五十七話 サウナー計画の全貌
翌日。
ミリナは朝から頭を抱えていた。
「説明してください」
目の前には、ルーナ、バルミナ、ゴルドの三人が並んでいる。
「何をだい?」
バルミナがしれっと答える。
「サウナー計画です!」
ミリナが机を叩いた。
昨日見つけた、サウナー計画室。
意味不明な資料の山。
そして、巨大サウナ棟。
どう考えても放置してはいけない。
(全面的に同意だ)
桶さんも頷く。
「実はねぇ」
バルミナが話し始めた。
木漏れ日温泉郷へ向かっていた一ヶ月。
その間、サウナーは順調に増えていたらしい。
「毎日のように川沿いのサウナ小屋使ってたもんな」
ゴルドが笑う。
「エナちゃん達からも報告受けてました」
ミリナが呆れた顔をする。
実際、エナ、ミア、ドロシィの三人からは、
『ルーナさん達がまた何かしてます』
という報告が定期的に届いていた。
(また何かしてるで済ませるな)
桶さんは呆れる。
だが、話を聞く限り、悪いことばかりではなかった。
休業中、三人は朝露の家へも通っていた。
掃除。
修理。
買い出し。
子供達の面倒。
出来る範囲で恩返しを続けていたらしい。
「すっかり人気者ですよ」
ミアが笑う。
「お兄ちゃんお姉ちゃん扱いされてます」
ドロシィも頷いた。
「で?」
シャルネが聞く。
「サウナー計画って何なんだ?」
そこで、ルーナの目が輝いた。
「まずですね」
「個人サウナです!」
(嫌な予感)
桶さんは思った。
話を聞く。
きっかけはリリィパパだった。
サウナにハマった結果、
『家にも欲しい』
と言い出したらしい。
そこから、仲の良い貴族。
さらにその知人。
さらにその知人。
気付けば、個人サウナブームが始まっていた。
「今十五件です」
「増えてます」
ルーナが真顔で言う。
(増えすぎだろ)
「設計は俺」
「施工は俺のチーム」
ゴルドが胸を張る。
「相談と営業は私達だねぇ」
バルミナも笑った。
さらに。
「湯けむり亭とは別料金です」
「私とバルミナさんでやります」
ルーナが説明する。
「一応ちゃんと利益も出てます」
(事業になってる……)
桶さんは呆然とした。
そして、川沿いのサウナ小屋。
こちらも大人気だった。
毎日利用者が来る。
純粋なサウナ好き。
職人達。
冒険者達。
だが、それだけではない。
「ルーナ目当てが多いねぇ」
バルミナが笑った。
「え?」
ミリナが固まる。
「熱波師ルーナ様」
「とか呼ばれてる」
シャルネが真顔で言う。
「なんですかそれ!?」
どうやら、以前のように口説いてくる者はいない。
だが、代わりに。
憧れ。
尊敬。
人気。
そういう方向へ進化していた。
「貴族にもファンがいるらしいよ」
バルミナが言う。
「やめてください!」
ルーナは真っ赤だった。
一方、バルミナにも固定客がいた。
ドワーフ達である。
「バルミナさんの熱波は分かってる」
「玄人向けだ」
「最高だ」
そんな評価らしい。
(何だよ玄人向け熱波って)
桶さんには理解できなかった。
そして最後。
ルーナがさらっと言った。
「熱波師育成も始めようと思ってます」
静まる。
(は?)
「いやぁ」
「人手足りなくなるからねぇ」
「将来的には熱波師チームです」
(やめろ)
桶さんは思った。
サウナを教えたのは自分だ。
だが。
ここまでになるとは。
さすがに予想していなかった。
どうやら。
湯けむり亭の改築が終わる頃には。
もっと大変なことになっていそうだった。




