第四十一話 木漏れ日温泉郷
三日目の昼過ぎ。
ミリナ達は目的地へ到着した。
「わぁ……」
ミリナは思わず声を漏らした。
木々に囲まれた小さな温泉街。
石畳の道。
木造の建物。
森の隙間から差し込む木漏れ日が石畳を照らしている。
どこか懐かしくて。
優しい雰囲気だった。
「良いところですねー……」
ミリナが感心したように呟く。
桶さんも周囲を見回した。
(おぉ……)
(これは雰囲気あるな)
(温泉好きにはたまらんやつだ)
川のせせらぎ。
風に揺れる木々。
温泉の香り。
景色だけなら。
かなり好みだった。
しかし。
少し進んだところで。
桶さんは違和感に気付く。
(……ん?)
人が少ない。
昼時だというのに。
通りを歩いている人がほとんどいない。
店も同じだった。
開いている店より。
閉まっている店の方が多い。
看板はある。
建物もある。
だが。
人の気配が少ない。
「……」
シャルネも周囲を見回していた。
「どうしたんですか?」
ミリナが聞く。
「いや」
シャルネは少し眉をひそめた。
「私、一回ここ来たことあるんだよ」
「そうなんですか?」
「仕事でね」
そして。
少し寂しそうに笑う。
「昔よりさらに寂れてんな」
コトネの表情が曇った。
「やっぱりそう見えますよね……」
シャルネは答えなかった。
答えるまでもなかったからだ。
それくらい。
今の木漏れ日温泉郷は元気がなかった。
しばらく進むと。
ひときわ大きな建物が見えてきた。
「あれが」
「白樺の湯です」
コトネが指差す。
「おぉ……」
ミリナが目を丸くした。
立派だった。
三階建ての大きな宿。
綺麗に手入れされた庭。
木の看板。
そして。
建物の奥には。
露天風呂らしき湯気も見える。
「すごいです!」
「大きいですねー!」
ミリナは純粋に感動していた。
桶さんも同意する。
(正直)
(思ったよりずっと立派だな)
(これなら昔繁盛してたって話も納得だ)
湯けむり亭とは方向性が違う。
だが。
良い宿なのは間違いない。
だからこそ。
(余計に不思議なんだよな……)
(なんでここまで客が減ったんだ?)
桶さんは静かにそう思った。
そして。
この時はまだ。
木漏れ日温泉郷が抱える本当の問題を。
誰も知らなかった。




