六十一話 サウナの建設と副産物
ある日の午後。
ミリナと桶さんは、サウナー計画室へ呼び出されていた。
「来ましたよー」
部屋へ入る。
そこには。
ルーナ。
バルミナ。
ゴルド。
お馴染みの三人が待っていた。
「よし」
ルーナが立ち上がる。
「ついにです」
「何がだ?」
桶さんが聞く。
「サウナです!」
即答だった。
「温泉棟の完成が見えてきたからな」
ゴルドが図面を広げる。
「次は露天側だ」
机の上には、露天風呂周辺の図面。
そして、サウナ予定地。
「まず決めなきゃいけないことがある」
バルミナが言った。
「男女別にするか」
「男女混合にするか」
その瞬間。
「別々がいいです!」
ミリナが即答した。
「早いですね」
ルーナが笑う。
「だって!」
「知らない男性と一緒に入るんですよ!?」
ミリナは真っ赤だった。
「でも温泉じゃないですよ?」
ルーナが言う。
「サウナです」
「同じです!」
ミリナは譲らない。
(珍しく強気だな)
桶さんは少し感心した。
すると。
ルーナが何か思いついたように手を叩く。
「だったら専用の服を作ればいいんですよ!」
「服?」
ゴルドが首を傾げる。
「サウナ専用湯浴みです!」
「サウナに入る時だけ着る服ですね」
「小さい更衣室を作って」
「そこで着替えてもらうんです」
部屋が静かになる。
「……ほぉ」
最初に反応したのはバルミナだった。
「それは面白いねぇ」
「ですよね!?」
ルーナの目が輝く。
「自分で刺繍してもいいですし!」
「限定柄もできます!」
「熱波師モデルとか!」
「それは売れる」
バルミナが真顔で頷いた。
(もう商売の話になってる……)
桶さんは呆れた。
「更衣室くらいなら簡単に作れるぞ」
ゴルドも頷く。
「場所もそんなに取らねぇ」
すると。
バルミナが腕を組んだ。
「だったら大サウナは混合でいいんじゃないかい?」
「えっ!?」
ミリナが固まる。
「専用湯浴み着用なら問題ないだろう?」
「うぅ……」
ミリナが悩む。
「でも嫌な人もいますよ?」
「それも考えてるよ」
バルミナが笑った。
「貸切サウナを別で作ればいい」
「貸切?」
「家族」
「夫婦」
「仲間同士」
「貴族様」
「少し高めに設定する」
「なるほど……」
ミリナも少し納得した。
「どうしても嫌な人は貸切」
「普通の人は大サウナ」
「これなら両方対応できるねぇ」
バルミナが満足そうに頷く。
「じゃあ決まりですね!」
ルーナが嬉しそうに言った。
だが。
話はまだ終わらない。
「あとですね」
「熱波サービスなんですけど」
嫌な予感がした。
「貸切熱波」
「特別熱波」
「指名熱波」
「待て待て待て」
ゴルドが止める。
「まだサウナも出来てねぇだろ」
「大丈夫です」
ルーナは自信満々だった。
「需要あります」
「どこからその自信が来るんだい……」
バルミナが苦笑する。
だが。
否定はしなかった。
むしろ。
少し楽しそうだった。
(なんかサウナだけで商売一個できそうだな……)
桶さんは遠い目になる。
こうして。
湯けむり亭最後の大型工事。
サウナ建設が正式に始まることになった。
そして。
サウナ専用湯浴み。
貸切サウナ。
熱波サービス。
またしても。
ルーナとバルミナによって。
新しい商売の種が生まれようとしていた。




