヒップホップステーションを聴く余裕がまだある。


「See you at the Crossroads~♪」


Bone Thugs N Harmonyの「The Crossroads」を口ずさみながらハンドルを左右に切る。お気に入りの曲に合わせて頭を振りながら7位の車の後を追う。


半島の中央を行く道の最高地点を過ぎれば、そこからは下り坂となり、全車一気に加速する。このあたりは信号もほぼ無く、120キロ、150キロとシビックのメーターも上がっていくが、道が微妙にカーブするポイントもあり、純粋にベタ踏みすれば良い訳ではない。こういったレースをしていて、山道を転落していく車の話は後を絶たないが、この8台はそんなミスを犯すことなく、200キロには届かない範囲で車をコントロールして半島の山を下っていく。


やがて道が住宅街近くに差し掛かり、信号も交通量も増え、再び法定速度近くでの争いとなる。そしてアメリカ西海岸をカナダとの国境近くのシアトルから、メキシコとの国境近くのサンディエゴまで南北に3州を縦断する主要街道PCH(パシフィック・コースト・ハイウェイの略)と交差する。このあたりで半島が終わり、このPCHを左に曲がってそのまま行けばゴールだ。それも選択肢の一つとなるが、Jはこの道を直進する。


メリットはこのホーソン通りは車線数が4車線に増えることだが、デメリットは渋滞の発生率が高いことと、信号の数が多いことだ。しかし、PCHも車線数は2から3程度であり、西海岸を縦断する大通りのため観光客などの車もあり、必ずしも早く進める道ではない。自分の追い抜き技術に自信のあるJにとっては迷わず直進となる。ここからがレースの本番と言って良い。

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