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転生したら桶でした  作者: 玉葱将軍


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第三十四話 湯けむり亭、大改築へ


 桶さんが湯けむり亭へ現れてから。


 もうすぐ一年になろうとしていた。


 相変わらず。


 湯けむり亭は大盛況だった。


「次の方どうぞー!」


「露天空きましたよー!」


「湯土産のお渡しはこちらです!」


 店内は今日も賑やかだ。


 だが。


 以前よりはかなり余裕ができていた。


 新しい従業員達がしっかり働いてくれているおかげである。


 特に掃除担当の三人が入ったことで。


 露天風呂の清掃負担はかなり減った。


(いやぁほんと助かるなぁ)


 男湯の定位置から。


 桶さんもしみじみ思う。



 転売問題も。


 今ではかなり落ち着いていた。


 商業ギルドと冒険者ギルドが本格的に動いた結果。


 ほぼ完全に消えたと言っていい。


「最近は怪しい湯土産見なくなりましたね」


 ルーナが嬉しそうに言う。


「みんな買わなくなったからねぇ」


 バルミナも頷いた。


「リスクが大きすぎるって広まったんだろうさ」


 シャルネが肩をすくめる。



 そんなある日。


 閉店後。


 いつもの食卓に。


 ゴルドも呼ばれていた。


「さて」


「そろそろ本格的に話そうか」


 バルミナが机を軽く叩く。


 議題はもちろん。


 改築と増築だ。



 ゴルドは広げた図面を机に置いた。


「まず脱衣所周りからだな」


「俺の案としては」


「受付棟を別に建てる」


「受付棟?」


 ミリナが首を傾げる。



 ゴルドは図面を指差した。


「今の受付」


「事務所」


「湯土産販売所」


「全部別棟に移す」


「そこから廊下で温泉棟に繋ぐ形だ」


 皆真剣に図面を見る。



「そうすれば」


「今受付とかで使ってる場所を全部」


「脱衣所と内風呂に回せる」


「おぉ……!」


 ミリナが声を漏らす。



 ゴルドは続けた。


「内風呂は男女共に二つずつ増設可能」


「洗い場も今の倍近く作れる」


「脱衣所もかなり広くなるぞ」


(おぉー)


(かなりいいなそれ)


 桶さんも感心する。



「俺も異存なしだ」


「かなりいい案だと思う」


 ゴルドは頷いた。


「だろ?」



 さらに。


 この案には別の利点もあった。


「先に別棟だけ建てるなら」


「ギリギリまで営業できる」


「確かに!」


 ミリナが頷く。


「今の建物を壊さなくて済みますもんね!」


「あぁ」



「それに」


「受付から廊下を通って脱衣所に行く動線確認もできる」


「湯土産販売所を広げた時の混雑状況も確認できる」


「試運転ができるってわけだ」


 皆納得した様子だ。



 バルミナも満足そうに頷く。


「いいねぇ」


「かなり現実的だ」



 だが。


 問題もある。


「ただ」


 ゴルドが真面目な顔になる。


「脱衣所と内風呂の改修は別だ」


「流石にあそこ工事する時は営業無理だな」


 皆の表情が少し曇る。



「危険もあるし」


「壁も床もかなり触る」


「客入れながらは無理だ」


 桶さんも納得だった。


(まぁそこは仕方ないか)



 露天風呂だけ営業する案も出た。


 だが。


「脱衣所が確保できないんだよねぇ」


 バルミナがため息を吐く。


「簡易脱衣所ってのも考えたが……」


「流石に厳しいな」


 ゴルドも腕を組む。



「露天だけ営業ってのも魅力はあるんですけどね……」


 ミリナは少し残念そうだった。


 だが。


 ここまで大きくなった湯けむり亭だ。


 中途半端にはできない。



「まぁ」


「やるならちゃんとやるさ」


 バルミナが笑う。


「一年頑張ったご褒美と思って」


「少し休むのも悪くないだろ?」



 その言葉に。


 皆少しだけ安心したように笑った。



 そして。


 湯けむり亭は。


 さらに大きく生まれ変わろうとしていた。

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