四十八話 特産品作り③ 美容品作りと驚きの効果
柏の湯の一家が帰った後。
白樺の湯では次の開発が始まろうとしていた。
「その前に」
ミリナが口を開く。
「コトネさん」
「お話しておきたいことがあります」
コトネは首を傾げた。
「なんでしょう?」
ミリナは少し迷った。
だが。
ここまで一緒に動いてくれている。
隠す理由ももうない。
「実はですね」
「桶さんって……」
説明が始まる。
念話のこと。
温泉の力のこと。
今までのこと。
そして。
『よろしく』
初めて。
桶さんがコトネへ念話を送った。
コトネは固まった。
「…………」
数秒後。
「やっぱりですか」
予想外の返事だった。
「え?」
ミリナが驚く。
「なんとなくそんな気はしていました」
「普通の桶じゃありませんよね」
シャルネが吹き出した。
「気付いてたのか」
「少しだけです」
コトネは苦笑する。
「でも本当に話すとは思いませんでした」
(まぁ普通はそうだよな)
こうして。
コトネも正式に仲間へ加わった。
そして。
いよいよ美容品開発が始まる。
まずは石鹸。
こちらは思ったより順調だった。
桶さんの知識。
リリィの持ってきた材料。
コトネ達の協力。
その結果。
「できました!」
ミリナが嬉しそうに声を上げる。
淡い蜂蜜色の石鹸。
香りも良い。
「おぉ……」
リリィが感動している。
だが。
本当に苦戦したのはその後だった。
蜂蜜クリーム。
「固まりません!」
ミリナが叫ぶ。
「分離したな」
シャルネが冷静に言う。
「また失敗です……」
机の上には失敗作が並んでいた。
すると。
「これ」
リリィが手を上げた。
「似たようなものを見たことがあります」
「本当ですか?」
「貴族向けの化粧品です」
そこから。
リリィも開発へ参加した。
桶さんの知識。
リリィの経験。
そして。
何度目かの挑戦。
「できました……!」
ついに完成する。
柔らかい蜂蜜クリーム。
見た目も綺麗だった。
その日の夜。
女湯。
ミリナ。
シャルネ。
リリィ。
コトネ。
四人で試すことになった。
まずは石鹸。
体を洗う。
「わぁ……」
ミリナが声を漏らす。
「いい匂いです」
蜂蜜の優しい香り。
洗い流した後も心地良い。
「……なんだこれ」
シャルネが呟く。
「どうしました?」
「肌が変だ」
「変?」
「ツルツルする」
リリィとコトネも腕を触る。
「あっ」
「本当です!」
「すごいですね……」
全員驚いていた。
さらに。
湯上がり。
完成したクリームを塗る。
「……」
「……」
「……」
誰も喋らない。
ただ塗っている。
そして。
「いいです」
コトネが真顔で言った。
「これいいです」
全員頷いた。
翌朝。
ミリナが朝食を食べていると。
ばんっ!
勢いよく扉が開いた。
「ミリナさん!!」
コトネだった。
「ど、どうしたんですか!?」
「見てください!!」
顔をぐいっと近づける。
「え?」
ミリナはよく分からなかった。
そこへ。
シャルネもやってくる。
「……」
しばらく見た後。
「すごいな」
「ですよね!?」
二人だけ盛り上がる。
ミリナとリリィは置いてけぼりだった。
「何がですか?」
「分かりません!」
すると。
コトネが力説する。
「肌です!」
「肌!」
「昨日と全然違います!」
シャルネも頷く。
「確かに違う」
「若い子には分からないだろうな」
「えぇ!?」
ミリナがショックを受けた。
リリィも不満そうだった。
「私だって分かりたいです!」
その様子を見ながら。
桶さんは一人思う。
(おぉ……)
(女って怖いな)
こうして。
木漏れ日温泉郷の新たな特産品。
蜂蜜石鹸と蜂蜜クリームは。
大成功を収めたのだった。




