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転生したら桶でした  作者: 玉葱将軍


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第三十六話 受付棟、完成間近


「おぉ……」


 思わず。


 ミリナの口から声が漏れた。


 受付棟。


 その外観が。


 ついに形になり始めていた。


 以前の湯けむり亭とは違う。


 木を基調にしながらも。


 かなり立派だ。


 入り口も広い。


 屋根も高い。


 何より。


「でかい……」


 ミアが呟く。


「これは迷子出ますねぇ」


 エナも苦笑い。


「うわー!」


「すごーい!」


 ドロシィだけは大興奮だった。



「まだ完成じゃねぇぞ」


 ゴルドが腕を組みながら言う。


「内装もある」


「棚も置く」


「導線確認も必要だ」


 だが。


 それでも。


 皆テンションは上がっていた。



 一方。


 男湯。


「なんか外騒がしいな」


 常連の一人が言う。


 桶さんは定位置から外を眺める。


(まぁそりゃ騒ぐよな)


 かなり大きい。


 しかも。


 今までの湯けむり亭らしさもちゃんと残っている。


 木の温もり。


 温泉宿感。


 それを壊していない。


 ゴルド達大工チームの腕は本物だった。



 数日後。


 ついに。


 受付棟の引っ越しが始まった。


「これ受付!」


「こっちは帳簿!」


「それお土産!」


 館内は大忙しだ。


 特に大変なのは。


 やはり湯土産関係。


「これ在庫表違います!」


「えっどれです!?」


「そっち去年のです!」


 ルーナが半泣きになっていた。


「お前整理能力終わってるな」


 シャルネが冷静に言う。


「うぅ……」



 そんな中。


 ミリナは新しい受付に立っていた。


「……すごい」


 広い。


 今までとは全然違う。


 受付だけでなく。


 待機スペースもある。


 椅子も置ける。


 混雑しても以前ほど大混乱にはならなそうだった。


「店長ー!」


 後輩の一人が呼ぶ。


「これどこ置けばいいですかー?」


「えっ、あ、はい!」


 ミリナは慌てて向かう。


 だが。


 途中で少しだけ立ち止まった。


「店長……かぁ」


 少し照れくさい。


 だが。


 悪い気はしなかった。



 そして。


 お土産屋。


「よし……!」


 ルーナが満足そうに頷く。


 以前とは比べ物にならない広さだ。


 棚には。


 癒しの湯土産。


 湯けむり亭タオル。


 垢すり。


 入浴剤試作品。


 木彫り。


 温泉饅頭候補。


 様々な商品が並び始めている。


 その中心で。


 一番張り切っているのは。


「この棚は季節物にしましょう!」


「こっちは人気商品です!」


 リリィだった。


 小さな体で一生懸命指示を出している。


 もちろん。


 実際の仕入れや商談はリリィの父や商人達が行っている。


 だが。


 商品選びや配置。


 どんなお店にしたいか。


 そういった部分にはリリィの意見がかなり入っていた。


「リリィちゃん楽しそうですねぇ」


 ミリナが笑う。


「はい!」


「だって夢のお店ですから!」


 リリィは胸を張った。


 その姿に。


 ルーナも自然と笑顔になる。



「これ絶対人気出ますよ!」


 ルーナが小さな木彫りを持ち上げる。


 黄色い桶型のミニ桶だ。


「本人にバレたらどうなるかな」


 シャルネがニヤリ。


「内緒です!」


 リリィも混ざって笑っていた。


 もちろん。


 桶さん本人はまだ知らない。



 さらに。


 湯上がり休憩スペースも完成。


「牛乳置きたいですね」


「果実入り牛乳も!」


 女子組が盛り上がる。


(わかってるなぁ……)


 桶さんは感心していた。


 風呂上がりの一杯。


 あれは大事だ。



 そして。


 数日後。


 ついに。


 受付棟の営業が始まった。


「おぉぉぉ!?」


「なんだこれ!」


「広ぇ!」


 常連達の歓声が響く。


「ここ本当に湯けむり亭か!?」


「すげぇなこれ!」


 皆。


 興奮していた。


 特に。


 お土産屋。


「増えてる!」


「うわこの桶かわいい!」


「なんだこれ欲しい!」


 早速。


 ミニ桶が売れていた。


 もちろん。


 桶さん本人は知らない。



「いらっしゃいませ!」


 そこには。


 嬉しそうに接客するリリィの姿もあった。



「導線も楽になったなぁ」


「前より並びやすい」


「待つ場所あるのありがてぇ」


 常連達の反応もかなり良い。


 ミリナはその様子を見ながら。


 ほっと息を吐いた。


「よかったぁ……」


 すると。


 隣に来たバルミナが笑う。


「まだ始まったばかりだよ」


「次は温泉棟だ」


 その言葉に。


 ミリナは頷く。


 だが。


 そこから先は。


 本格的な改築。


 つまり。


 長期休業が必要になる。


 湯けむり亭最大の工事。


 その準備が。


 いよいよ始まろうとしていた。

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