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転生したら桶でした  作者: 玉葱将軍


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第四十二話 木漏れ日温泉郷の現状


 白樺の湯へ到着したミリナ達。


 まずは館内を案内してもらうことになった。


「こちらが受付です」


 コトネが説明する。


「わぁ……」


 ミリナは素直に感心した。


 受付は綺麗に整えられている。


 埃もない。


 従業員の対応も丁寧だ。


 お客様へ向ける笑顔も自然。


 少なくとも。


 接客に問題があるようには見えなかった。


 続いて客室。


「こちらになります」


 部屋も綺麗だった。


 掃除も行き届いている。


 寝具も清潔。


 古さはある。


 だが。


 それは味にも見えた。


(悪くないな)


 桶さんも素直にそう思う。


 お土産屋も見せてもらった。


 ただ。


 こちらはかなり小規模だった。


「温泉郷の方に専門のお店がありますので」


 コトネが説明する。


 品数も少ない。


 最低限という感じだった。


 それでも。


 ここまで見た限りでは。


 普通に良い宿だった。


 値段も高くない。


 希望があれば食事も付けられる。


 建物の雰囲気だけなら。


 正直。


 湯けむり亭より高級感がある。


(となると)


(原因は風呂か?)


 桶さんはそう考えた。


 そして。


「まずは旅の疲れを取ってください」


 コトネの案内で。


 ミリナとシャルネは女湯へ向かった。


 脱衣所へ入る。


「広いですねー」


 ミリナが驚く。


 棚も多い。


 掃除も行き届いている。


 服を脱ぎながら。


 ミリナが首を傾げた。


「良い宿じゃないですか?」


「何が悪いんでしょうね?」


 シャルネも腕を組む。


「私もそれ思ってた」


「なんでこんなに印象に残ってないんだろうな」


「不思議だ」


 二人は浴場へ入る。


「わぁ……!」


 ミリナが思わず声を上げた。


 洗い場は広い。


 清潔感もある。


 浴槽は二つ。


 広めの適温風呂。


 少し熱めの風呂。


 さらに。


 薬湯も週替わりで二種類用意しているらしい。


 雰囲気も良い。


 正直。


 かなり頑張っている。


「すごいですねー!」


 ミリナは感心しながら桶さんへお湯を汲む。


 いつものように。


 かけ湯をしようと思ったのだ。


 桶さんの中へ。


 お湯が入る。


 その瞬間。


(……ん?)


 桶さんは違和感を覚えた。


 そして。


 ミリナも。


 自分へかけ湯をした瞬間に気付いた。


「……あれ?」


 思わず呟く。


『桶さん』


『なんだか変です』


『ですよね?』


 桶さんは答える。


『あぁ』


『ミリナも気付いたか』


 はっきりとは言えない。


 だが。


 いつもと違う。


 桶さんを通した湯なのに。


 疲れがあまり抜けない。


 というより。


 効果そのものが薄い。


 そんな感覚だった。


『シャルネも試してみろ』


「ん?」


 シャルネも桶さんからかけ湯を受ける。


 そして。


「……あ」


 すぐに気付いた。


「確かに」


「全然違うな」


「湯けむり亭の時とは大違いだ」


 桶さんは静かに説明する。


『温泉ではある』


『ただかなり薄い』


『足し湯してるな』


「足し湯?」


 シャルネが首を傾げる。


 代わりにミリナが説明した。


「源泉の量が少ない時にですね」


「水を足して浴槽へ入れるんです」


「湯量を増やすためですね」


「湯けむり亭は源泉が豊富なのでやったことありませんけど」


「なるほどな」


 シャルネも納得する。


 桶さんはさらに続ける。


『問題は』


『かなり薄めてることだ』


『だから温泉の力も弱くなってる』


 ミリナとシャルネは顔を見合わせた。


 そして。


 しばらく風呂を楽しんだ後。


 コトネの元へ向かった。


「コトネさん」


「ひとつ聞いてもいいですか?」


 ミリナの言葉に。


 コトネは少しだけ表情を曇らせた。


「……気付きましたか」


 その反応だけで。


 答えは十分だった。


 コトネは小さく息を吐く。


「白樺の湯だけではありません」


「この温泉郷には他にも二つ宿があります」


「松の湯と柏の湯です」


「ですが……」


 コトネの表情が曇る。


「どちらも似たような状況です」


「源泉の量が年々減っていて」


「水を足さないと営業できません」


「温泉の質も昔に比べるとかなり落ちています」


 ミリナは黙って話を聞いていた。


 シャルネも腕を組む。


「つまり」


「白樺の湯だけの問題じゃないってことか」


「はい」


「木漏れ日温泉郷全体の問題なんです」


 コトネは静かに頷いた。


 桶さんはその話を聞きながら考える。


(なるほどな……)


(温泉街って名乗ってるのに)


(温泉そのものが弱ってるのか)


(そりゃ客も離れるわけだ)


 建物は良い。


 接客も良い。


 雰囲気も悪くない。


 だが。


 肝心の温泉が弱っている。


 それは温泉宿にとって致命的だった。


(これは確かに問題だな……)


 桶さんは静かに呟いた。

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