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転生したら桶でした  作者: 玉葱将軍


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第四十話 桶、初めての長旅


 翌朝。


 湯けむり亭の前には。


 二頭の馬が並んでいた。


 コトネが用意した旅用の馬らしい。


「よいしょ……っと」


 ミリナが慣れない様子で馬に跨る。


「ほら」


「ちゃんと掴まって」


 後ろからシャルネが支える。


「だ、大丈夫です!」


 ミリナとシャルネは同じ馬。


 その後ろには。


 しっかり桶さんも括り付けられている。


(なんか旅感あるなぁ……)


 桶さんは少しだけテンションが上がっていた。


 コトネも別の馬へ跨る。


「それでは」


「よろしくお願いします」


「はい!」


 ミリナが元気よく頷く。


 見送りに来ていたのは。


 バルミナとルーナ。


 エナ達子供組には。


 まだ伝えていない。


 朝露の家へ行っているからだ。


「行ってきます!」


 ミリナが大きく手を振る。


「頑張っておいでよー!」


 バルミナも笑いながら手を振り返した。


「気をつけてねー!」


 ルーナの声を背に。


 三人は街を出発した。


 今回の旅支度は。


 ほとんどシャルネが整えてくれた。


 食料。


 水。


 寝袋。


 予備装備。


 簡易テント。


 そして。


 ミリナは大量の癒しの湯土産を持ち込んでいた。


「怪我とか疲れはこれである程度なんとかなります!」


 さらに。


 最近購入した魔道コンロもある。


 お湯を温めることも。


 簡単な料理も問題ない。


(かなり旅慣れしてきたなぁ)


 桶さんは感心する。


 出発してしばらく。


 コトネがちらちらとミリナの方を見ていた。


「……あの」


「はい?」


「その黄色い桶も」


「持っていくんですね……」


 不思議そうな顔だった。


 ミリナはにこりと笑う。


「特別な桶なんです!」


(ざっくり説明!)


 桶さんは思わずツッコむ。


『ミリナ』


『まだ説明しなくていいのか?』


 念話で聞くと。


 ミリナは小さく返す。


『まだ』


『どこまで信用していいかわからないですし』


(おぉーー……)


 桶さんはちょっと感動した。


(ミリナが成長してる……!)


『私だって』


『この一年色々成長しましたからね!』


 ミリナが胸を張る。


 その念話は。


 同じく聞こえているシャルネにも伝わっていた。


「はいはい」


 シャルネは呆れたように笑う。


 初日の移動は特に問題なく終わった。


 途中で小さな村へ寄り。


 一泊。


 そして二日目。


 街道を進んでいた時だった。


 突然。


「きゃっ!?」


 コトネの悲鳴が響いた。


 乗っていた馬が。


 足を滑らせ転倒したのだ。


「コトネさん!」


 ミリナ達が慌てて駆け寄る。


 幸い。


 大事故ではなかった。


 ただ。


 馬の前足に。


 深めの切り傷ができていた。


「大丈夫です!」


「今治します!」


 ミリナはすぐに荷物を下ろす。


 魔道コンロを取り出し。


 癒しの湯土産を温める。


 そして。


 温めた湯を。


 桶さんの中へ入れた。


(よし)


 ミリナは馬へそっと湯をかける。


 すると。


 傷がみるみる塞がっていった。


「えっ……!?」


 コトネが目を見開く。


「治った……?」


 驚きで完全に固まっていた。


「そういえば……」


 コトネが呟く。


「湯けむり亭には」


「どんな傷も病も治すって噂も流れてきていました……」


『いやいや』


『そこまで万能じゃないぞ』


 桶さんはすぐツッコむ。


 ミリナが代わりに説明した。


「そこまで何でも治るわけじゃないです」


「あと」


「この黄色い桶に入れた時に」


「効果が発揮されるんです」


 コトネは納得したように頷く。


「だから」


「一緒に持ってきたんですね……」


 そして。


 お湯をかけられた馬が。


 元気よく立ち上がった。


「……あれ?」


 シャルネが目を細める。


「傷だけじゃなくて」


「体力も回復してない?」


 馬は明らかに元気になっていた。


「本当ですね!」


 ミリナも驚く。


「じゃあ」


「こっちの子にもかけてあげましょう!」


 ミリナは。


 自分達が乗っている馬にも温めた湯をかける。


 すると。


 馬達は一気に元気になった。


「うわ」


「めちゃくちゃ走る気になってる」


 シャルネが若干引いていた。


 その日。


 馬達は驚くほど快調に走った。


 おかげで予定よりかなり早く進み。


「この調子なら」


「三日目には着きそうですね」


 コトネが驚いたように呟く。


 ミリナ達は。


 少しずつ。


 白樺の湯へ近づいていた。

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