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裏通りの東大生  作者: Jzou
なりたくない自分にならない

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11/61

第一章:(10)

沢山の作品の中からこの作品をご覧頂き、ありがとうございます。


この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。

Jの手札はアップの7にホールドのQ、これまでのケースならスタンド確定の数字だ。一方のパットのアップの手札はA、しかし宣言しないところを見るとブラックジャックではない。それに悩む素振りを見せないのは少なくとも17以上ではあるということだろう。


「ヒット」


Jが言う。同じように躊躇はない。


それまでのパットの行動を見ていれば、このケースでのパットの手札も容易に想像が出来る。これまでの「スタンド」と同じスピードでヒットした。


出てきた数字は4。


出来すぎのようだが、ここが勝負時であることをギャンブラーとしての勘で分かった。そして、ヒットしてもバストしないことも何故か読めていた。


パットはそれまでのケースを分析出来る頭脳を持っている。Jが二桁の前半からヒットして4を出しても勝てると思っている。


「スタンド。21だ」


パットの目を見ながらJはカードを開いた。


たった20ドルが帰ってきたに過ぎない。しかし、それ以上の意味を持っていることをJは分かっているし、横で饅頭を食べながら見ているキングも理解しているようだ。


「どうしたパット。顔が焦ってるぞ」


Jがグラスのジャック・ダニエルを一気に飲みながら言う。挑発の口調ではない。淡々と言う方が効果的だ。キングも勝負の潮目が変わったことが分かっているため、楽しそうに笑いながらJのグラスにジャック・ダニエルを注ぐ。


「そんなことねぇよ。ちょっと勝っただけじゃねぇか」

パットの声に力が無い。


この勝負が流れを変える可能性があることをパットも感じるらしい。その流れに抗う術を持っているか、Jは心の内で楽しみにしていた。



「ヒット」

アップ6、ホールド5からのヒットが4。まだ15だがここで様子見をするためにスタンドする。

パットは案の定16からのヒットでKを引きバストした。パットが持ってるデータが逆にパット自身をどんどん追い込んでいた。


その後の勝負は圧倒的だった。ほぼ最初の規則通りにヒットとスタンドを繰り返すのだが、その合間に入れるアクセントによって、パットの読みは混乱し、バスト率が高くなっていく。

Jは相手の手など殆ど読まず、マルボロとジャック・ダニエル片手に無表情で進めていくが、パットは負けていく中での焦りと、必要以上にJの手札を読もうとし、体力を消耗していった。


流れに抗う術をパットは持っていなかったようだ。



「ブラックジャック」


この日初めてのブラックジャックに、心の中ではJも喜んでいた。やはりこのゲームをやる以上、出て欲しい役ではある。しかし、それを表情に見せるようでは勝負に勝てない。心とは裏腹に淡々とカードを開く。


「・・・・」パットからは言葉も出てこない。


一度勝負の流れが傾けば、それを取り戻すことは至難の業だ。既に彼の目に力は無く、負けを重ねていくだけになっていた。


キングが中心に飲んでいたジャック・ダニエルは、最後の一杯をキングが自分のグラスに注いだ。終わるには良いタイミングだった。


「勝負は付いたな、パット」


Jはパットが置いた40ドルを取ると立ち上がった。キングの肩を軽く叩き、部屋を出ようとするが、パットの部下やスティーブがJの前に立つ。


しかし、ギャンブルとしての勝負がついており、キングの部下も即座に反応する中、明確な意思を持って立ち塞がった訳では無いパットの部下は簡単に引き下がった。椅子に座ったパットも、横に立つミックも、軽く首を振り、部下を制している。

Jだけなら良いが、キングがいる以上、何かあればブルーに対して喧嘩を売ることになり、それだけは避けなければいけないことはパットもミックも十分に分かっている。


Jは戻ってきた600ドルとギャンブルで勝った260ドルをジーンズのポケットに押し込み、キングたちとは駐車場で別れた。キングは部下たちと一杯やりに行くらしい。マイキーも以前勝っていた金が入り、上機嫌で駐車場を後にした。

シビックに乗り込んだJはラジオの音を絞った。やはり真剣勝負の後で、多少疲れていた。車は自然と「本妻」の元へと向かった。



12時を超えていたが、この時間なら普段からJとジャックが遊んでいる時間であり、いつも通りジャックはJを迎える。


「キングは?一緒だったんじゃないの?」


玄関の枠に腕をもたれさせながらJは


「キングは部下とハリウッドにストリップ見に行くんだとさ。それより腹減ってないか?今日はちょっと金持ちだから行こうぜ」


と首を外に向かって傾けジャックを誘う。


「オーケー、丁度お腹も空き始めてたからね」


ジャケットを羽織ながら笑顔で立ち上がる。

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