閑話 お給料の使い道
湯けむり亭は。
月に四回だけ定休日がある。
とはいえ。
普段は朝から晩まで働きっぱなし。
露天風呂ができてからは忙しさもさらに増していた。
その代わり。
お給料はかなり良い。
街の同年代と比べても。
かなり高い方だった。
そんなわけで。
今日はみんなの休日のお話である。
◇
「うーん……」
ミリナは悩んでいた。
街の雑貨屋。
目の前には。
ふわふわの新しいタオル。
「お客様用に良さそう……」
(また店のもん買おうとしてる)
桶さんが呆れる。
「でも肌触り大事ですし……」
結局。
大量購入した。
さらに。
「わぁ……!」
「この髪飾りかわいい……!」
子供組へのお土産まで買う。
なお。
自分用は買わない。
(お前ほんと経営者向いてるな……)
最近では。
温泉や湯治関連の本を見つけると即購入するようになっていた。
◇
「これ皆さんでどうぞ」
エナは街のお菓子屋で焼き菓子を買っていた。
派手に使うことは少ない。
だが。
気づくと皆へのお土産を買っている。
「エナちゃんまた買ってきたの!?」
「えへへ……」
少し照れながら笑う。
あと。
休みの日は意外と一人でのんびりしていることが多い。
本を読んだり。
街をゆっくり歩いたり。
新しくできたお店を見たり。
かなり落ち着いた休日だ。
ただ。
甘いものを見ると弱い。
「この限定プリン……!」
そこだけは目を輝かせていた。
◇
「ふっふっふ……」
ルーナは怪しい笑みを浮かべていた。
目の前には。
大量のタオル。
「次はどれ試しましょうかね……」
完全にサウナにハマっていた。
「この生地……熱波向きですね……!」
さらに。
香り付きの薬草油を見つける。
「ロウリュに混ぜたら絶対良いです……!」
店員がちょっと引いていた。
あと。
地味に美容にもお金を使っている。
高い髪油とか。
香りの良い石鹸とか。
最近かなり女子力が高い。
◇
「うーん……」
ミアは服屋で悩んでいた。
「これ可愛い……」
最近。
おしゃれに目覚め始めている。
服。
靴。
髪飾り。
色々見るのが楽しいらしい。
だが。
「それはちょっと派手じゃないですか?」
ルーナに止められる。
「えぇー?」
どうやら少しセンスが独特らしい。
◇
「この帳簿の書き方いいですね……」
ドロシィは本屋にいた。
読むのは。
物語ではない。
商売本。
帳簿本。
経営本。
である。
(小学生くらいの趣味じゃねぇだろ)
桶さんがツッコむ。
だが。
そんなドロシィにも。
年相応な部分はある。
「お肉定食特盛で!」
めちゃくちゃ食べる。
特に肉。
焼肉。
ステーキ。
串肉。
全部好き。
「幸せです……」
肉を食べる時だけ。
顔がふにゃふにゃになる。
◇
シャルネは。
最初。
ほとんどお金を使わなかった。
元冒険者の癖だ。
「いつ何があるかわからないからね」
と言って貯め込んでいた。
だが。
ある日。
「これ似合うかな?」
子供組へ服を買っていた。
しかも。
結構良いやつ。
「シャルネさん優しいですね」
ミリナが笑う。
「別に」
そっぽ向くシャルネ。
ただ耳は少し赤い。
あと。
武器屋だけテンションが違う。
「おぉ……」
「この短剣いいな……」
目が完全に冒険者だった。
◇
バルミナは。
「酒だねぇ」
昼から飲んでいた。
だが。
ただ飲んでいるだけではない。
「この土地安いねぇ……」
「ここ今後伸びるよ」
不動産。
投資。
商人との付き合い。
完全に経営者である。
ただし。
たまに。
「ほら」
子供組へ高いお菓子を買ってくる。
そして。
「別に余っただけさ」
と言い訳する。
(ツンデレか)
桶さんが思った。
◇
そして。
桶さん。
もちろん。
自分では出かけられない。
なので。
誰かがお出かけする時は。
大体連れていかれる。
「桶さんも行きます?」
「行く!」
即答だった。
街へ行けば。
「おぉー!」
「新しい温泉グッズ!」
「この桶ちょっと良くない!?」
完全に温泉オタクである。
最近では。
街の風呂屋情報にも妙に詳しくなっていた。
「今度あそこの湯見に行きたいなぁ……」
◇
そんなこんなで。
忙しいながらも。
みんなそれぞれ。
充実した休日を過ごしていた。




